教えてくれたのは……新見正則先生
オックスフォード大学医学博士(免疫学)。新見正則医院院長。
外科医×免疫学者×漢方医。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙者。最新刊『しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通』。
鼻づまりは「交感神経」と関係している
――「ペットボトルを脇にはさむと鼻づまりが解消する」とテレビやSNSなどで紹介されていますが、実際のところ、効果はあるのでしょうか?
新見先生 「うん、これは本当ですね」
――そうなんですか!
新見先生 「鼻づまりというのは、鼻の粘膜がむくんでいる状態です。それを治す薬が、交感神経刺激薬と呼ばれる薬です。交感神経を刺激すると、鼻の粘膜のむくみがとれるというわけなんですね。
新見先生 「交感神経を刺激する非常に簡単な方法が、からだを“戦闘モード”にすることです。たとえば、びっくりしたり、運動したりすると、交感神経が優位になる。こうしてからだが驚く状態を作ると、鼻が通るというわけです。たとえば、極端な例ではありますが、お化け屋敷に行っても鼻は通ると思いますよ。」
――お化け屋敷に行くと、鼻づまりが解消する!
新見先生 「そう。だから、ものすごく冷たいペットボトルを脇にはさんでからだがびっくりすれば、鼻づまりが解消するというのは理にかなっています。ただし、気持ちいいと感じる冷たさだと、副交感神経が優位になるので、効果はないでしょう。」
この鼻づまり解消法はウソ?それともホント?
「鼻づまりを治すには、からだが“戦闘モード”になることが肝心」と新見先生。鼻づまりを解消する“裏ワザ”は、ほかにもあるのでしょうか? SNSなどで話題になっているさまざまな鼻づまり解消法の真偽について、新見先生にジャッジしていただきました。
鼻のつけ根を温める…×
新見先生 「これは誤っていますね。温めると血流が増加してむくみが増し、より鼻がつまる可能性があります。」
寝る姿勢を変える…△
新見先生 「むくみは重力に従って起こるので、たとえば右の鼻がつまっているときは右半身を上にして横向きになれば、右側の鼻のつまりは解消すると考えられます。ただし、むくみは片方しか解消しないので、効果としては半分ですね。」
飲酒を控える…△
新見先生 「お酒を飲むと、顔が赤くなることがありますよね。顔が赤くなるのは、血流が増したから。お酒を飲むことで血流が増すと、鼻は余計につまると考えられます。血流が増す行動を控えれば、鼻づまりの解消に多少効果があるかもしれません。」
運動する…○
新見先生 「運動すると、交感神経が優位になります。するかしないかは本人次第ですが、鼻づまりの状態で運動すると、鼻は通ります。」
漢方を飲む…◎
新見先生 「『麻黄(マオウ)』という生薬は、からだの驚いた状態をつくる働きがあり、鼻づまりの解消が期待できます。そのほか、麻黄が含まれている『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』や『葛根湯(カッコントウ)』、鼻炎に使われることが多い『荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)』などがおすすめです。薬局やドラッグストアに置いてあるので、購入するときは薬剤師に相談してみましょう。」
鼻づまりが続くと、ぼんやりしたり、集中力が途切れたりしてしまいがち。自分に合った「からだをびっくりさせる」方法を見つけて、鼻の通りをスッキリさせましょう!