必要なのは「自然の中に身を置く」ということ
市井紗耶香さん(以下、市井):前編では及川さんがホッケーをはじめたきっかけや、アスリートと会社員の両立についてのお話を伺いました。後半はマインドの部分を深堀してお伺いしたいと思います。
今年は7月にワールドカップの開幕もあり大活躍だったと伺っていますが、お疲れはでていませんか?
及川栞さん(以下、及川):はい、今は元気いっぱいです。ただ今年は、年が明けてすぐに代表合宿があり、その後も国内リーグ、ワールドカップとずっと走り続けていたので、日本に戻ってからはさすがに1週間ほどお休みをいただきました。体力面だけではなく、気力も弱っていると感じていたので、良い充電期間になりました。
市井:「オフ」の日はどんな風にして気分転換をされているのですか?
及川:長期のお休みがとれた時は、夏だったら海へ、冬であれば温泉に行きますね。私は自然に身を置くことでいろんなことがリセットできるので、旅先ではあまり考え事をしないようにして過ごします。半日~1日の短期であれば、友だちと話したり、一人でカフェに行ったりして自分のマインドを整えています。
市井さんは「オフ」の日はどんな風にして過ごされているのですか?
市井:私も及川さんと一緒で、何にもないところで過ごしたくなります。日々生活をしていると、自分に関係のないことや見たくない情報に振り回されてしまうので、そこの場からあえて離れるということをします。
及川:とてもよくわかります。自然の中でのんびり過ごすことがいかに大事かということを今回のお休みで改めて感じました。
市井:私も4人の子どもたちにはなるべく自然に触れてもらいたいので、我が家は長期のお休みになると、東京を離れて自然の多い場所で過ごすことが多いです。
あとはそうですね…1人の時間ができた時は、車の運転が好きなのでドライブしますね。ハンドルを握っている間は、他のことを考えられないじゃないですか。まさに「今ここ」運転に集中しているので、その時にメディテーション(瞑想)しているのかもしれません(笑)
及川:運転しながらメディテーションって新しいですね。自然とマインドフルネスにもつながっていそうです。
運転中はスマホを触れないので、それもかえってリラックスできるのかもしれませんね。
市井:そうなんです、私たちは無駄なエネルギーをスマホに費やしすぎだと思うんです。だから、スマホを触らない環境を自分で作ることは大事だと思います。
意図的に自分自身と向き合う時間を作る
及川:今回の対談で市井さんに伺ってみたかったことがあるのですが、「ストレスが溜まっているな」「心が疲れているな」と自分の心の変化に気付いた時、どのように対処していますか?
市井:そうですね…。ここ最近、若い時に比べて自分が思っている以上に体は正直だなと感じるようになりました。年齢を重ねたことによるホルモンの変化もあるかもしれません。「昔はこんなことなかったのにな…」と、体力の低下を感じたり、それを認めたくない自分もいたり…。こういう時は人に会うと攻撃的な態度を取ってしまうかもしれないので、「なるべく家族以外の人に会わない」「情報を自分から取りにいかない」「余計な食べ物を摂らない」と、自分の身体に必要以上に“モノ”を取り込まないように心がけています。あとはストレッチで体を伸ばして、深呼吸してみる。それでもまだモヤモヤしたものがあえば、自分がどうしたいのか、自分自身に問いかけます。
及川:お子さんもいらっしゃる中で、自分と向き合う時間を作るのは大変だと思います。
市井:家庭を支えるために母親の私が元気でいることはとても大事だと思います。だから、意図的に自分のコンディションを整える時間はなんとかして作ります。
及川:それは一日のうちでどの時間帯にするのですか?
市井:私は朝ですね。夏場だったら4時台に自然と目が覚めるのでその時間に自分と向き合う作業をします。家族は寝ているので、1人で朝日を浴びながら「贅沢な時間だなー」って思いながら五感をフル稼働させて過ごしています。
ここまで及川さんにいろいろとお話させていただきましたが、今日は話すことによって自分の忘れていた感覚や気持ちにいろいろと気づかせてもらえました。
及川:わかります、私もです。誰かと話すことで自分の潜在意識を再確認できるので「人と話す時間」も大事ですよね。
資格はこれからの自分の手助けになる
市井:次に資格のお話をお伺いしたいのですが、及川さんはアスリートフードマイスターやSports Nutrition Advisorの資格を取得されたそうですが、きっかけを教えてください。
及川:私は代表の中で最年長ですが、ここまでケガもなく充実した競技人生を送ることができています。これも私の両親が、私を元気に産んで育ててくれたことが大きく関係していると感じています。あとは自分のケアの仕方と毎日食べているものも大きく関係していると思います。そこで、アスリートとして必要な栄養学を勉強したい、また誰かに教えたいという気持ちから学ぶことにしました。
市井:資格を持つことで今後の自分にプラスにもなりますよね。
及川:はい、これから先にホッケーを指導する機会があるかもしれませんし、いつか結婚して子どもができたらその子をアスリートに育てたいと思っているのでその時に役立ちそうですね。
市井:うわぁ、素敵な夢ですね。今後、取得したい資格はありますか?
及川:ゆくゆくは公認コーチの資格を取れたらいいなと思って勉強中です。市井さんは何か興味のある分野はありますか?
市井:私は子どものころから「香り」が大好きなので、民間のアロマの資格は持っています。これからも興味があることは学び続けていけたらいいなって思っています。
読者の皆さんも子育て中は大変かもしれませんが、興味のある分野があれば学びを止めないでほしいなと思います。
及川栞さんプロフィール
1989年3月12日生まれ。岩手県出身。東京ヴェルディホッケーチーム、タカラベルモント株式会社所属。小学校に入る前から母親の影響でホッケーに触れ、競技を始める。2013年からホッケー女子日本代表DFとして活躍し、東京オリンピックにも出場。この秋から、期間限定でオーストラリア最高峰の大会『Sultana Bran Hockey One League』 に参戦。
市井紗耶香さんプロフィール
1983年12月31日生まれ。千葉県出身。株式会社エスダブル取締役。1998年にモーニング娘。2期メンバーとしてデビュー。 現在は4人の子どもの子育てをしながら、タレント・講演活動をおこなっている。特定非営利活動法人日本ヴィーガン協会の理事。現在saitaで「#本音で話そう」を連載中。
Text by Nana Yasuda
Photos by Azusa Hasegawa
Hair&make-up by Manami Takenaka
costume HOUSE OF LOTUS(市井さん)