連載記事

「自分は雑に扱っていい…。」の考えが“おにぎり”で変わった。私が色鮮やかなおにぎりを作り続ける理由

働く・学ぶ

 「自分は雑に扱っていい…。」の考えが“おにぎり”で変わった。私が色鮮やかなおにぎりを作り続ける理由

2022.12.08

オリジナル連載『わたしは〇〇で人生が変わった』第9回目。20代の頃、自分が40歳になることを想像してどう感じていましたか? 「40代なんて、もう人生が終わりかけじゃん」とか、「そんなに年齢になるのが怖い!」なんて思っていた方も多いのではないでしょうか。若い頃は、年齢を重ねることにネガティブな印象を持ちがちです。ですが、実際は年齢を重ねたからこそ出会える喜びや楽しみがあるんです。「今が楽しい、将来が楽しみ!」と語る、人生を謳歌しキラキラ輝いている方のお話は、きっとあなたに「40代から人生を楽しむヒント」を教えてくれるでしょう。

広告

連載:わたしは〇〇で人生が変わった!40歳から人生はもっと楽しくなる

今回お話を伺ったのは、ゆこさん(39歳)

ゆこさん

新卒後、大手企業の販売員として働く傍ら、趣味で習い始めたネイル。その技術を活かし、個人事業主としてネイルサロンをオープンしながら、結婚、出産を叶え、順調な人生を歩いていたはずが……。育児と仕事の両立に悩まされ、人生の迷走期へ突入。ボロボロの自分のために始めた苦手な料理「おにぎり」が、現在39歳の彼女の人生に新たな可能性を開いてくれました。

開業・結婚・出産と華々しい人生のはずが……

ネイルサロン時代

──ネイルサロンを開業したきっかけは?

ゆこさん:販売員をして5年ほど経った頃「自分にしかできない仕事って何だろう?」と考えるようになりました。その頃、趣味で通い始めたネイル教室で、クリエイティブな楽しさを知ったんです。サロン開業は、その2つの経験が両方活かせると思って。当時はこれでやっと人生のスタートに立った、という感覚でした。

──その後、ご出産されてから何があったのでしょうか?

ゆこさん:サロンの他にネイルの知識を活かした、美容ライターもはじめ、仕事が一番楽しかった時期。同時に、出産も素晴らしい体験だったのですが、両立が大変で……出産前にはわからなかった現実を知りました。

当時はどこまで自分で抱えて、どこからを人に甘えていいのかがわからなかったんです。今なら、もっと人に頼ったりすればよかったと思うんですけどね。

──当時はどんなスケジュールで働かれたんですか?

ゆこさん:平日は子どもを保育園預け、美容ライターの仕事をし、土曜だけネイルサロンを開いていました。でも、子どもの体調不良で、保育園から呼び出されることもあって……。仕事をすることに罪悪感を持ったり、自分の睡眠時間を削って仕事をしたり。この頃から、自分のことは後回し、無意識に自己犠牲の意識が抜けなくなってきたように思います。

──なぜ、そのような心境になったのでしょうか?

ゆこさん:多分、自分の仕事が軌道に乗っていなかったからだと思います。子育ても完璧にはできていなくて、自分で勝手に空回りをしていました。今思えば、完璧な育児なんて、ないんですけどね(苦笑)。その空回りしている分を埋めるように、疲れていても、時間がなくても、ご飯を手作りしたりと、毎日必死でした。

どこかで自分を認めてあげられたらよかったんですけどね、全てが中途半端に思えて。当時は「わたしがもっとしっかりしないと」と自分で自分を追い込んでいました。

ちょうどこの頃、コロナが世界中を圧巻し、ゆこさんのサロンも閉店を余儀なくされます。そのまま人生の迷走期に入った、彼女を救ったのが「おにぎり」でした。

テキトーなお昼ご飯=自分の価値

作り始めたころ

──なぜ「おにぎり」を作り始めたのでしょうか?

ゆこさん:当時は、自分のことを後回しにしていたので、夫も子どももいない平日のお昼ご飯がどんどんテキトーになっていったんです。それはいつの間にか「自分は雑に扱っていい存在」だと潜在意識に思い込ませていたようで、だんだん気持ちが荒んでいきました(苦笑) 

でも、このままじゃいけないって。

自分に手をかけてあげようと思って、お昼ご飯は自分のためだけに「おにぎり」を作ることにしました。

──なぜ「おにぎり」だったのでしょうか?

