眠りの質をよくするポイントは“放熱”
ぐっすり眠るために、ストレッチやマッサージ、マインドフルネス、音楽を聴く、鍼灸(しんきゅう)、アロマ、入浴などの方法を、試したことがある人も多いと思います。
「ポイントは『放熱』です」と教えてくれたのは、花王株式会社パーソナルヘルスケア研究所 市場智久さん。放熱とは、副交感神経の働きによって、血管が拡張し血流量が増えることで、手や足などから体の外へ、体内の熱が逃されること。
「眠りにつく前から、この放熱が促進されると眠りにつきやすいことがわかっています。逆に、手足が冷えて放熱しにくいと眠りつくまでに時間がかかるんです。冷え性の人は、布団に入ってから手足が冷たいと、なかなか眠れないことがありますよね。最近の花王の研究では、『目の周りを温める』ことが放熱を促進し、良質な眠りに効果があるとわかりました」(市場さん)
炭酸入浴の効果とは?
炭酸入浴は、疲労回復、こり改善、冷えの改善などの効果は知られていますが、実は短い入浴でも身体を芯から温めるので、手足からの放熱が続くのだとか。
「入浴剤などに含まれる炭酸ガスは、皮膚から浸透し血管へ到達すると、血管の筋肉を弛緩(しかん)させて、血管を拡張します。それにより、血流量が増加し、体を深部から温めてくれます。入浴後も皮膚温を維持して放熱を持続させます」(市場さん)
寝る1~2時間前に入浴すると、寝つきがよくなり、睡眠の質も良くなるという調査結果もあります。(※3)
炭酸入浴剤は手軽に購入でき、香りの種類も豊富なので、ぜひ毎日のお風呂タイムに取り入れたいですね。
(※3)Haghayegh S, et al. Sleep Med Rev 46: 124-135, 2019.
「目の周りを温める」ことが睡眠の質を高める?
また、市場さんによると「目の周りを温める」ことも効果的だそうです。
「花王の実験では、目の周りを温めると、離れたところにあるはずの手や足の皮膚温が上昇することが新たにわかりました。実験では胴体部の体温は変わらなかったので、自律神経の働きで手足からの放熱が促進されたと考えられます(写真参照)」(市場さん)
蒸しタオルやホットアイマスクで目の周りを温めると、ほっとして心地よく、リラクゼーション効果もありますよね。それだけではなく体も眠る準備ができるということでしょうか。
「『心の変化=リラックス』『体の変化=放熱の促進』という相乗効果で、寝付く時間が短くなり、深い睡眠へ早く誘われるんです。人が自然に眠るときの、心と体の状態に似ていることから自然な睡眠を誘うといえるでしょう。また、目の周りだけではなく、首の後ろを温めることも有効ですよ」(市場さん)
生活様式の変化は、私たちの体にも少なからず影響しています。このような簡単なセルフメンテナンスなら、ぜひ生活に取り入れたいところです。これから冷えも気になる季節。睡眠の質を高め、健康を維持したいですね!
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