「なんで?」が行き着く先
子どもが手伝わないとき、親の頭のなかではだいたいこんな答えが浮かびます。
「テレビやYouTubeばかり見てるから」
「面倒くさがりだから」
「小さいころからやらせてこなかったから」
「うちの子はそういう性格だから」
どれも、いちどは考えたことがある言葉だと思います。
でも、この問い方には落とし穴があります。
「なんでやらないのかな?」と原因を探そうとすると、目が向きやすいのはだいたい過去の出来事や性格です。 過去も性格も、いまこの瞬間には変えられません。 原因らしきものが見つかっても、「で、どうすればいいの?」が残ったままになることが多いのです。
その結果、また同じように「手伝って」と言い、また同じように「イヤ」と言われ、イライラが積み重なっていく。そんなループに入りやすくなります。
問うなら、「なんのため?」
そんなときは、視点を少しずらしてみてください。
「なんで手伝わないの?」ではなく、 「手伝わないことで、いま何を守ろうとしているんだろう?」
嫌がるのも、ひとつの行動です。その行動の背景には、その場で得たいものや守りたいものがある、と考えてみるのです。
たとえば、
- いま遊んでいる時間を守りたい
- 怒られる前に、先に拒否しておきたい
- 下手にやってダメ出しされるくらいなら、最初からやりたくない
- 親がやってくれる状態のままのほうがラク
どれが正解、という話ではありません。
大事なのは、子どもを「性格だから」で終わらせず、「この子なりの狙いがあるのかも」と一度見てあげること。
わが家でも、子どもを叱るとき「なぜそうしたのか?」と過去の理由を問い詰めることはしません。 それよりも「何のためにそれをしたのか(しなかったのか)」を聞くようにしています。 過去の原因を問い詰めると、人は嘘をつこうとしてしまいます。 ですが、その目的を聞くようにすると、素直に自分の思いを話しやすくなります。
「なんでやらないの!」ではなく、「いまは、他にしたいことがあった?」と聞いてみるのは、とても有効です。
親側にも「狙い」がある
この問いは、子どもだけに向けるものではありません。 手伝ってほしい親の側にも、「なんのため?」があります。
- 家事の負担を減らしたい
- 子どもにも暮らしの一員でいてほしい
- 自分ばかりがやっている感覚を、なんとかしたい
- 「ちゃんと育てなきゃ」という自分の正しさを確認したい
負担を減らしたいのか、自立を育てたいのか。 それとも、「わかってほしい」気持ちが先に立っているのか。
ここが曖昧なままだと、言葉がきつくなりがちです。
「手伝って」と言いながら、本当は「わたしの気持ちをわかって」と言っている。そんなズレが起きやすいのです。
これはとくに夫婦間でよくありますよね。
親自身の狙いが見えてくると、子どもに伝える言葉も、命令ではなく目的を持った言葉になります。
「お皿を下げてほしい。わたしひとりで全部やるのはしんどいから」というように。
正解を当てるより、言葉にしてもらう
話し合いのゴールは、親が「この子の狙いはこれだ」と当てることではありません。
子ども自身が、「いまはこうだった」と自分の言葉で言えることです。
「イヤだったの、なんでだと思う?」 「手伝わないことで、どんないいことがあった?」
最初はうまく答えられないかもしれません。 それでも、「責められている」のではなく「一緒に考えてもらっている」空気があると、子どもは少しずつ言葉を探し始めます。
狙いが見えたら、次は一緒に「どうするか」を考えていきます。 「(いまは遊びたいなら)じゃあ、〇〇時まで遊んで、それからやる?」「(ひとりでやるのが面倒くさいなら)あなたの洋服、一緒に畳んであげるよ」など、拒否の奥にあるものを満たしつつ、親の「自分のことは自分でできるようにしてあげたい」「もっとお手伝いしてほしい」という目的も果たすようにします。
お手伝い拒否をゼロにすることが目的ではありません。 「イヤ」の奥を見られる関係のほうが、長い目で見れば家族の暮らしを回しやすくします。
「なんで手伝わないの?」といいそうになったら、ちょっと思い出してください。 そして「なんで」の代わりに、「なんのためだろう?」と、心のなかで聞いてみる。それだけで、親子の会話が、少しだけ変わると思います。




