加齢と共に免疫応答が低下する
体力、視力、聴力が年齢と共に衰えるように、免疫も老化します。免疫力の低下は、ストレス、睡眠不足、肥満などにより起こりますが、大きな原因は加齢です。年齢が高くなるにつれて免疫機能の働きが弱まり、ウイルスや細菌などの感染に対応しにくくなっていきます。新型コロナウイルス感染症の年齢別死亡率からもわかるように、60代から急激に高くなっていきます。
免疫機能は大きく分けると、自然免疫系と獲得免疫系の2つのシステムがあります。わかりやすく例えると自然免疫は警察官、獲得免疫は自衛隊のような存在です。最初に自然免疫系が動き、後から獲得免疫系が動き出します。未知のウイルスに対して警察がまず動き、後から自衛隊が立ち向かうといったイメージです。加齢と共に自然免疫系も獲得免疫系も応答が低下・劣化します。
免疫老化の予防は、早い段階から取り組むことが大切です。若いからといって、油断をしてはいけません。一説によると免疫のピークは20歳といわれ、40歳では半分になるといわれています。
免疫細胞の質を高めて増やす「ミトコンドリア」
ヒトはおよそ37兆個の細胞でできています。その細胞の中でエネルギーを作り出しているのがミトコンドリアです。免疫老化を防ぐためには、ミトコンドリアを活性化させましょう。このミトコンドリアを活性化させることが、免疫老化の予防になることがわかっています。
ミトコンドリアは酸素を取り込んで細胞のエネルギーを作り出しています。ミトコンドリアは、人に必要なエネルギーの90%以上を供給しているとされています。ミトコンドリアを活性化して、免疫細胞のエネルギー循環が良ければ免疫応答が正常に働きます。
逆に、ミトコンドリアの働きが悪く、十分なエネルギーが供給されないと免疫細胞の分化に影響し、数と質が低下します。
ミトコンドリアを活性化させるにはどうしたらいいの?
ミトコンドリアは、残念ながら加齢とともに数が少なくなることがわかっています。ミトコンドリアを活性化させるには、バランスのいい食事を摂り、「コエンザイムQ10」を積極的に摂取することです。コエンザイムQ10は活性酸素の害から守るほか、ミトコンドリアを増やし元気にする働きがあります。
最近の研究で、インフルエンザ患者の血中にはコエンザイムQ10のレベルが有意に低いことが報告されています(※)。
また、十分な睡眠、適度な運動、ストレスや疲労の軽減も大切です。ストレスにさらされるとエネルギーを過剰に生産し活性酸素を過剰生産し、自身の遺伝子を損傷してしまいます。※ChaseMetal,InfluenzaOtherRespirViruses.13(1):64-70,2019
コエンザイムQ10はこんな食べ物に含まれる
近年、腸内環境を整えることが免疫力アップにつながるといわれて実践されている方が多いと思いますが、それと同じくらいミトコンドリアの活性化も行っていきましょう。できれば、腸活と並行すると理想的です。
積極的に摂取していただきたいのは、コエンザイムQ10で、イワシ、豚肉、牛肉、卵、オリーブ油、ブロッコリーに含まれます(※)。食事から摂取できるのはわずか5mg程度といわれていますので、機能性表示食品なども活用して、積極的に摂取していきましょう。
※KameiMetal,IJVitNutrRes56:57-63;KuboHetal,JFoodCompAnal21:199-210,2008
教えてくださったのは……大阪大学大学院 医学研究科臨床遺伝子治療学寄附講座教授 森下竜一先生
大阪大学大学院医学研究科臨床遺伝子治療学寄附講座教授。大阪大学医学部卒業後、米国スタンフォード大学循環器科研究員、大阪大学助教授大学院医学系研究科遺伝子治療学を経て現職。アンジェスMG社創業、バイオベンチャー支援のためのバイオサイトキャピタル社創業。現在、新型コロナウイルスワクチン開発を目指す。
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