教えてくれたのは……草ヶ谷英樹(くさがやひでき)先生
医学博士、日本内科学会 内科認定医/総合内科専門医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医・指導医。呼吸器・アレルギー科専門医として大学病院勤務中に、精巣腫瘍や原因不明の顎関節症などで長期入院を経験。自分が患者という立場になり、医療はもっと患者に寄りそうべきだ、自分らしい医療に取り組みたいという思いが生じ、2021年に祖父・父から続く「草ヶ谷医院」を継承し独立。
実際にあった「40代女性の帯状疱疹・2つの事例」
前回は「帯状疱疹になりやすい人の特徴と注意すべき点」を、帯状疱疹から回復した40代女性の事例とともにご紹介しました。
実際に帯状疱疹になった人はどのような症状で気づき、どのような治療によって完治したのでしょうか。
さらに2つの具体的な事例について、草ヶ谷英樹先生にうかがいました。
【case1】糖尿病を治療中の40代女性・Bさんの場合
【症状に気づいたきっかけ】
草ヶ谷先生 「糖尿病のために受診中のBさんが、シャンプーのときに右後頭部が痛いとのことで受診されました。
見た目は何ともない……とお話されていましたが、長い髪の毛をかき分けてよくみると、右後頭部~右耳の後ろあたりにかけて、小さな水疱がいくつか出現していました。典型的な帯状疱疹を疑う水疱と部位、広がり方だったため診断がつきました」
【完治した期間】
草ヶ谷先生 「この方は痛みに気づいて早期に受診されたため、すぐに治療を行うことができました。水疱がかさぶたになり、その後かさぶたがとれたあと痛みは3~4週間ほど続きましたが徐々によくなって、最終的には気にならない程度まで改善しました」
【case2】喘息を治療中の40代女性・Cさんの場合
【症状に気づいたきっかけ】
草ヶ谷先生 「定期的に喘息のために通院しているCさんが、いつも通り診療がおわり診察からでようとしたところ、「先生、そういえばさっき鏡をみたら耳の前にポツっとできものがあるけど、なんだろうね?」とお話されました。
その時点では非常に小さな発疹が1か所あるのみで、痛みもともないませんでした。私もあまり気にとめず、もし悪化したら教えてくださいと伝えて診療を終えました。
すると翌日発疹は左耳の前から目の周囲に発疹が広がっており、目もやや充血しています。帯状疱疹が目に影響すると角膜障害を起こしたり、重症化することもあります。また耳の周囲に出来た場合、顔面神経麻痺のため、顔の半分が動かなくなるケースもあります」
【治療法】
草ヶ谷先生 「Cさんは目の周囲が特に強い症状だったため、すぐに眼科受診をしていただきました。その後の治療は眼科の先生に担当いただいたため詳細は不明ですが、内服薬や点眼薬を用いて、幸い後遺症などは残さず改善されました」
異変を感じたら「受診を後まわしにしないこと」が大切
Bさんは「後頭部の痛み」、Cさんは「耳の前の小さな発疹」が、帯状疱疹の始まりでした。
早い段階で治療を開始できた2人の女性には、「治療中の持病があり、異変を感じたらすぐに主治医に相談できた」という共通点があります。
多少気になることがあっても忙しさを理由に「受診を後まわし」にすることで、帯状疱疹だった場合には重篤な合併症や後遺症を抱えてしまう可能性があります。
気になる症状や違和感を感じたら、速やかにかかりつけ医を受診するのが、”後遺症を残さない早期完治のカギ”といえそうです。