教えてくれたのは……織田 奈央子先生
摂南大学農学部 食品栄養学科助教。専門分野は、栄養学。五大栄養素であるミネラルの中でも特にリンに注目して研究。主な研究には「ミネラル代謝の変動と生体への影響」「食事性リンに着目した病気が出来上がっていく仕組みや予防法」などがある。
「プロテイン」の摂り過ぎによって起こりうる健康リスクとは
身体づくりのために、運動後にプロテイン摂取を習慣にしている方も多いのでは? しかし、過剰な摂取は健康リスクが生じる可能性があるため、適量を心がけることが大切なのだそうです。どのようなリスクが考えられるのかを織田先生に伺いました。
織田先生:プロテインは手軽にたんぱく質を補給できることから、最近では健康や身体づくりのために飲用されている方も多いかと思います。ただし、プロテインを摂り過ぎるとたんぱく質の過剰摂取となり、たんぱく質を代謝する肝臓や腎臓に負担がかかりやすくなります。特に腎機能が低下している人や腎不全の方は、たんぱく質の摂取に制限がかかる場合があるため、医師や管理栄養士に相談が必要です。
また、最近の研究結果では、たんぱく質を過剰に摂取すると腸内環境の悪化につながることも報告されています。たんぱく質を過剰に摂取すると、余ったアミノ酸が腸内細菌によってアンモニアなどの有害物質に分解されます。これにより悪玉菌が増殖し、腸内環境のバランスが崩れてお腹の不調につながることも考えられるのです。
適切な摂取量であれば体にうれしいメリットも!「1日の適量」は?
摂り過ぎはNGですが、適切な量の摂取であれば体にとってうれしいメリットがあるとのこと。1日にどのくらいの量が望ましいのでしょうか。
織田先生:日本人の食事摂取基準2020年版では、18歳以上の成人女性で一日あたり50gのたんぱく質の摂取が推奨されています。これは、卵1個、牛乳コップ1杯、納豆1パック、鮭1切れ、鶏肉100gに相当します。
食事だけで必要なたんぱく質を補うことが難しい場合に、手軽に補給できるプロテインは有効です。ご自身の食生活を振り返ってたんぱく質が不足気味な方は、プロテインを1杯程度(たんぱく質約15g)取り入れるとよいでしょう。
たんぱく質は、筋肉や骨、臓器、ホルモン、抗体成分など体を構成する多くのものに必要不可欠な栄養素であり、毎日の食事に欠かすことはできません。最近では、高齢者のフレイル(加齢により心身が弱ってしまう状態)予防や若い世代のダイエット、身体づくりとして、たんぱく質の積極的な摂取が注目されています。
一緒に摂って栄養の吸収アップ!おすすめの飲み方
織田先生によると、プロテインの栄養を効率的に摂取するためには、一緒に摂るとよい食材があるのだそうです。おすすめの食べ方を教えていただきました。
織田先生:たんぱく質の吸収を高める栄養素として、「ビタミンB6」が挙げられます。ビタミンB6はたんぱく質の分解や再合成を助ける補酵素として働く効果があり、アミノ酸代謝に重要な栄養素です。バナナやさつまいもなどにビタミンB6が豊富に含まれていますので、一緒に摂取することをおすすめします。
上手に取り入れて、より健康的な生活を送ろう
健康的な生活を維持するためにも、たんぱく質は欠かせない栄養のひとつです。食事でのたんぱく質摂取を意識しながら、適量のプロテインを上手に取り入れてみてくださいね!