雨の日(低気圧)頭痛って?
頭痛持ちさんの大多数が「雨の日とその前日」「台風が来る頃」などのように「お天気が原因の頭痛」を経験しているという事実がありながら、なかなかすっきりとは解明されていない「雨の日(低気圧)頭痛」。
長い間、雨の日の体調不良は医学的には根拠のない「気のせい」の域を出ず、研究されることも少なかったようですが、最近では気圧の変化が体に多くの変化をもたらすことが次第に明らかになってきました。やがて、雨の日(低気圧)頭痛は「気象病」の1つとされ、「低気圧頭痛」「気候性頭痛」などと呼ばれるように……。前回ではまず、「体の外側からの対処法」として、気圧を感じるセンサーの役目を担う耳のマッサージや、血行を良くする足裏のツボ、むくみ対策のふくらはぎと太もものストレッチを紹介しました。
「水分の循環」が、雨の日頭痛ケアの第1の鍵!
運動や半身浴で汗をかく
ーー前回教えていただいた「万能耳マッサージ」は雨の日だけでなく、朝の寝起きに気分のすぐれない日や、長く同じ姿勢でいた時などにリフレッシュができて快適です!今回も、雨の日頭痛のケアについて教えていただきたいのですが、既出の記事では漢方医学の考えから、これらの不調の原因を「湿気の影響で体に水分が溜まりやすくなっているから」と解説されていました。そういえば、今日も雨が降っていますが、今見てみると靴下の跡がくっきりと……。体に水が溜まりやすい、ということは、いわゆる「むくみ」が出るということですね?
齋藤友香理先生 以下、齋藤先生:前回は、ツボの刺激やストレッチなど、体の外側からのアプローチをご紹介しましたが、今回は体の内側からのケア、ということになりますね。雨の日は、湿気の影響で、頭・肩・胃腸などに必要以上に水分が溜まります。足のむくみは目で見てわかりやすいので、目安にしやすいですね。むくみが出ると、各所が適切に機能しづらくなり、不調が起こります。この状態を解消するために、体内から余分な水分を排出します。
ーー水分を排出するということは、まずは汗をかくことでしょうか?運動や入浴はどうでしょう?
齋藤先生:運動をする習慣がある人は、軽い運動をして汗を流すといいですね。でも体調不良で、すでにしんどい状態なら、無理に動かずに半身浴などで発汗を促します。
利水作用のあるお茶や常温の水を飲む
ーー汗をかく以外に、水分を排出するにはどんな方法がありますか?
齋藤先生:不要な水分を追い出すための新しい水分が必要ですね。まずは朝、50~100ml程度の白湯または常温の水を飲みましょう。朝の水分補給は、寝ている間に消費したものを補充する意味合いもあります。
ーーいらない水分を追い出すための新しい水分が必要なんですか!「水を飲むとまたむくんでしまう」と思い込んでいました!
齋藤先生:日ごろから小まめに少量ずつ食前食後にもお茶やお水、白湯を飲むようにしましょう。個人差はありますが、1日に6~7回トイレに行く程度の水分を摂り、水のめぐりをスムーズにしてあげることが大切です。あともう1つ大切なことは、冷たい飲み物はなるべく控えるということです。胃腸が冷えると水分代謝が低下してしまうので、常温か温かい飲み物にするよう心がけましょう。
ーー具体的にどのような飲み物がオススメですか?先生がご専門の漢方の知恵に沿ったものがあれば教えてください。
齋藤先生:水分のめぐりを良くする、という観点から「利水作用がある」はとむぎ茶やコーン茶がオススメです。少し目先の変わったものを取り入れると気分も変わって飲みやすいと思います。スーパーやドラッグストアで手に入りやすいもので、めぐりを良くするドリンクを簡単に作ることができるので、ご紹介しますね。
はとむぎ茶+黒豆茶
利水作用のある、はとむぎ茶に血や水分のめぐりを良くする黒豆茶をプラスして、むくみ対策を!
【材料】はとむぎ茶 大さじ2 黒豆茶 大さじ2 熱湯 300~400ml
【作り方】材料をティーポットに入れ、熱湯を注いで蒸らす。
ーー香ばしさと後味の良さで、ホットでも常温でもおいしく飲めます。ノンカフェインなので、夜のくつろぎタイムにも安心。また、食事の時やボトルで持ち歩くドリンクとしても最適!黒豆茶を手作りした場合は、お茶を淹れたあとの黒豆もおいしく食べることができ、黒豆ご飯も楽しめます。
あんず(アプリコット)紅茶
あんず(アプリコット)には、βカロテンやミネラルが多く含まれ、冷え予防に効果的!
