教えてくれたのは……藤野智哉先生
精神科医。産業医。公認心理師。
幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見をメディアやSNSで発信中。
『「そのままの自分」を生きてみる』
著者:藤野智哉
価格:1,760円(税込)
発行所:ディスカヴァー・トゥエンティワン
すべてのストレスを解消する“魔法”はない
なんだか疲れた、元気が出ない。そう感じたとき、どんなふうに気分転換していますか? 友人に話を聞いてもらいますか? それとも、家で横になってスマホを眺めるでしょうか?
リフレッシュの方法は人それぞれとはいうものの、「ストレスがひどくたまってしまったら、回復には時間がかかります」と精神科医の藤野智哉先生はおっしゃいます。
藤野先生 「『○○をすると自律神経が整う』などの便利なフレーズがちまたにあふれていますが、効果はそれほど期待できないというのが僕たち精神科医の考えです。ストレスを完璧に解消する魔法は、残念ながらありません。ストレスをなるべくためないようにして、早い段階で自分のしんどさやつらさに気づく。これが、いちばんのストレスケアです」
とことん疲れているときには避けたい「NGストレス対処法」
ストレス解消法については、さまざまな方法がSNSや口コミなどで紹介されていますが、なかには逆効果なものもあると藤野先生。よく耳にはするけれど、とことん疲れているときには避けておきたい誤ったストレス解消法について教えていただきました。
【NG.1】気晴らしをする
藤野先生 「疲れているときは、気晴らしよりもまずは『休養』というのが僕たち精神科医の基本的な考えです。自分のストレス対処としてはもちろん、周囲にしんどそうにしている人がいるときにも気をつけたいことですね。身近な人がいつもと違う様子であるとき、善意からピクニックなどの気晴らしに誘いたくなるかもしれませんが、それがストレス緩和になるとはかぎりません。疲れているときは、休みをとってゴロゴロしたり、自然の中でリラックスしたりしてケアしましょう」
【NG.2】長時間の昼寝をする
藤野先生 「長時間の昼寝で疲れをリカバリーしようとするのはおすすめできません。基本的なことではありますが、昼は動いて、夜はしっかり寝て、なるべく決まった時間に食事をすることは大事です。昼寝をするときは、“15時までに30分間程度まで”に留めておきましょう。生活リズムを整えるのが、メンタルヘルスの第一歩です」
【NG.3】眠くないのにベッドで横になる
藤野先生 「早く寝なきゃと無理に早い時間からベッドに入り、眠くならないからとスマホを眺めるのは、ベッドが寝る場所ではなくなってしまうので、おすすめしません。横になったけれども眠れないときは、いったんベッドから出て、眠くなってからベッドに戻るようにしましょう。睡眠リズムを整えるには、決まった時間に起きることから始めましょう」
ストレスに対処するときは、極端な方法には頼らずに、生活習慣をととのえて休養に徹することが大切なのですね。次回は藤野先生に、「上手に人に頼るコツ」について教えていただきます!