教えてくれたのは……沢岻 美奈子(たくし みなこ)先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。女性ヘルスケア認定医。神戸にある沢岻美奈子 女性医療クリニックの院長。子宮がんや乳がん検診、骨粗鬆症検診まで女性特有の病気の早期発見のための検診を行う。診療では、更年期を中心にホルモンや漢方治療だけでなく、カウンセリングや栄養療法も取り入れている。
40代女性に考えられる性交痛「2つの原因」
年を重ねるにつれ、身体の変化を感じている方も多いと思います。その変化の中のひとつに「性交痛」があるのだそうです。
沢岻先生によると、性交痛が起こりうるのは、主に“2つの原因”が考えられるとのこと。それぞれ詳しく解説していただきました。
原因1.女性ホルモンの低下によって起こるGSM
40代女性は“更年期”と聞いても、「私はまだだから」とピンとこない方もいるかもしれませんが、実際には30代後半から女性ホルモンの低下が始まります。
女性ホルモンの低下により、膣の乾燥感や帯下(おりもの)の変化が起きて性交痛が生じる病態をGSM(閉経関連泌尿生殖症候群)と言います。性交痛以外にも、膀胱炎にかかりやすくなった、膣の臭いが気になるなどの症状があるのが特徴です。
GSMの場合の痛みの特徴
GSMの性交痛で訴えが多いのは、潤い不足の乾燥感による、膣の入り口の痛みです。ホルモン低下によって、若い頃とは違ってセックスで濡れにくくなり、乾燥して痛みにつながります。
乾燥や帯下の不足による痛みは、GSMが原因になることがほとんどです。しかし、セックスはメンタルの影響も大きいため、十分な前戯なしに挿入すると痛みはあります。一度痛みを経験すると、その後は不安などで緊張し、さらに痛みが続く場合もあります。
原因2.子宮内膜症
最近の月経痛の多くの原因と考えられている子宮内膜症の場合も、性交痛を引き起こすことがあると考えられています。
卵巣に子宮内膜症ができて、卵巣チョコレート嚢腫になることがあります。また、子宮筋層内に内膜症ができると、腺筋症と呼ばれ、子宮の増大や経血の増加などの症状にもつながるのです。内膜症の病変が卵巣や子宮だけでなく骨盤全体に広がると、生理時以外にも慢性的な痛みにつながり、性交痛も出てくる場合があるでしょう。
子宮内膜症の場合の痛みの特徴
子宮内膜症が原因で生じる痛みは、子宮と直腸の間にある内膜症の影響で「肛門が圧迫されるような感覚」と表現する方が多いです。膣の奥と子宮の入口付近に痛みを感じることが特徴だと言えます。
子宮内膜症の痛みは、性交時に限らず、普段から生理痛もあることがサインのひとつになりますよ。
そこで知っておきたいのが、対策方法です。次回の記事では「性交痛を改善するためにできること」について、ご紹介します。