【材料】あんず(ドライフルーツ) 2個 ダージリンティーバッグ 1袋 熱湯 約150ml
【作り方】あんずを縦半分に切り、カップにティーバッグとともに入れ、熱湯を注ぎ1分半~2分たったら、ティーバッグを取り出す。
ーー甘酸っぱいあんずのおいしさを堪能できる、至福のドリンク。朝の目覚めや、ダイエット中のおやつタイム、食後のひと時に紅茶とフルーツの甘みでリラックス。常温に冷ましてから飲むときは、少しあんずをスプーンなどでつぶして果実の風味を出しておくと冷めた紅茶の渋みをまろやかに調節できます。
着圧ソックスやむくみ防止サプリも有効
ーー「むくみ予防」と言えば「着圧ソックス」や「むくみ防止サプリ」が思い浮かびますが、これらも雨の日頭痛に有効ですか?
齋藤先生:着圧ソックスのようなアイテムを使うことはもちろん、水のめぐりの良い食材を積極的に取り入れるなど内側からのケアも大切です。むくみ防止サプリメントは野草や野菜など、カリウムの補充をするものや、リンパの流れを良くするものなどがあります。血液中にナトリウムが多いと、塩分濃度を下げるために水をため込んでしまい、むくんでしまいますが、カリウムを摂るとナトリウムを追い出すことができるので、結果的にむくみを予防できますね。
漢方の知恵を取り入れる
ーー漢方の観点からはどうでしょう?
齋藤先生:漢方で考える水はけをよくする食材は、すいか、メロン、冬瓜、ゴーヤ、きゅうりなどです。それぞれに利水作用があるので、体に余分な水が溜まってむくんでいる時に有効です。先に紹介した、はとむぎ茶は水分代謝を良くするだけでなく、栄養成分が豊富で胃腸の働きも整えます。コーン茶やその原料であるとうもろこし、そしてとうもろこしのヒゲにもデトックス効果があり、余分な水分の排出に役立ちます。
「鎮痛薬の使い方」が雨の日頭痛ケアの第2の鍵!
ーー水分補給の方法や半身浴、おいしくデトックスができるドリンクなど、今日からすぐにできる予防や対策ばかりを教えていただき、とても心強く思います。ところで先生は漢方の専門家ですが、薬剤師の資格もお持ちなので、鎮痛薬についてもお伺いしたいと思います「Aを最初に飲んで、効かなければBを飲む」というように2種類以上の鎮痛薬を使っている人が多いようなのですが、一般に鎮痛薬を飲む時間の間隔は4~6時間になっています。Aで効かない場合は、「次のBを早く飲みたい」と思う人が多いのは当然かと思うのですが、2種類の薬を短時間に飲むことは可能でしょうか?
齋藤先生:商品名は違っても、体内での働き方(作用機序)は同じものもあるので、飲む間隔を短くするということは、増量して飲むことと同じです。また作用機序が違ったとしても、身体にとっては代謝しなければならない異物であることは事実なので、胃腸障害はもちろんですが、肝臓や腎臓に負担をかけ、アナフィラキシー症状を起こすこともあります。自分を守るためにも、2種の薬を短時間に飲むことはやめましょう。
ーー次の薬を飲むまでの時間は必ず守る、ということですね。では、「胃にやさしい」と記載されている鎮痛薬を空腹時に飲むことは可能ですか?
齋藤先生:「胃にやさしい」と書かれている鎮痛薬は、胃粘膜への影響が比較的少ないため、このような書き方がされています。空腹時に飲むことも可能です。ただし、人によって影響はさまざまで、吐き気や胃痛が起こる可能性はゼロではありません。だからこそ用法に「空腹時は避ける方が望ましい」と書いています。ご自身の身体と相談して、普段から胃腸が弱い、何かあったら嫌だなと思ったら、何か口にしてから服用することをお勧めします。
雨の日(低気圧)頭痛ケアのまとめ
雨の日に起こる頭痛の原因は、気圧とあともう1つ、湿気のせいで体内に水分が溜まりやすくなることが原因のようです。これを防ぐためには、半身浴や運動で汗をかいて溜まった水分を排出するか、新しい水分を体内に送り込み溜まっていた水分を追い出すことが必要です。お茶、水、白湯などを小まめに摂り、1日に6~7回ほどトイレに行くような状態にすることを心掛けます。水分補給で気をつけたいことは、冷たい飲み物はNGということ。常温または温かい飲み物、そして利水作用のあるはとむぎ茶やコーン茶、黒豆茶などが有効です。おいしく栄養補給やリラックスをしたいなら、あんず紅茶もオススメ。
さまざまな工夫をしても、痛みに襲われてしまった時には、用法・容量を守り、速やかに鎮痛薬を服用します。正しく使えば鎮痛薬はとても頼りになるものですが、思い込みや自分なりの解釈で服用の間隔や容量を守らずに使うと、体は異物として捉えてしまい、肝臓など内臓に負担をかける結果となるため、自己判断は禁物です。
お話を伺ったのは……薬日本堂・薬剤師 齋藤 友香理先生
東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務め、多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。また社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。