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「金継ぎ」は、慌ただしい日々に疲れた心のチューニング。壊れた器に思いを込めて、新品以上の私の作品に。

カルチャー

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2023.03.14

趣味を持つことで、日々を輝かせている女性をご紹介する連載企画『趣味に“ハマる”女性たち』。あなたのsomething newのきっかけになればウレシイです! さて、今回ご紹介するのは「金継ぎ」。写真の美しいお皿は、実は数か所に割れた部分があり、漆や金粉などを用いた日本古来の伝統的な技術で修理したものです。 縄文時代から育まれてきた、この器を修復するテクニックは、大切な器を「元の姿に戻す」だけではなく、作業を手掛ける人のセンスや遊び心で、それ以上の作品に生まれ変わらせることもできるといいます。

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連載:趣味に“ハマる”女性たちを直撃インタビュー!

お話を伺ったのは…ともこさん

渋谷さん「金継ぎ以外では、ただ花を干すだけなんですけど(笑)
ドライフラワー作りとか、あとはサボテンみたいに枯れにくい植物を育てるのが好きですね。」
花をドライにして“もう一度愛でる”楽しみは、金継ぎで器を蘇らせる思いと少し似ている?
手にしているのは、大好きな「流しの写真家」渡辺和己さんの展覧会の当時のフライヤー。

「寅さん」ファンが高じて映像制作に挑戦したり、ファッション系の学校でイラストを学ぶなど好奇心旺盛な37歳。企画・デザイン、ショップディレクション等を行う会社を経て、現在はIT企業勤務。骨董市巡りで古い雑貨を探すのが大好き。最近の癒し&推しは、幼なじみのところに生まれた赤ちゃん。すくすく成長する様子を愛でることにハマっているとのこと。金継ぎ歴は4年ほど。

楽しい出典:www.instagram.com取材は、ご家族とお住まいの自宅にて。素敵な作品をたくさん拝見できました。

そもそも金継ぎって?

「金継ぎ(きんつぎ)」と聞いてすぐ理解できる人はどれほどいるでしょうか?なんとなく「割れたお皿をくっつけるのよね」くらいはわかるものの、陶芸に比べると、習い事としてはマイナーな印象がありますよね。

大皿出典:www.instagram.com美しいお皿に、まるで絵柄のように馴染む金継ぎの跡がわかりますか?

一見、どこが割れていたのか分からないほどですが、左上の赤と金色の部分に注目。では、種明かしは後ほど…

会社の備品を直すために金継ぎ教室へ

ともこさん「実は以前勤めていた会社で、社長がとても大切にしていた来客用のお茶碗があったんです。ある日、お客さまにお茶を出そうとしたら、少し欠けていて慌てました。作家もので、しかも1点ものの貴重なものだったので、どうにかできないか…と調べていたときに、辿り着いたのが金継ぎだったんです。」

バラバラ出典:www.instagram.com金継ぎの技で繋ぎ合わせればこの通り!

※写真は、ともこさんの金継ぎ作品ですが、当時の会社のものではありません。

気軽に楽しめるモダン金継ぎ

最初のお茶碗出典:www.photo-ac.com同僚たちと通い始めた金継ぎ教室。
例の茶碗の欠けを修理した同僚は1回で辞めましたが
ともこさんは…?

ともこさんは、最近人気のモダン金継ぎ(英名:Modern Kintsugi)という技法で金継ぎの技術を学び始めました。その他にも長い歴史を誇る、伝統金継ぎ/本漆金継ぎ(Traditional Kintsugi、あるいはKintsugi)という技法もあり、こちらはパテや接着剤などを使用せず、天然素材だけを使う本格派。ただし、完成までに時間と費用が簡易金継ぎよりも必要になり、漆(うるし)を用いるので作業中に肌に付着するとかぶれの原因になることも。

金継ぎカップともこさんの作品は全て「モダン金継ぎ」という技法のもので、完成までは約2週間ほど。
伝統金継ぎは自然由来の材料を用いて1ヵ月以上、長い場合は半年もかけて完成させるのだそう。

