検診を受ける際に気をつけたいことは?
――乳がん検診を受ける際の病院選びで、「こういう病院がいい」というポイントはありますか?
乳腺専門の先生がいる病院や、乳がんの患者さんを多く見ている先生がいる病院に行くのは良いと思います。ただ、乳がん検診は、あくまでも一次スクリーニングなので、検診を受ける病院よりも、検診を受けるということが大切です。
――乳がん検診を受ける場合、検査を受けるのに適したタイミングというのはあるのでしょうか。
生理前だと胸が張っていることもあるので、マンモグラフィ検査で痛みを感じてしまう場合があります。生理が終わった1週間後くらいがいいかもしれませんね。
自治体の乳がん検診に「超音波検診」がない理由
――厚生労働省は、40歳以上で2年に1度の乳がん検診を推奨しています。この検査内容は問診とマンモグラフィとなっていますが(※1)、乳がんは超音波(エコー)検査で見つけることもできますよね。なぜ、市町村の検査内容に超音波検査がないのでしょうか。
乳がん検診では、マンモグラフィと視触診で検査をします。このときに超音波検査をしない理由としては、まず超音波検査ができる超音波検査技師が足りていないということ。もう一つが、超音波検査を使った検査の有効性が確立されていないということがあります。
――有効性が認められていないというのは具体的にどのようなことですか?
現在、厚生労働省が40代女性を対象にマンモグラフィと超音波検査を併用する「J-START(超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験)」というプロジェクトで比較試験を行っています(※2)。マンモグラフィと超音波検診を併用した乳がん検診を行うことで乳がんの発見率は上昇しましたが、死亡率を下げることまでは証明されていません。さらに、併用して検査をすることで、がんではないものも多く見つけてしまうということがわかりました。がんではなくても、見つけた以上は針生検という検査をするために病院に行く回数が増えます。検診を受けることによって治療する必要のないものを見つけてしまう。我々の世界では、これを「検診の害」と言います。
――「J-START」の試験対象者が40代女性に絞られている理由は何ですか?
マンモグラフィ検査では、がんは白く映ります。しかし、30~50代の方に多く見られる “高濃度乳房(デンスブレスト)”も白く映るのです。そうすると、マンモグラフィの画像だけではがんを見つけにくいという問題が起こります。乳がんの罹患率は30代後半から40代後半が多いので、40代女性で併用検査をすることで有効性が比較できるのです。
できるだけ小さいうちに乳がんを見つけるほうがいい、というわけではない
――素人的な考えでは、できるだけ小さいうちに乳がんを見つけるほうがいいので、超音波検査もしたほうが小さいうちに見つけられるのでは? と思うのですが、そうではないのですね。
なかなか難しいことではあるのですが、乳がんはがん化が起こってから体で認識できるようになるまでに約10年かかると言われています。また、がんの大きさが1cmから2cmになるにはだいたい1年ぐらいかかります。小さいうちに見つかれば安心という気持ちになるのはわかるのですが、米粒くらいのものや1cm以下のものを見つけようとする必要はなく、2㎝ほどの大きさで見つかった乳がんは、ほとんど治ります。ですから市町村の検診も2年に1度という考え方になっているのです。
――1cm大きくなるのに約1年かかるというのは、どの乳がん患者さんも同じスピードなのでしょうか?
いえ、もちろん個人差がありますし、中には悪性度が高いがんもあります。その場合は、数ヶ月で大きくなることもあるのですが、そのような進み方をする方は、年間9万人が乳がんになると言われているうちの少数です。また、どんなに検診の間隔を半年に1回、1年に1回に短くしたとしても、検診と検診の間にがんができる方はいらっしゃいます。
――ということは、現在推奨されている2年に1度の乳がん検診を毎回受けておけば、だいたいの場合は治る段階でがんを見つけることができるということですね。
そうですね。2年に1度の乳がん検診は最低限の頻度です。それに、月に1度のセルフチェック。これをしっかり行うことが大切です。
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