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ドーナツ愛好家なら知ってる!?リングだけじゃないドーナツのカタチ【あなたの知らないドーナツの世界】

カルチャー

2025.10.09

“ドーナツとは、油の中で夢がふくらむ、幸福な食べ物です。” こんなキャッチコピーを掲げて、「ドーナツ探求家」として活動している溝呂木一美です。 年間500種類以上のドーナツを食べ、食文化としても調査・研究しています。 そんな私が、ドーナツの雑学や知られざる魅力などを少しずつご紹介していきますよ。

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どんなカタチでも、揚げればドーナツ

『穴があいているからドーナツ、というわけではない。ドーナツのアイデンティティは油で揚げること』と、声高に叫んだのが、前回の『ドーナツの定義』についてのコラムでした。

小麦粉などで作った生地を油で揚げたものが、「ドーナツ」とされます。
生地の種類が多いだけでなく、カタチもバリエーションに富むことが、ドーナツの世界の奥深さです。
リング状だけではない、多様なカタチのドーナツをご紹介します。

【扁球】 

扁球ドーナツの見本としてのあんドーナツ昔ながらのあんドーナツは、“街のパン屋さん”では定番メニューです。

扁球(へんきゅう)とは、まん丸い球体を上下に潰したようなカタチです。明治の「マーブルチョコレート」のようなカタチ、といえばわかりやすいでしょうか。
ベーカリーで販売されていたり、大手パンメーカーが製造している「あんドーナツ」が、日本においての代表選手といえます。
ミスタードーナツのクリーム入りドーナツである「エンゼルクリーム」「カスタードクリーム」も、扁球ですね。

丸く整えた生地を揚げ、クリームや餡などを詰めることが多いドーナツです。
もちろん、中に何も詰めていない扁球のドーナツも存在します。

一般的ではありませんが、メーカーなどでは「ビスマルク」という名前で分類することもあります。

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【球体】

球体のドーナツのサンプルコロコロのまんまるドーナツは、小さいサイズであることが多いです。

まんまるのボールのようなカタチです。
ピンポン玉くらいの大きさの「あんドーナツ」や、リングドーナツを作るときにくり抜いた「穴」の部分を揚げたものとしてよく見かけます。

ミスタードーナツで1987年から2013年まで販売されていた「D-ポップ」を覚えていますでしょうか。
6種のコロコロとした球体のドーナツがセットになっていました。
現在は「ドーナツポップ」という名前で、自由に詰め合わせることができるメニューとして人気です。

インドの伝統的なデザートで“世界一甘い”といわれる「グラブジャムン」は、球体のドーナツを、とってもあま〜いシロップに漬けたものです。
確かに、とっても甘いのですが、辛いカレーのお供として最高です。

【ツイスト・ねじり】

ツイストドーナツの見本砂糖をまぶしたものがポピュラーですが、きなこをかけたものも見かけます。

「ツイストドーナツ」「ねじりドーナツ」などという名前で販売されています。
名前のとおり、生地をねじって揚げています。
お店によって、ねじり方に個性が出るところが面白く、その違いを見るのは、私の“ドーナツ探求活動”においての楽しみです。

ドーナツ専門店よりも、ベーカリーでお馴染みのドーナツです。
日本に古くからある“街のベーカリー”では、「ツイストドーナツ」と「あんドーナツ」を一緒に販売しているお店が多く見受けられます。

韓国で古くから食べられている「クァベギ」というドーナツも、このカタチです。
「クァベギ」は日本でも食べられる機会が増えました。
専門店が存在し、大手コンビニから発売されたこともあります。

【多角形】

多角形のドーナツのサンプル日本に戻ってきてほしい!ドーナッツプラントの四角いドーナツです。

多角形のドーナツとして、最もよく見かけるのは四角形です。
四角形のドーナツは、2004年に日本上陸し、2021年に残念ながら日本から撤退してしまったドーナッツプラントでお馴染みのカタチでした。
2014年から山崎製パンで製造されていたクロワッサンドーナツ「ドーワッツ」も四角形でしたね。
アメリカでは「ロングジョン」という名前の長方形のドーナツが愛されています。

リングドーナツを型抜きで作る場合、必ず切れ端が出てしまいますが、四角形に作れば切れ端が出ないというメリットがあります。
もちろん、三角形、六角形のドーナツも存在します。
生地を六角形に型抜きする場合、ハニカム構造を用いると、四角形と同様に切れ端が出ません。

【モチーフ】

モチーフドーナツのサンプルアーノルドのハート型ドーナツは、プレゼントにしてもいいですね。

ハート・星・動物など、さまざまなモチーフのカタチをしたドーナツは楽しいものです。生地は揚げると膨らむので、複雑なカタチを表現するのは難しく、単純なカタチであることがほとんどです。

ここ数年、ミスタードーナツの冬の定番となっている「ピカチュウドーナツ」もそのひとつですね。ピカチュウの耳の部分が、かわいらしく表現されています。
クリスピー・クリーム・ドーナツでは、毎年冬に雪だるま型のドーナツが登場しています。
私がドーナツ探求活動を始めるきっかけとなった、アーノルドというドーナツ専門店では、レギュラーメニューにきれいなハート型のドーナツがあります。

【棒】

棒ドーナツのサンプル一本だけなら「チュロ」、複数あると「チュロス」。

「チュロ(チュロス)」のように、棒状の細長いドーナツがあります。
水分量が多くやわらかい生地を、専用の器具などを用いて絞り出して揚げると、細長いドーナツを作ることができます。
絞り出して作る特性を活かし、ハート型などの図形や、文字を表現したりと、さまざまなバージョンが販売されています。

次々に生まれる、新しいカタチ

ここで紹介したものは、“よくあるドーナツのカタチ”であって、基礎的なものです。
まだまだたくさんありますが、これだけでも、いかにドーナツが多様であるかがわかると思います。
これまで、生地の特性などを活かして、さまざまなカタチのドーナツが誕生してきました。
作り手のクリエイティブな心があれば、今後も想像もできないようなカタチのドーナツが登場するかもしれませんね。

ドーナツのカタチが多様であることを知ったあと、誰かが「ドーナツ型」という表現をしたときに、「いろいろなカタチがありますが、どれのことですか?」などと絡んではいけませんよ。
パブリックイメージはリング状なのですから、くれぐれも。

ドーナツ型について質問する「面倒な人だな」と思われますよ。

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著者

溝呂木一美(みぞろぎひとみ)

溝呂木一美(みぞろぎひとみ)

“ドーナツとは、油の中で夢がふくらむ、幸福な食べ物です。“というキャッチコピーを掲げ、国内外で年間500種類以上のドーナツを食べ、食文化としても調査、研究している。自身のブログや各種SNS、テレビやラジオ、雑誌、Webメディア等でも情報を発信。コンビニ、カフェなどの店舗で販売するドーナツの監修も行う。イラストレーターとしては「かわいい・おいしい・楽しい」をテーマに描いている。主なテレビ番組出演歴は『マツコの知らない世界』『ラヴィット!』(TBS系)、『バゲット』(日本テレビ系)など。著書に『私のてきとうなお菓子作り』(ワニブックス)、『ドーナツのしあわせ 年間500種類食べる“ドーナツ探求家“の偏愛ノート』(イースト・プレス)、『ドーナツの旅』(グラフィック社)あり。

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