教えてくれたのは……藤野智哉先生
精神科医。産業医。公認心理師。
幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見をメディアやSNSで発信中。
『「そのままの自分」を生きてみる』
著者:藤野智哉
価格:1,760円(税込)
発行所:ディスカヴァー・トゥエンティワン
その不安、“心のクセ”が原因かも?
友人とランチをしながら話しているとき、相手がふと手元のスマホに視線を落としたとします。そんなとき、「私の話、つまらないのかな?」「そろそろ帰りたいのかな?」と考えることはありますか?
また、送ったメッセージが既読スルーされたり、友人に食事の誘いを断られたりしたとき、「もしかして、私のことが嫌いなのかな」と気になったり、落ち込んだりしたことがある方もいるかもしれません。こうした感情にたびたびおそわれる場合は、「心のクセ」が関係していることもあると精神科医の藤野智哉先生は話します。
藤野先生 「いつも決まってこうした状況で心が揺さぶられてしまうようなら、それぞれの出来事に共通した“心のクセ”が関係しているのかもしれません。たとえば、先ほどの3つの例に共通するのは、『私なんか誰からも愛されないんじゃないか』『誰からも嫌われたくない』という考え方。『自分がそう受けとっているだけ』ということもあるのです」
自分の“心のクセ”にどう気づく?
では、自分の心のクセを知るには、どうしたらいいのでしょうか? 藤野先生は、次のようにアドバイスします。
藤野先生 「自分の行動や考えを俯瞰して分析しようと思う人は、そう多くありません。自分の心が揺さぶられるのは、世の中で起きている何かのせいだと考える人の方が、きっと多いのだと思います」
藤野先生 「心が揺さぶられるような出来事があったとき、『もしかして無意識のルールが働いていないかな』『あの出来事に変な意味づけをしちゃっているな』とほんの少しでも意識を向けてみると、自分ってこういう考え方、とらえ方をしがちということが、ぼんやり見えてくるかもしれません。トラブルや嫌な出来事があったとき振り返るようにしていると、次なるトラブルの防止に役立つことがあります」
ものごとのとらえ方を変えると、見える世界が変わる
自分の心のクセに気づくと、どのようないいことがあるのでしょうか。藤野先生は、「『ものごとはとらえ方次第』という視点をもつだけで意味がある」とおっしゃいます。
藤野先生 「ものごとのとらえ方は自分次第だと考えると、見える世界が変わってきます。世の中の人全員に愛されなきゃと思っていた人が、そうじゃなくていいということを知る。それだけで、これから会うすべての人との関わり方がちょっとずつ変わってくるはずです」
マイナスな感情が芽生えたときは、「もしかして、勝手にマイナスに自動変換しているかも」と振り返ってみると、新しい世界が広がっていくかもしれませんね。次回は藤野先生に、「子どもが学校に行きたくないといったとき親ができること」について教えていただきます!