持ってるのに飲まないの?鎮痛薬の謎
突然やってくる頭痛、そんな時あなたはどうしていますか?頭痛持ちさんに聞いてみると「まずは我慢できるところまで耐える」「だんだん痛くなるのはわかっているけど、すぐには薬は飲まない」「薬は常に持ち歩いているけど、ほとんど飲まない」などなど。そして、すぐに飲まない理由を聞いてみると、驚くべき誤解と思い込みが次から次へと……そんな「持っているけど飲んでいない」というギャップを埋めるべく、バファリンでおなじみのライオン株式会社の芳賀理佳さんに市販鎮痛薬にまつわる「?」をお聞きしました。
ライオン株式会社 芳賀理佳さん(以下、芳賀さん):このグラフを見てもらうとわかるように、ライオンの調査では、約8割の人ができるだけ我慢をして痛みをやり過ごそうとしています。けれど、その耐えていた時間は、早めの対処をすれば、痛みを抑えていつもどおりの時間が過ごせたかもしれません。多くの人が薬を使わずに痛みを我慢しています。
ーー確かに、私の周りでも「すぐには飲まない」「耐えられなくなるまで飲まない」という人が1番多かったです。私はわがままなのか(笑)我慢ができない性格なので、モヤモヤっとしてきた時点ですぐに薬を飲んでいます。
芳賀さん:誰でも本当は痛みを早く鎮めたいと思っているはずですよね。でも「鎮痛薬を飲み続けていると、薬が効きにくくなりそう」「胃や体に負担がかかる気がする」と考えて控える人が多いようなんです。実際には、用法・用量を守れば効きにくくなったり、体に負担がかかることはありません。しかし、もっと症状が重く、月に10日以上痛みが続く場合は、一旦服用を中止して医療機関を受診してください。
痛みが強くなる前に!早めの服用を
ーー胃薬や風邪薬をそう思う人は少なそうですが、鎮痛薬はちょっと悪者のようなイメージを持たれてしまっていると……。もしかすると、適切に効果が現れた時に、痛みが消えてしまうので「とても強い成分が入っていて、どこかに負担がかかるはず」と想像する人が多いのかもしれませんね。
芳賀さん:「痛み」は、体に起きた「炎症」を脳に伝えるための重要なサインです。このサインを無視して痛みに耐え続けてしまうと効きにくくなってしまったり、体に負担がかかってしまうこともあります。痛みを感じたらすぐに用法・用量を守って鎮痛薬を使ってもらいたいですね。
空腹時の服用を避けるために「何かを食べてから」!ビスケットやゼリーでもOK
ーーところで、空腹時に鎮痛薬を飲むと胃がムカムカしたり吐いてしまったり……という人も多いようです。頭痛が起こるのは自宅にいるときだけとは限らないので、薬を飲むために「何かを食べなくちゃ」と思っても、なかなか難しいときもあります。
芳賀さん:きちんとした食事でなくても、おにぎりやパンでもいいので、何かを食べてから服用するのがベストです。お仕事中などでそれも難しいなら、例えばビスケットなどでもいいかと思います。
ーー缶コーヒーを飲むと胃の保護になるのでは?という友人もいました。
芳賀さん:コーヒーにはカフェインが入っているため、薬の成分と重複し、効果が強く出たり、副作用が出たりする可能性があるため、避けていただくといいですね。固形のものが喉を通らないなら、ゼリーなどでもいいと思います。
どうしても食べ物がないときは?
ーーー空腹時を避けるのは、胃粘膜を守るため、ということでいいんでしょうか?もしもどうしても食べ物がない場合はどうすればよいでしょう?
芳賀さん:鎮痛薬の副作用の例として、「胃への負担」などがあると言われていますので、気になる方は、やはり「空腹時を避けて飲む」ことをおすすめしています。「胃を守る成分配合の製品を選ぶ」のもいいですね。どうしても何も無い時には服用の時のお水を多めに飲んでいただくといいかと思います。
飲み続けると効かなくなるの?