ゆこさん:もともと料理が苦手なんです。だから、おしゃれなパスタとかだったら続かないと思いました。でも「おにぎり」は、ご飯と海苔と塩があればいい。

それに、前から「おにぎり」ってほっこりする食べ物だと思っていて。気持ちを込めて握る工程が、自分を大切にする行為と同じだなと。自分のできる範囲で、自分を大切にしていければいいなと思ったんです。

──「おにぎり」を作り初めてから、どんな変化が?

ゆこさん:手間と時間をかけなくても「ひと握り」だけで、自分を大切にしていくことを、実感できるようになりました。

そう思えるようになった頃「おにぎり」習慣を続けるために始めた記録用インスタにメッセージをもらうようになったんです。「参考にしてます」「メニューに困っていたのでタメになります」とか。自分のために始めた「おにぎり」が、誰かのために役に立っていることで、私の気持ちも徐々に上向きになっていきました。

──自己犠牲の気持ちは、もうなくなりましたか?

以前はどんなに疲れていても、夜無理して仕事をすることもありましたが、今では時間の使い方が上達しました。睡眠時間を削るのではなく、スキマ時間を活用したり、家事をするのがしんどいときは素直に家族に甘えたり。肩の力が抜けるようになったので、家族も自分も同じように大切にできるようになりました。

そんなゆこさんの「おにぎり」インスタはどんどん話題に。ついには、テレビや雑誌に取り上げられ、2022年11月、書籍出版となりました!

書籍

毎日おにぎり365日 日々おにぎり/ゆこ ¥1,650 (自由国民社)

料理が苦手だから、躊躇なくチャレンジできる!

おにぎりを作っている写真

──なぜ、毎日違うアイデアが出るのでしょうか?

ゆこさん:料理が苦手だからだと思います。私の弱点でもあり、強みでもあるんですが、料理が上手な人だったらきっと選ばないような具材も、私は躊躇なく使ってしまうので、怖いもの知らず(笑)。でも、「おにぎり」はご飯なので、何を選んでも結果的に上手くまとまるんですよ。

──今までで一番チャレンジした具材は?

ゆこさん:お菓子ですね(笑)。お仕事でお世話になった方が「柿の種は?」とヒントをくださって、試してみたら、本当に美味しかったんです!

柿の種おにぎり

──これから試してみたい具材はありますか?

ゆこさん:色々な具材に加えて、健康やダイエットなど、カテゴリー別に作っていきたいなと思っています。

──今のお気持ちと、今後やりたいことは?

ゆこさん:やっと妻とか、母という役割を抜いた部分で、熱中できるものが見つかってきたなと思います。迷走期から抜けて、少し視界が開けてきたなという感じですね(笑)。

「おにぎり」で色々な経験をさせていただいたので、今後はさらにライター(saitaではおにぎりレシピライターとして活躍中)の経験を活かして、「おにぎり」にまつわる、心温まるエッセイを書けたらいいな、と思っています。

saita読者へメッセージ

ゆこさん

そんな彼女から、saita読者にエールをいただきました。

ゆこさん:以前の私は「自分の得意な部分を見つけて、伸ばさないと!」と思い込んでいました。自分にしかできない仕事、自分の長所、できること……でも「おにぎり」は、私の苦手な分野で、まさかそこで楽しいことを見つけられるなんて、自分でも意外な結果でした。

「おにぎり」を始めた時も、何か大きな目標を達成したいわけではなくて、日々自分にできること を続けてきただけなんです。

SNSは一部分しか見えないので、ついキラキラしている人を見て、眩しいと思ってしまいがちです。でも、今自分が当たり前と思い込んでる、育児や家族のための家事をしているだけで、十分すごいこと。私を含め、そこに気づけるだけで、救われることが多いと思います。

***

365日分のおにぎりが掲載されている著書を、どんどん汚して欲しいという、ゆこさん。キッチンに置いて、直に書き込みをしたり、お気に入りにチェックを入れたり「自由に使ってもらえたら幸せです」という言葉に、彼女の温かい人柄が現れていました。

広告
saitaとは

連載記事

わたしは〇〇で人生が変わった!40歳から人生はもっと楽しくなる

広告