教えてくれたのは……抗菌博士 梶浦義浩さん
1985年、株式会社シナネンゼオミックに入社。以来、抗菌剤「ゼオミック」の研究・開発に従事。現在は同社プロジェクト担当として、市場開拓も担当。抗菌試験管理士、臭気判定士の資格も有する。イベント等では抗菌博士として講師を務める。
冷凍→解凍→再冷凍が危険なワケ
冷凍保存では菌は死滅しない
冷凍中は菌の増殖を防ぐことはできますが、菌を死滅させることはできません。冷凍前に付着した菌のうち、1桁程度の菌が死滅することはあっても、ほとんどの菌は生き残ります。
再冷凍によって菌の数が増えるメカニズムとは
菌は10°C程度から増殖を始めます。解凍によって食品の温度が上がると、生き残っていた菌が増殖を始めます。食品の菌を増殖させたまま再冷凍することになるため、次に解凍した時にはより多くの菌が付着した状態となってしまうのです。菌が増殖した食品を摂取すると、食中毒などの発生リスクにつながります。
食品を解凍したら、すぐに使い切る!
解凍後は直ぐに使い切りましょう。冷蔵庫で2日間程度の保存可能な食品であったとしても、次の2つのNG行為<1.冷凍前のNG行為 2. 解凍する時のNG行為>に当てはまる場合は保存できない場合があります。
1: 冷凍前のNG行為
- 冷凍前に、包装を開放した状態で食品を放置した場合。
- 消毒等をしていない手で食品に触れていた場合。
2: 解凍する時のNG行為
- 凍結している食品を調理台に放置し、室温で解凍した場合。
解凍する時の注意点
解凍は冷蔵庫の中や、電子レンジで行いましょう。水を使って解凍する場合には、気密性の容器に入れ、流水を使います。使う分だけ解凍し、解凍後はすぐに調理することが大切です。
加熱では死滅しない厄介な菌に要注意!
カレーやシチューなどの具によく使われるジャガイモやニンジン等にはウエルシュ菌が付着している可能性があります。ウエルシュ菌は芽胞状態になると加熱しても死滅しないため、殺菌することが非常に難しい菌です。
ウエルシュ菌が食品についていたら……
ウエルシュ菌のような加熱しても死なない菌が食品に混入してた場合、冷凍する前に常温で長時間放置すると菌が増殖をしてしまいます。増殖したウエルシュ菌は毒素を産生し、この毒素を摂取すると、食中毒が発生する可能性があります。
残ったカレーやシチューは、これらの菌が増殖しないように早急に冷凍保存しましょう。
解凍直後の冷蔵保存は効果があるの?
解凍後すぐに冷蔵保存した場合、冷凍保存による品質や風味の低下の可能性はありますが、微生物の観点からの食中毒発生リスクは低くなると考えられます。ただし冷蔵状態でも増殖する菌は存在するため、解凍後は早めに食べるようにするのがベストです。
いかがでしたか? 解凍後の再冷凍が、菌のリスクを高めてしまう行為になるとは驚きです……。家族の健康を守るために、冷凍保存を過信せずに適切な対応を心がけようと思います。