教えてくれたのは……みなと芝クリニック 川本徹 院長
"メスをとれる内科"たる外科医になれ」の教えの元、筑波大学附属病院の消化器外科で、内科医よりも内科的な外科医をめざす。2010年に東京の三田駅近くにみなと芝クリニック開院後、現在の地でリニューアルオープン。内科や外科から、皮膚科、整形外科、胃腸内科、大腸肛門外科まで、幅広い診療を行っている。日本外科学会認定医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会専門医。
日本人が30代から糖尿病になりやすい理由
――私が先日受けた腸内フローラ検査では、“痩せ菌”と呼ばれる善玉菌の一種が「なし」と判明してショックです。
川本先生:「アッカ―マンシア」や「クリステンセネラ」は日本人には少ない人が多いんですよ。もともと日本人は痩せ型なので、体内に必要なかったんでしょうね。
その代わり、日本人はインスリンを分泌する能力が欧米人に比べて弱く、糖尿病になりやすい体質なのです。
――体質が欧米の方と異なるんですね。
川本先生:はい。欧米型の食事はインスリンが必要となるので、現代の食生活は糖尿病になりやすいと言えます。
若い頃は病気もしづらく気づきませんが、脂質が多い食生活を続けて、30代、40代になると成人病を発症する方もいます。
糖尿病や高脂血症、コレステロールが高い、メタボリックシンドロームなどの人は、もちろん遺伝の影響もありますが、食生活の影響が大きい。やはり食習慣は大事です。
認知症やうつ病にも大きく関係が
――先生が日々診察していて、特にアラフォー世代が知っておくべきと感じることはありますか。
川本先生:最近はヨーグルトでアレルギーを抑える効果をうたうものもあるので、腸内環境がアレルギーに関係していることも知られてきました。でも腸内環境が悪くなって起こる病気は「便秘や下痢くらいでしょう」という感覚の人もまだまだ多いです。
ところが今や腸内環境の影響は、認知症やうつ病にも大きく関わってくるというデータが出てきています。若い頃から脂質の多い食生活を続け、その結果60歳くらいから認知症になってしまったとしたら怖い話です。治せる病気ならいいですが、認知症の多くは進行性です。
腸内細菌のバランスが悪いことで、精神疾患や脳神経疾患なども将来的に起こることを知っておき、40代くらいからは食生活についてもっと真剣に考えていただけるといいですね。
――今は腸内検査も手軽にできるようになってきましたが、利用している方は増えてきましたか?
川本先生:今までは腸内環境を調べようとすると数万円かかり、そこまでして調べても役立つとは認識されていませんでした。腸内細菌の重要性が、今もそこまで知られていないと感じています。
腸についてざまざまなことがわかってきたのは最近のことです。気軽に検査もできるようになってきたので、利用する手はないですね。
私の患者さんの中にも、腸内環境を整える食事に変えたら、成人になってからでもアレルギーやアトピー性皮膚炎がよくなったという人が実際にいます。またお話ししたとおり、精神疾患や脳神経疾患にも大きな影響があるため、健康に大きな影響がある腸の重要性を知って、30、40代から気をつけてほしいと思います。
ーー腸内環境を整えることは、便秘だけでなく、認知症などの予防にもつながるとは驚きました。脂質の多い食事には特に注意していきたいものです。