カニカマを世界で初めて開発した「株式会社スギヨ」
ーー世界で初めてカニカマを作ったのが御社だそうですね。そのまま食べたりサラダに入れたりと使い勝手がよく、今では多くの家庭で使われていますが御社の数ある商品の中で最も売れている商品はどれでしょうか?
そうなんです、カニカマを世界で初めて作ったのが弊社です。実は地域によって売れ筋というのは違っていて、スギヨの本社がある北陸では「ロイヤルカリブ」が一番売れています。そして、全国的に人気が高い商品は、「大人のカニカマ」や「匠のカニカマ」、そして「香り箱」ですね。その中でも一番の人気は「香り箱」です。
――最高級カニカマとうたう「香り箱」がやはり人気なのですね。
この「香り箱」は、「香箱ガニ(コウバコガニ)」と呼ばれる蟹の脚を再現しています。
コウバコガニは聞きなじみがない方も多いかもしれませんが、ズワイガニのメスのことを呼び、石川県にはとてもなじみの深い蟹です。この蟹はズワイガニのオスに比べるととても小さいですが、身が濃厚で旨味が詰まっていて、とても美味しい蟹です。しかし、資源保全のために水揚げできる期間が1か月ほどしかないため、なかなか石川県外の方は食べることができないのです。その小ぶりで旨味が濃厚なコウバコガニの、一番身が大きく、茹でたての最高な状態を多くの方に食べてほしいという思いから、スギヨではコウバコガニに限りなく近いリアルなカニカマを、日々改良をくわえながら作り続けています。
実は「カニカマ」は失敗から生まれた
――「香り箱」は、始めからこの形だったのでしょうか?
実はスギヨも最初からカニカマを作ろうと考えて開発したわけではありません。今のカニカマができたきっかけは、「人工クラゲを作ろうと試みたが失敗したこと」なんです。
1960年代、珍味に使われるクラゲを中国から輸入していたのですが、その輸入がストップしてしまったんです。そこで、依頼を受けたスギヨは人工クラゲを作ろうと開発を行っていましたが、コリコリとした食感は再現できたものの味をつけようとすると溶けてしまい失敗。そんな時、その失敗作を刻み食べてみたところ、先代の社長はじめ、当時の研究者があることに気がついたそうです。それが「この食感は蟹に似ている」ということです。これは普段から蟹を食べることが多かった北陸の食文化のおかげであると考えています。そこからカニカマを作ることを思いつき、さらに研究を続け、1972年に初代カニカマとなるフレーク状の「かにあし」を販売しました。
ーー人工クラゲ作りに失敗したことが、今のカニカマにつながったんですね。失敗から生まれたという「かにあし」ですが、すぐに皆さんに受け入れてもらえたのでしょうか?
実は、最初はどの問屋さんにも「かにあし」は全く相手にしてもらえませんでした。しかし、築地場外の1店舗だけが「これは面白い」と興味を持ってかにあしを販売してくれたんです。それが1972年のことです。この築地での販売が100年に1度といわれるヒットとなるきっかけとなり、あっという間に「かにあし」は話題になり、スギヨのトラックが築地市場に届くと業者の方々が奪いあうくらいの大人気となったんです。
その後、スギヨは棒状になった「かにあし」である「ゴールデンかにあし」を販売しました。すると、他の企業もおなじような商品を多く作り始めたのですが、スギヨはさらに本物の蟹にこだわって研究を重ねた結果、1990年に、今でも北陸の方々に愛されている「ロイヤルカリブ」を発売しました。実際の蟹の繊維にとても近い食感を実現したカニカマです。
もうこれ以上蟹に近いカニカマは難しいだろうと言われていたのですが、さらにスギヨとして徹底的に研究を重ねることにより、より本物の蟹に近い、そして旨味が凝縮されているメスのズワイガニにこだわって作り上げたカニカマが、2004年に誕生した「香り箱」です。