教えてくれたのは……朝澤恭子先生
東京医療保健大学東が丘・立川看護学部看護学科准教授。看護学博士。看護学修士。助産師。看護師。妊娠、出産、不妊治療の臨床の現場に立ち会いながら、産後ケアなど婦人科目の論文を積極的に発表。各種メディアにて、不妊や生理など女性特有の悩みについての正しい知識を発信し続けている。
出産を望むなら、人生の優先順位を変える必要がある
「もしあなたが35歳以上で、出産したいと思っているなら、今すぐ人生の優先順位の1位を『妊活』にしてください」というのは看護学博士の、朝澤先生。
「仕事や勉強は、産後でも取り戻せますが、卵子も精子も徐々に機能低下し、妊娠が難しくなってきます。36歳を境として、妊娠しても流産をする確率が高くなっている事実が明らかになっているんです」(朝澤先生)
参考:日本産科婦人科学会のデータブックより
まずは夫婦の話し合いから
では高齢出産をしたいと考えたとき、まず何をすればいいのでしょうか?
「最初にするのは、夫婦で出産への価値観を合わせることです。いつ頃出産したいのか、不妊治療をするなら、その期間や費用、どこまでやるのかなどを、しっかり話し合っておくことをおすすめします」(朝澤先生)
夫婦の意思が固まったら、次は病院選び。夫婦の目的に合致した病院を選ぶことが大切だと朝澤先生はおっしゃいます。なぜなら、いきなり不妊治療専門のクリニックへ出かける人の中には、病院が勧める治療のスピードに戸惑ってしまう人もいるそうです。
デリケートな夫への配慮も忘れずに
病院選びで、もう1つ知っておきたいことがあります。それが「夫のケア」。不妊の原因は、女性だけではありません。男性側にも原因があるため、精子を調べる必要があるのですが、それを嫌がる男性も少なくないとのこと。
「多くの男性はデリケートで、男性側に不妊の原因があることを知識として知らない人もいらっしゃいます」(朝澤先生)
そして、総合病院だからといって、すべての病院で男性の不妊について調べられるわけではないのだそう。
「精子を調べられる病院は、泌尿器科があるなど条件が限られています。
男性不妊を調べず、不妊治療を続けるほど、高齢出産に時間の余裕はありません。妊娠を急ぐなら、男女とも一緒に検査できる病院に通いましょう」(朝澤先生)
高齢出産こそ、産後まで万全にプランニングを
夫と一緒に妊活し、そして無事に出産を迎える前に、まだまだやっておきたいことがあります。それが「産後の計画的なスケジュール」です。
高齢出産は20代に比べ体力が落ちている場合も多いので、24時間つきっきりの育児で睡眠不足や疲労困憊が予想できます。さらに、周りのサポートが少なく負担が増えていくことで、産後うつを発症してしまう危険を、事前にしっかり回避しておきましょう。
「正直、産休(産前6週、産後8週)だけの社会復帰は、高齢出産をした身体にはキツいものです。ご自身はもちろん、パートナーも育児休暇取得の準備や、テレワークの活用など、できる限りの対策を考えておきましょう。
また産後のケアとして、病院や自治体の育児サポートなどを事前に調べて、産後のケアを万全に計画し、整えておきましょう」(朝澤先生)
女性は仕事と出産のどちらを優先するか悩むことも多いもの。もし35歳を超えて出産を考えるなら、人生の優先順位を今一度考える必要がありそうです。