温かいものを口にすると…
確かに、温かいものを少しでも口にすると疲れが吹き飛ぶ。それも、ちょっとした塩味のスープや味噌汁なら効果絶大だ。アメリカでの大学時代の寮生活では、日本からスーツケースに入れて運んだ鶏がらスープの素と醤油を大切にストックしていた。寮のごはんに疲れたときや、深夜の勉強に煮詰まったとき、電気ケトルで沸かした湯で溶かして飲めるように。具材入りのインスタントスープだと寮の室内に食べかすなどの生ゴミが出てしまうのも面倒で、スープの素を溶かして醤油で味付けしたくらいの液体がお茶代わりにもちょうどよかった。口寂しいとき、体が冷えたとき、ちょっと心細いとき。温かいちょっと塩気のある汁ものは体の疲れを一気にほぐし、心まで温めてくれる。
そうした経験から、わが家では、災害用の備えに関しては調理器具をかなり厚くしている。先に書いたように仕事柄という理由はありつつ、カセットコンロは2台。カセットボンベは常に20本はストックしている。ガスと電気は、復旧のタイミングには時差があるので、カセットコンロのほかはIHクッキングヒーターや電気ケトルがあってもいいかもしれない。使える熱源は分散させて数種類持つのが安全だ。
万が一いま東京で震災が起きたとしたら。
避難所として指定されている小学校や中学校などの体育館では、過密している人口から考えてもキャパシティはまったく足りない。災害時には避難所に行けばよいと思いがちだが、わたしの住むエリアでは地域の住人数に対して指定避難所のキャパは5分の1ほどしかない、とは以前に小学校でPTA役員をしたときに知ったことだ。人口密度は地域によって差はあれど、東京近郊の主なエリアでは似たような状況だろう。
つまり、家さえ倒壊しなければ、自宅で数日を過ごす覚悟をするのが防災の備えの基本だ。家族全員で最低3日は過ごせる水と食料、そして熱源。防災の備えというと、ヘルメットや簡易トイレ、発電池などをイメージすると思う。それらももちろん大切だけれど、実際のところ、無事に残った建物に残り、自力で食いつなぐことはかなりの確率で必要になってくるのだ。
「防災の備えって何を準備してる?」
と折に触れて人に聞いてみるが「水もほとんどない」という人も多く、調理器具まで備えている人はさらに少ない印象だ。
水はありますか? カセットコンロはありますか?
みなさん、ぜひ、もしもの備えを見直してみて欲しい。わたしも毎年、9月1日の防災の日に加えて阪神淡路大震災の時期には、いま元気に暮らせている幸運への感謝を込めて、ストック品をチェックするようにしています。
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