教えてくれたのは……細田明美(ほそだあけみ)先生
東京医療保健大学 医療保健学部 医療栄養学科 准教授。管理栄養士、健康運動指導士、健康咀嚼指導士。2006年より東京医療保健大学医療保健学部 医療栄養学科に在職。臨床栄養学などの講義・実習を担当。子どもの入院に付き添う親への食事支援や、子どもから高齢者の口腔機能と食習慣についての研究に従事している。TV、雑誌など各メディアでも活躍。
食べるとメリットたくさん!「みかん」のパワーとは
ビタミンCを手軽に摂取できるイメージがある「みかん」ですが、ほかにもさまざまな栄養素が含まれており、食べることでたくさんのメリットがあるそうです。どのような健康効果が期待できるのでしょうか?
細田先生「柑橘類の中でも皮がやわらかく簡単にむけ、手軽に手に入れることができる『みかん』。圧倒的に収穫量が多く、代表的な品種が『温州みかん』です。みかんは抗酸化作用をもつビタミンCが豊富なため、免疫機能を高め、ウイルスに対する抵抗力を強める働きがあり、昔から風邪予防に効果があることはよく知られています。また、肌荒れを予防し、美肌効果もあると言われています。
果肉の黄色は、β‐クリプトキサンチンという色素成分で、カロテノイドの一種で体の中ではビタミンAに変わります。抗酸化作用があり、骨粗鬆症やがん予防の可能性が期待されています。ビタミンCとβ‐クリプトキサンチンを含むことで、抗酸化の相乗効果が期待できるのです。
さらに、みかんの皮には、ビタミンCやβ‐クリプトキサンチン、ヘスペリジン、食物繊維などの他に香りの成分であるリモネンが含まれており、リラックス効果があります。漢方では、みかんの皮を乾燥させたものを『陳皮』といい、胃や腸を調整したり、咳や痰を鎮めたりすることを目的で利用されています。」
さまざまなメリットが期待できる栄養満点の「みかん」は、健康と美容の味方になってくれるのですね!
白い筋と薄皮は「取らずに食べる」のが正解
みかんがもつパワーをより得るためには「食べ方」もポイントになるのだと、細田先生はおっしゃいます。キレイに取り除いてしまいがちな「白い筋と薄皮」は、取らずにそのまま食べたほうがよいそうです。その理由について教えていただきました。
細田先生「白い筋と薄皮(袋)には、フラボノイドの一種であるヘスペリジンやナリンギンが含まれており、毛細血管の強化、血圧上昇抑制、血清脂質値の改善、抗アレルギー作用などの効果があると言われています。また、薄皮には水溶性の食物繊維であるペクチンが多く含まれており、便通を改善したり、血糖値の上昇やコレステロールの吸収を抑えたりする働きがあります。
みかんの皮の内側の白いふわふわした部分は『アルベド』という内皮で、さらに果肉を包んでいる薄い膜の表面に網目のような白い筋を維管束といいます。維管束は根や葉から水分や栄養分をまんべんなく実へと送り、実を大きくする役割があります。
上述したように、白い筋と薄皮にはフラボノイドのヘスペリジンやナリンギンを実よりも多く含み、これらはビタミンと似た作用があることからビタミンPとも呼ばれ注目されています。
また、ペクチンも多く含まれており、果肉部分(砂じょう)だけに比べ、薄皮ごと(果肉を包む袋であるじょうのう)食べた場合はペクチンを約2倍摂取することができるのです(※)。
さらに、維管束の白い筋も取らないで食べることによって、より多くのヘスペリジンやペクチンなどの栄養を摂取することができます。みかん本来の栄養を取りたいならば、みかんの白い筋も薄皮もそのまま食べるとよいでしょう。」
みかんの栄養を余すことなく摂取するためには、白い筋を捨ててしまうのはもったいない! 今まで取ってから食べる派だった方は、これからは丸ごと食べてみてはいかがでしょうか。
みかんの種類や収穫時期により薄皮の厚さは異なります。消化や食べる機能が未発達なお子さんに与える際は、薄皮を剥いてから与えましょう。
※参考:日本食品成分表2022年度版(八訂)