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おいしいドーナツは近くのスーパーで買える!1988年からいる、“身近な王様”【ドーナツ探求家直伝】

料理・グルメ

2025.09.18

“ドーナツとは、油の中で夢がふくらむ、幸福な食べ物です。” というキャッチコピーを掲げて、「ドーナツ探求家」として活動している溝呂木一美です。そんな肩書をぶらさげていますので、最もよく聞かれる質問は「おいしいお店はどこですか?」です。確かに、おいしいドーナツ店はたくさんあります。しかし、もっと身近な近所のスーパーで、おいしいドーナツが私たちを待っていることを伝えたい。この企画の第一回にふさわしいのは、冠をかぶったあのドーナツです。

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1988年からスーパーにいる、身近な王様

スーパーマーケットのパン売り場や、おやつのコーナーでよくみかける王様がいます。
赤い楕円に王冠のマークが目印の、丸中製菓『キングドーナツ』です。
全国のスーパー約460店舗の売上(2025年1〜6月 来店客1000人当たり販売金額)を対象とした『日経POSデータ』の「袋入りドーナツ」カテゴリーにて、売上No.1を獲得。まさに「キング」なドーナツなのです。
なんと、兵庫県にある工場で、1時間に8万個も製造しているそうですよ。丸中製菓「キングドーナツ」スーパーでの遭遇率が高い袋入りドーナツといえばコレ

参考:日経POSデータ 2025年1~6月 売上No.1を厳選して紹介!(https://ps.nikkei.com/tu/nikkeipos2508/)

“日本で一番おいしいドーナツ”を作りたい

1950年に設立された丸中製菓は、手焼きせんべいから始まり、和菓子やかりんとうを製造。
戦後の復興から高度経済成長期を経て、日本に住む人々の生活が急速に洋風化していく時代でした。

1960年代には、様々な菓子メーカーから、ビスケット、チョコレート、スナック菓子など、おやつの「大スター」といえる商品が次々に誕生します。
1970年代になっても、その勢いは衰えず、加速するばかり。人々の嗜好が変わらないはずはありません。
全国各地にスーパーマーケットが登場し、販売経路が変わる、価格競争が起こるなどして、丸中製菓にとって主力商品であったかりんとうの市場は、菓子全体の1%も満たない状態となりました。

廃業寸前の丸中製菓は「かりんとうをやめる」という決断をしました。
かりんとうと同じく、「砂糖・小麦粉・油を使ったものを出したい」「ドーナツなら今まで培ってきたことが生かせる」との思いから、倉庫の片隅でドーナツ開発をはじめたのです。
『キングドーナツ』が発売されたのは1988年のこと。
すでに市場には競合商品が並ぶなか、遅いスタートを切りました。
『キングドーナツ』と命名したのは、やるからには一番おいしいドーナツを作る、「絶対、キングになる」という熱い決意からでした。

丸中製菓「キングドーナツ」は袋入りで6個セット食べやすいサイズで、ちょっとだけお腹が空いたときにも丁度いい

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みんなに愛される、甘じょっぱい味

後発の『キングドーナツ』は、なぜNo.1になれたのか。
『キングドーナツ』を食べながら考えましょう。

発売当初は20個ほど入った大容量パックでしたが、現在は少人数世帯でも食べやすい6個入りです。
私は近所のスーパーで188円(※)で購入しました。
圧倒的な生産力により実現した、お財布にやさしい価格も、長く愛された理由のひとつでしょう。
※価格は地域や店舗によって異なります

賞味期限が長く、個包装であることも嬉しいですね。
山歩きなど、アウトドアのおやつに携帯するにも便利です。
私は外出時に、バッグの中にひとつ忍ばせたりもします。

丸中製菓「キングドーナツ」袋を開けると甘い香りがふわっと!とってもシンプルできれいなかたち

じゅわっと甘くて、ほんのりしょっぱい。

ほわっとほどけるようなソフトな食感が魅力です。
表面がじゅわっと甘いのは、溶かした砂糖をかけているから。溶かした砂糖をかけて作る、かりんとう製造のノウハウが生きています。

多くの揚げ菓子は、カラッとしていることを重視しがちですが、『キングドーナツ』はしっとりと湿っているところが真骨頂。
しょっぱいのは、オリジナルのミックス粉に秘密があるそうですよ。
独特の甘じょっぱさが後をひき、つい、「もうひとつ」と手が伸びます。

丸中製菓「キングドーナツ」の断面幅広い年代の人に好まれるやわらかな食感

なんだかいつもそばにある、定番のおやつ

『キングドーナツ』は、ずっとこの味、このカタチ、シンプルな姿でした。
「変わらないこと」こそが、安心感や信頼感につながり、独自性も相まって、全国に“キングドーナツラバー”が増えていったのでしょう。
飽きのこない味で、時代が変化しても、新たな人気を呼んでいます。

パッケージに書かれた「ドーナツ好きのためのドーナツ」というキャッチコピーは、お客さんからの生の声から誕生したそうですよ。
なんて愛されているのでしょうか!

丸中製菓「キングドーナツ」のキャッチコピードーナツ好きなら、このキャッチコピーを見て食べずにはいられない

丸中製菓の“中の人”にきいてみた「おいしい食べ方」

『キングドーナツ』をこよなく愛する、丸中製菓の方々はどんな食べ方をしているのでしょうか。

冷蔵庫でひんやり冷やした『キングドーナツ』&熱い日本茶

しっかり冷やした『キングドーナツ』は、甘さがおさえめに感じられ、塩味が立つ印象です。
熱い日本茶の渋みがよく合い、後味は爽やか。
ああ、安心感があるドーナツと慣れ親しんだ日本茶、なんともホッとする組み合わせ……。
冷たさと温かさ、温度差の妙も楽しめます。

丸中製菓「キングドーナツ」と日本茶煎茶、ほうじ茶、玄米茶などなど、試してみたいですね。

アメリカのこってり甘いドーナツとは一線を画す、兵庫生まれの甘じょっぱいドーナツは、コーヒーも合うけど、日本茶がベストかもしれませんね。

トースターで軽く焼いて食べると、香りが立ち、表面がカリッとして出来立てのような味わいに、電子レンジで10秒ほど温めれば、ふわっとやわらかく、よりソフトな食感を楽しめるそうです。温めた『キングドーナツ』は、アイスクリームとの相性も抜群ですよ。

「やっぱりおいしさが一番」とは、丸中製菓で大切にしている言葉です。
10年以上、数多くのドーナツを食べてきた私ですが、巡り巡って『キングドーナツ』を食べると、顔がほころんでしまいます。
やっぱりおいしいなぁ。

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著者

溝呂木一美(みぞろぎひとみ)

溝呂木一美(みぞろぎひとみ)

“ドーナツとは、油の中で夢がふくらむ、幸福な食べ物です。“というキャッチコピーを掲げ、国内外で年間500種類以上のドーナツを食べ、食文化としても調査、研究している。自身のブログや各種SNS、テレビやラジオ、雑誌、Webメディア等でも情報を発信。コンビニ、カフェなどの店舗で販売するドーナツの監修も行う。イラストレーターとしては「かわいい・おいしい・楽しい」をテーマに描いている。主なテレビ番組出演歴は『マツコの知らない世界』『ラヴィット!』(TBS系)、『バゲット』(日本テレビ系)など。著書に『私のてきとうなお菓子作り』(ワニブックス)、『ドーナツのしあわせ 年間500種類食べる“ドーナツ探求家“の偏愛ノート』(イースト・プレス)、『ドーナツの旅』(グラフィック社)あり。

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