会社のお茶碗を復元するために同僚と一緒に金継ぎを習い始めると、想像以上の満足感と達成感、そして「ドはまり」の予感がしたそう…。その後同僚たちがそれぞれ「卒業」していったあとも教室に通い続けています。

愛着ある器に新たな命を

大正時代骨董品としては、とても珍しいチェック柄?のプリント模様の入ったお茶碗がデビュー作。

ともこさん「バラバラに割れてしまっていたのに、どうしても捨てられず紙袋にいれたまま取っておいたのがこのお茶碗です。これがまた使える!と思うと嬉しくて、全ての作業に没頭しました。破片の断面を丁寧に削って整える作業では無心になれるし、それらを組んで元の形にしたときのときめき、漆で割れた箇所に慎重に線を引くときの緊張感…これらは映像やイラストでは味わえなかった感覚でした。それに飾るだけじゃなくて日常の道具としてまた使える!というところにも器だけじゃなくて、自分自身も救われました。」

ゼロからイチを生み出すのは苦手

ともこさん

小さい時から絵が好きで、美術系の進路を考えたこともあるほど。しかし「意図しない方向で作品が評価される、ということになじめなかった。」と振り返ります。そして「映像制作も絵を描くのも好きだけど、そこに自分自身を投影するとか、自己表現をすることは望んでいなくて…きっとゼロからイチを生み出すタイプではなく、私は材料やお題がある中で自分なりのセンスや個性を出す方が向いているみたいです。」と自己分析します。

修理を超えた金継ぎの世界

皿裏出典:www.instagram.com先ほどの絵皿の裏側がこちら。

最初にお見せしたお皿の裏がこちら。失われた破片部分をパテで補い、表には柄を描き、裏には彫刻刀で模様を掘っています。ここまでくると、もう修理や復元ではなく立派なアート。ともこさんの感性が充分に発揮されています。

蚤の市和モノだけでなく、こんなに美しい洋皿にも金継ぎの技術が!

こちらはお友だちと旅行中にフランスで購入した思い出の品。数枚あるうちこの1枚が数か所欠けてしまい金継ぎの技でしっかり修復。

蚤の市

このように欠けを直して、無事にお気に入りのお皿として活躍中。

こんもり白い器に生える金色が美しい。

こちらも欠けた部分にパテをこんもりと盛って、アクセントに。とても使いやすそうなサイズの浅鉢です。

抹茶アート感満載な抹茶茶碗には、ともこさんの美意識とセンスが垣間見えます。

「えっ?これも金継ぎ?」と驚いたのが、この抹茶茶碗。失った破片部分をパテで埋め、ビーチグラスや古いお皿の欠片、ビーズなどで飾り、唯一無二のアート作品となって生まれ変わりました。普通なら割れて、しかも欠片が無くなってしまえば、間違いなく捨てられる運命ですが、金継ぎの技術とともこさんのセンスによって新たな命を与えられました。

習い事からライフワークへ

ナムル料理上手なともこさんのお姉さんが作ったナムルが盛られた抹茶茶碗。
気取らないメニューがほっこり馴染むのも金継ぎが施された器の良さかも。

器が欠けたことがバレないように修復するために習い始めた金継ぎが、今ではともこさんのライフワークとなっています。「先生がとても褒めてくださるのでやる気も出るし、習いに来られている方々が素敵な方ばかりなので、教室の雰囲気がとにかく好きで…」と、金継ぎ教室がともこさんにとって大切なサードプレイスになっていることが伺えます。技術を学び作業に没頭できることはもちろん、それ以上に「大切な居場所」を得られるのは、もっと幸せなこと。
そんな心休まる場所を見つけるために、ちょっと気になる習い事をこの春から思い切って始めてみるのもいいかもしれませんね。

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著者

みやむらけいこ

みやむらけいこ

ライター歴20年。「あなたに逢いに行きます」取材ではなく出会い、インタビューではなく会話。わかりやすい言葉で丁寧に「ひと」を伝えます。好きなものは、サーフィンと歌舞伎、主食はチョコレート。#人生はチョコレート

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