教えてくれたのは……町田 奈穂さん
同志社大学大学院 心理学研究科修了。スクールカウンセラーやクリニックの臨床心理士を経験。父の後を継ぎ卸売商社の代表を務めるほか、大阪カウンセリングセンターBellflowerを設立し、精神・発達障害の人が活躍できるインクルーシブな職場づくりをサポートする人事コンサルタントや支援者支援の研究・臨床活動を行っている。
「HSP」の特性について
町田さん「HSPとは、ハイリー・センシティブ・パーソン(Highly Sensitive Person)の頭文字をとった、感覚が鋭く、多様な刺激を受けやすい特性を持っている人のことです。
HSPとは病名ではなく、生まれもった特性です。そのため、科学的に証明されたHSPの治療法やチェックリストなどもありません。
医療機関などでは、感覚の過敏さや過鈍さといった問題に対して、さまざまな感覚を検査する『SP感覚プロファイル』という検査があります。この検査で、ご自身の感覚の特性を把握することができます」
HSPの人のメリット・デメリット
HSPはネガティブな面にばかり注目されがちですが、敏感であるからこその強みもあるのだと、町田さんは解説します。どのようなメリットがあるのかを教えていただきました。
町田さん「HSPというと、ネガティブなことにだけ反応するイメージが広まっていますが、それは誤解だと言えます。HSPの人は感覚刺激に反応しやすいという特徴から、『良いこと』と『悪いこと』どちらに対しても反応します。
感受性が高いために周囲からさまざまな影響を受けやすく、疲れやすかったり、感情に振り回されて辛い気持ちを抱える方もいらっしゃいます。
その一方で、人の気持ちに共感して寄り添える優しい人であったり、芸術などのさまざまな刺激を受けられるアーティスティックな人、日常のふとした幸せに気づいてポジティブな体験を多くできる人であったり、強みと言える面もたくさんあるのです」
HSPの人が抱えやすい悩みとは
HSPの人が抱えやすい悩みは、どのようなことが多いのでしょうか。40代女性のケースについて、伺いました。
町田さん「最も多く聞かれる悩みが、感覚の鋭さから、人が多くいる環境が疲れやすく苦手であるというものです。そのほかには、職場や家庭での細かなことに気づきやすいために、それが原因で悩みを抱えることも少なくありません。物事が正確に進められるのは良い点なのですが、人間関係でストレスを感じやすかったり、仕事を多く抱えすぎてしまったりする傾向があります。
また、子どもがいる人は、子どもの小さな変化にも気づきやすいことから、見守りと手助けのバランス調整に苦労される方もいらっしゃいます。
特に40代の女性は、ホルモンバランスの大きな変化を迎える前段階の時期です。これまでとの身体の違いにいち早く気づいてショックを受けたり、反対にハイパフォーマンスを発揮したりするなど、大きな波に揺れ動くこともあると言えるでしょう」
感受性が高いといった特性を理解し、ポジティブな面に目を向けられるようになると理想的なのですね。次回の記事では、「まわりにHSPの人がいた場合に気をつけるとよいこと」をご紹介します。