「あなたが幸せならまわりも幸せになる」6千人の相談を受けたカウンセラーが“40代女性に伝えたいこと”

家族・人間関係

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2023.11.19

何か精神的に辛いことがあるときに、日本では専門家のカウンセリングを受けることにハードルを感じる人も多いかもしれません。これまでのべ6千人もの相談を受けてきた心理カウンセラーの古宮昇先生ご自身も、学生時代にカウンセリングを受けることが怖かったとおっしゃいます。古宮昇先生のインタビュー最終回では、カウンセリングを受ける際のハードルになっていることや、日々がんばる女性へのメッセージを伺いました。

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教えてくれたのは……古宮昇(こみやのぼる)さん

古宮昇先生

神戸市にあるカウンセリング・ルーム輝(かがやき)代表。心理学博士・臨床心理士・公認心理師。
前大阪経済大学 人間科学部教授。前ニュージーランド国立オークランド工科大学心理療法学大学院客員教授。
カウンセラー歴は、日・米・ニュージーランド通算28年間以上。来談者数はのべ約6000名を超える。
著書は『プロカウンセラーがやさしく教える 人間関係に役立つ傾聴』など多数。

日本ではまだハードルが高いカウンセリング

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――日本ではまだ、カウンセリングを受けるのが当たり前ではなかったり、金銭的に受けられなかったりする人もいると思います。先生のところにいらっしゃる方は、どのようなきっかけでカウンセリングやセラピーを受けに来るのでしょうか。

カウンセリングやセラピーを受けるハードルはまだまだ高いと思います。私のところに来られる方の中にも、何度もつまづいてどうにもならないという状態になって受けに来たという方は少なくありません。
私が配信しているメルマガを何年も前から読んでいて、ようやく勇気が出て予約をしたという方も多いと思います。カウンセリングは、いろいろな問題を解決するのに有効ですが、それが当たり前に浸透して、気軽に受けるという状況になるまでにはまだまだ時間がかかると思います。

――ハードルになっているものはなんですか?

カウンセリングを受けることに対して抵抗を感じる方も少なくありません。それも、子どもの頃に経験した痛みが原因になっていることが多いです。親、もしくは誰かに本音で話をしたときに、「そんなこと言っちゃダメ」とか、「そんなことないわよ」と否定的な言葉を返され、傷ついた経験をした人は、「本音を言うと否定される」とか「馬鹿にされる」、もしくは「本音を言っても無視される」ということを信じているんです。そうすると、カウンセラーのところに行くのは勇気が必要です。

――本人も覚えていないような子ども時代の経験が、そんなにも影響するものなんですね。

誰かに頼ったとき、「忙しいからあっちにいってなさい」と言われた経験をした人は、人を頼ってはいけない、人を頼ると余計傷つくと学んでしまいます。それはもう過去のことなんですが、本人はそのときに決めた信念をあたかも宇宙の真実であるように信じてしまっているので、「カウンセリングに行くなんて……。私は自分で頑張ります」ということになってしまうんです。

カウンセリングは怖いものではない

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――カウンセリングで、自分の傷を見るのが怖いという人もいますよね?

そう感じる方はいると思います。ただ、私が思うまともなカウンセラーは、クライアントさんの心を開こうとはしません。「この人になら開けるぞ!」と感じたら、クライアントさん自身が心を開いてくれるからです。カウンセラーは、無理に開かせようとしたり、根掘り葉掘り聞きだしたりはしないので安心してください。

――先生は、ご自身のケアのためにカウンセリングを受けているとお聞きしました。先生は、最初からカウンセリングを受けることに抵抗はなかったですか?

私が人生で初めてカウンセリングを受けたのは、大学3年生のときです。私が通っていた大学には学生が無料で受けられる学生相談室があり、プロのカウンセラーがいたんです。待合室に紙が置いてあって、自分の名前と電話番号を書いて申し込み受付の箱に入れると、カウンセラーの先生が電話をくれるんです。私はその紙に名前を書いて箱に入れるまでに2年かかりました。カウンセリングを受けるということがすごく怖かったんです。

――2年も!? 予約まで2年かけて、ようやく受けたカウンセリングはやはり怖かったですか?

全く怖くありませんでした。予約の紙を箱に入れようとして、誰かの足音が聞こえてきたらそのまま逃げるということを繰り返してしまうくらい怖がっていたのに、受けてみたら全くそんな心配は必要ありませんでした。みなさん、同じだと思います。怖いと感じる気持ちはわかりますが、受けてみると、「もっと早く受けておくんだった!」と感じると思います。

あなたが幸せになれば、まわりも幸せになる

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――40歳前後の女性は、忙しい中で自分のことを後回しにしている人も多いと思いますが、そんな女性が幸せになるために意識したほうがいいことはありますか?

「私は、不幸だ、不幸だ」と言っているお母さんがいます。そういうお母さんは必ずこう言います。「私は不幸でしょうがない。でも、子どもには幸せになってほしい。そのために何ができるでしょうか」と。

このお母さんは、自分は傷ついて苦しんできたにも関わらず、お子さんを心から愛しておられるのです。それ自体が尊いことです。そして、お子さんの幸せのために親ができることは、親自身が、今より少しだけでも幸せになることです。それが何よりも子どもが幸せになる方法です。

自分が幸せになるのは、わがままなことだ、自己中心的なことだと考える人が多いですが、それは違います。あなたが今よりちょっとでも幸せになれば、その分まわりの人も幸せになるんです。

――まずは自分の幸せを考えることが大事なのですね。

私たちは子どもの頃から、自分でも気づかないうちに自己否定のメッセージを日々受け取ってきました。日本は競争社会なので、勉強や運動、偏差値の比較など、あなたを否定するメッセージが溢れる世の中で、それが当たり前として育ってきました。

その中で、あなたは傷つきながらも、「幸せになりたい」「自分らしく生きたい」と前向きな気持ちを持っている。さらに、人への深いやさしさや人の役に立ちたいという思いも持っている。がっかりするようなことや、自己否定をしてしまうような経験をたくさんしてきたにも関わらず、自分の人生をより良くしたいと思っている。そんなあなたであること自体が、どれほど尊いことかを分かっていただきたいです。そして、そういう自分を認めてください。そうして生きてゆくことで、望む自分へと一歩ずつ進んでゆけます。

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古宮先生のお話を聞きながら、何度も胸が熱くなり涙があふれてくる瞬間がありました。きっと私の中にも、「内なる傷ついた子ども」がいるんだろうなと感じました。その後、先生が教えてくださった「自分を認める・褒める」ということを意識しながら、周りの人たちへ感謝を伝えるという自己肯定感のプレゼントを無理のない範囲で試してみています。

劇的な変化はないですが、「幸せだな」と思う瞬間が増えました。「今の私、すごい!」と自分を素直に褒められるようになりました。それでも落ち込んだり、自分を責めたりすることもあります。でも、先生から聞いたことを知っているのと知らないでは、これから先の人生が大きく変わったことだけはわかります。

個人的には、カウンセリングはこれからの時代、ネイルサロンやマッサージに行くのと同じ感覚で、私たちの生活に馴染んでいくべきものだと思っています。何よりメンタルが安定していなければ、健康にも幸せにも暮らせないから。それを整えてくれるカウンセリングというものが、もっと身近で気軽なものになれば、今よりも世の中に笑顔が増えるのではないでしょうか。

古宮先生、とても大切なお話をありがとうございました。

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著者

山田かほり

山田かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。

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