教えてくれたのは……草ヶ谷英樹(くさがやひでき)先生
医学博士、日本内科学会 内科認定医/総合内科専門医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医・指導医。
呼吸器・アレルギー科専門医として大学病院勤務中に、精巣腫瘍や原因不明の顎関節症などで長期入院を経験。自分が患者という立場になり、医療はもっと患者に寄りそうべきだ、自分らしい医療に取り組みたいという思いが生じ、2021年に祖父・父から続く「草ヶ谷医院」を継承し独立。
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」とは? 簡単セルフチェック
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、どのような症状が起こる病気なのでしょうか?
草ヶ谷先生「SASは、睡眠中に無呼吸や低呼吸が繰り返されることで体内の酸素濃度が低下してしまう病気です。体は酸素が低いことをなんとか補おうとして、一時的に目覚めて頑張って呼吸をしようとするため、眠りが浅くなりやすいといえます。
症状は寝ているときに目立ちますが、実は日中の起きている時間帯にもSASによる症状が現れている場合があります。寝ているとき、起きているときに現れやすいとされる症状は、それぞれ下記のとおりです。
■寝ているときの症状
- 大きないびきをかく
- いびきをかいた後に呼吸が止まる(無呼吸)
- 突然息が苦しくなって目が覚める
- 夜間に何度もトイレに起きる
■起きているときの症状
- 寝起きの頭痛やのどの渇き
- 日中のだるさや昼食後の強い眠気
- 会議中や運転中のぼんやり感
- 集中力や記憶力の低下
- 気分がすぐれない
症状がいくつもあてはまった場合はSASを疑い、医療機関で検査を受けることをおすすめします。
SASの方は正常の方と比べて、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの心血管病の発症が2~3倍も多いことが知られています。適切な治療を受けることで、これらの発症が減少することもわかっています。」
CPAP(シーパップ)療法で期待できる効果と注意点
睡眠時無呼吸症候群のひとつの治療法として広く知られているのが「CPAP(シーパップ)療法」。一度は耳にしたことがある方も多いと思います。どのような治療をおこなうのか、治療をするうえでの注意点も含めて教えていただきました。
草ヶ谷先生「CPAP(シーパップ)療法の正式名称は、『経鼻的持続陽圧呼吸療法:Continuous Positive Airway Pressure』です。
閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)に有効な治療方法として、現在世界で最も普及している治療方法です。マスクをつけて空気を送り込むことで狭くなった気道を広げ、肺までしっかりと空気を届けるので、睡眠中に無呼吸の状態になるのを防止します。
CPAPはいびきや無呼吸の原因を直接治す治療方法ではなく、あくまで空気の通り道を拡げてあげる対症療法です。そのため、空気の通り道が狭いという原因そのものが改善しない限り、使用し続ける必要があります。
肥満がある患者さんでは、減量することや飲酒・喫煙を控えることで症状を軽減することは期待できますが、完全にCPAPを離脱することは難しいと考えられています。また、CPAPを行っている患者さんの約3割は肥満ではないということも知られています。こういった方では原因の解決は難しく、最初から生涯にわたって使用しなければならない場合もあるのです。
CPAP療法を続けていると、一時的にCPAPをお休みしたとしても、治療前よりいびきや無呼吸の回数や程度がよくなることがよくあります。とはいえ、残念ながらこれはCPAP療法による一時的な効果といえます。CPAP使用を中止すると戻ってしまうことが多いので、注意が必要です。」
睡眠時無呼吸症候群の症状に心あたりが複数ある場合は、あらゆるリスクから守るためにも早期の受診が最善策に。この記事が、改善への一歩になると幸いです。