「夢がない」と話すうちの子、大丈夫?
「うちの子、将来の夢がないって言うんです。大丈夫でしょうか?」
小学校高学年になると、進路の話や職業体験をきっかけに、夢や目標が話題に上ることが増えてきます。周りの子が「医者になりたい」「ゲームクリエイターになりたい」と話す中で、「別にまだわからない」「何になりたいか思いつかない」と話すわが子に、心配や焦りを感じる親御さんも少なくありません。
しかし、この時期に「夢がない」ことは、ごく自然なことでもあります。
今の子どもたちは、情報があふれる社会で育っており、無数の選択肢に触れる一方で、「正解」を求めすぎる風潮や将来の不透明さから、夢を描きにくくなっているんですね。
また、SNSなどで他人と比較しやすく、自信を持ちにくい傾向も。
将来の夢がまだ見えない子どもをどう見守るべきか、どのような様子であれば安心して見守ってよいかを考えていきます。
「夢がない」=「やる気がない」ではない
思春期前の子どもたちは、まだ“世界を観察している段階”にあります。
この時期は、自分や他者、社会に対する理解を少しずつ広げていく「探求期」といえるんですね。たとえるなら、まだ図鑑のページをめくっている最中。
将来の職業や目標を明確に持つことよりも、いろんな可能性を知り、自分に合いそうなものを探している時期なんですね。
心理学的にも、12歳前後は自分が何者かを見極める準備段階(アイデンティティを模索する段階)にあります。
つまり「夢がまだない」状態は、むしろ「無理に決めつけていない柔軟さ」「探求中である証拠」ともいえるんですね。
では、夢がなくても「この子は大丈夫」と安心して見守れる子どもには、どんな特徴があるのでしょうか?
安心して見守るべき?きっかけ作りをしてあげるべき?
好奇心があるor気力が乏しい
友達との話題で出た職業、テレビで見かけた情報に興味を示すなどの様子が見られれば、アンテナを張っている証拠といえるでしょう。
趣味や習い事を頑張っていたり、さまざまな情報を知ることを楽しんでいれば、安心して見守ってよい時期と考えられます。出典:stock.adobe.com
一方、将来に希望を見いだせない、気力が乏しく覇気がない様子が見られるときは、周囲の大人から働きかけがあるとよいかもしれません。
博物館や美術館、科学館に足を運んだり、旅行をしてみるなど、普段と違う体験や視野を広げられる経験をすると好奇心が刺激されやすくなります。
何かに継続して取り組んでいるor好きなものがわからない
夢がなくても、習い事や学校の活動、趣味などに継続的に取り組んでいるなら、自己効力感(=自分にはできるという感覚)を育てる土台ができているでしょう。
習い事や趣味が直接的に将来の夢へと繋がらなくても、興味関心が定まったらまっすぐに目標へ向かっていく子も多いので、安心して見守ってよいといえます。
一方、好きなものがまだわからず、”みんながやっているからゲームをする”、”親が言うから習い事に通う”など受け身の姿勢が強い子は手を引いてあげるのも大切です。
周りに合わせたり、人の言うことを受け入れる姿勢は決して悪いものではありません。
ただ、本人の積極性を引き出せるよう、興味を持てそうなことがあったら「試しにやってみたら」「失敗してもいいから」と背中を押してあげるとよいでしょう。
友人関係が安定しているor一人でいる時間が長い
将来像や職業観は、他者との関わりの中で育ちやすいもの。
人間関係が安定している子は、他者と自分を比較しながら「自分らしさ」を模索できる準備ができています。
友人関係がある程度安定していたら、「今はまだ定まっていないだけ」「これから育つ芽がある」と信じて、見守ってあげれば大丈夫です。
一方、一人でいるのが好きな子や友人関係を作るのが難しい子は、親が世界を広げるサポートをするのも大切。
同年齢にこだわらずとも、似た趣味の子が集まるコミュニティやイベントに足を運ぶなど、きっかけ作りを手伝うとよいでしょう。
将来の目標や夢を見つける時期は人それぞれ。
子どものペースを尊重し、気長に見守り、模索する時期も楽しめるとよいですよね。