ーーー頭痛が始まったときに「すぐに薬を飲めない」理由は、空腹時の対応がわからないという声ともう1つ「頭痛のたびに鎮痛薬を飲んでいたら効かなくなるのでは?」という不安が原因のようでした。
芳賀さん:市販の鎮痛薬(※)は、用法・用量を守れば、通常は効かなくなることはありません。ただし、月に10日以上飲み続けると、逆に薬物乱用頭痛を引き起こすリスクがあります。※NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)
ーーー「飲んでも効かない」という声もあがりましたが……。
芳賀さん:「鎮痛薬を服用しても効かなかった」という方のほとんどは「服用するタイミングが遅れた」「自分の体質に合わない成分が配合された鎮痛薬を選んでいた」という場合も多いようです。まずは痛みが出たらすぐに服用すること、また、市販鎮痛薬が効かない場合は、医師・薬剤師に相談するなどし、自分に合った鎮痛薬を選ぶことをおすすめします。
市販鎮痛薬の選び方
ーーーバファリンにはいくつかの種類がありますが、その使い分けについて教えてください。例えば「片頭痛ならこれ」「緊張性頭痛ならこちら」「低気圧による頭痛なら…」など、頭痛の種類で判断はできますか?
芳賀さん:痛みや症状別におすすめできればわかりやすいと思うのですが、どの成分が合うかは人それぞれなんです。年齢によって体質が変わっていくので、ずっと同じものが効くとも限りません。なので、『バファリン』は数種類取り揃えており、それぞれの人に合ったものを選んで欲しいと思っています。痛みに関する成分の違いだけでなく、胃にやさしいものや眠くなる成分が入っていないものもあります。
ーーーバファリンシリーズではバファリンAが昔からあってポピュラーですが、こちらで「効かない」場合は、成分の違うバファリンEXやバファリンプレミアムを試す、ということですね?また、EXは頭痛に特化したものではないようですが、具体的にどのような痛みに有効ですか?
芳賀さん:『バファリン』シリーズでは、「アスピリン(アセチルサリチル酸)」「アセトアミノフェン」「イブプロフェン」「ロキソプロフェン」といった成分を含む製品を用意しています。ご自身にあった成分を含むものを選んでいただきたいのですが、効かないと感じた場合は以下の確認をしてください。(1)用法・用量を守って正しく服用しましたか?薬は飲むと血液に溶けて、ある一定の血中濃度の状態にある時にその効果を発揮するようにできています。そのため、決められた量より少ないと効き目は現れず、多すぎると危険な場合があります。(2)服用するタイミングが遅くなかったですか?鎮痛薬は痛みをより強くする「プロスタグランジン」の発生を抑えてくれます。そのため、痛みの初期に我慢して「プロスタグランジン」が大量に発生してしまうと、効果が出づらくなる場合もあります。痛みが強くなる前に鎮痛薬を服用することが大切です。また、『バファリンEX』は、「ロキソプロフェンナトリウム水和物」が成分で、頭痛のほか、腰痛や関節痛など、様々なつらい痛みに優れた効き目があります。
ーーー飲んだ鎮痛薬が「効かない」場合に他の製品を試しても、実はまた「成分が同じ」で効かない……ということを、繰り返してしまう恐れがあるわけですね。だったら、きちんと説明書で成分を確認して成分の違うものを買うのが一番良いのでしょうが、なかなかそこまでは……という場合には、どうしたらいいでしょう?
芳賀さん:効果がないと感じた場合は、次から次へ他の薬を試すのではなく、まず医師や薬剤師などの専門家に相談していただくことが大事です。その上で、市販の鎮痛薬にもいろいろなものがありますから、自分に合うものを見つけていただきたいです。市販の鎮痛薬で対処する場合に大切なことは、薬を飲むタイミングを逃さない、ということです。「薬は体によくない」と思い込み、我慢しているだけでは治りません。体のために!という我慢が、体や心に負担をかけることにもなりますので、痛みを感じたら、「すぐ」のタイミングで服用するのがおすすめです。鎮痛薬を上手に使って、我慢する時間を少しでも減らして、自分らしく、前向きに、充実した毎日を送りましょう。