連載記事

保護犬ももちゃんが愛しい日々を連れて来た。愛犬を描くチャリティーアーティスト杉山朋代さんのmy story

カルチャー

 ももちゃんと朋代さん

2023.07.06

趣味を持つことで、日々を輝かせている女性をご紹介する連載企画『趣味に“ハマる”女性たち』。あなたのsomething newのきっかけになればウレシイです! さて、今回ご紹介するのはアート。鉛筆でフォロワーの愛犬を描き、保護犬活動をチャリティーで支える杉山朋代さん。実は、オーケストラでチェンバロを弾く演奏家でしたが、突然の病で活動休止を余儀なくされました。そんな時、保護犬ももちゃんと出会って、あたたかくゆるやかに朋代さんの日々が輝き始めました。

広告

連載:趣味に“ハマる”女性たちを直撃インタビュー!

お話を伺ったのは…杉山朋代さん

ともよさん「コーヒー飲みますか?」と、美しい所作、美しい笑顔でドリップ中。

家族構成は夫と元保護犬のももちゃん。小さい頃は学校よりもお絵かきが好きな女の子。5歳からピアノを習い始め、大学は音楽学部ピアノ専攻を卒業し、その後チェンバロ奏者に転向。オーケストラなどで貴重なチェンバロ奏者として活動を続け、2006年から5回ものリサイタルを開催。メディカルアロマセラピストの資格も持つ大阪出身の52歳。

ももちゃん子どもの頃大好きだった絵を描いてみよう!と思い立ったのだそう…。

現在は演奏活動を休止し、子どもの頃の「好き」に立ち返り、Instagramのフォロワーさんたちのリクエストで、愛犬の絵を描く活動をチャリティーで行っている。主な寄付先は、ももちゃんの故郷である香川県の保護犬譲渡ボランティア。日課は2時間半!にも及ぶ、ももちゃんとのお散歩。

チェンバロ奏者として

サンプルイメージピアノより小さく、装飾が施された美しい音色のチェンバロ。

10年のキャリアを誇るチェンバロ奏者として、朋代さんは活動を続けていました。

朋代さん「チェンバロはピアノほど奏者が多くなく、さまざまな演奏会に参加していました。1番力を入れていたのはソロリサイタルでしたが、色んな悩みやプレッシャーに押しつぶされそうで怖くて怖くて…2度とあの世界には戻りたくない!と(笑)。でもその分、達成感ややり甲斐はとても感じていました。」

リサイタルプレッシャーを感じながらも大きな達成感を得ていたリサイタル。

局所性ジストニア(イップス)で活動休止

朋代さん「痛くもかゆくもなく、日常生活には支障はないんです。でも緊張していたり、『ここが難しい!』とかチラッとでも思うと、打鍵する直前に指がクルッと丸まってしまって、弾けなくなってしまうんです…。

チェンバロ運動障害性疾患を患い、10年の演奏家としてのキャリアをストップすることに…

長い期間この症状に悩まされたものの、当時の朋代さんは練習不足が原因と思い込み、1日8時間ほど練習を重ねて乗り越えようと考えました。しかし、むしろ悪化させてしまい、ついには右手の3本の指に同じ症状が出てしまいます。

チェンバロ演奏局所性ジストニア…いわゆる「イップス」で、演奏家としてのキャリアを一旦休止することに。

朋代さん「ある日、兄に『ゴルフでいうイップスみたいな症状じゃない?』と言われて調べてみると『私の症状だわ』と。練習のしすぎで脳に負担をかけていたようで、結局は手の問題ではなくて、神経を休ませないと改善しないことがわかりました。」

激しい「うつ状態」に陥る

メンタル出典:www.photo-ac.com演奏家としての活動を休止したあと、思いがけず心のバランスを崩してしまう…。

朋代さん「演奏活動はやめましたが、『今まで練習に費やしていた時間を自由に使える』とリセットして、バラ色の再スタートを信じていたんですが、テレビを見ても面白くないし、気が付くと涙が流れていたり、時には「死にたい」なんて思うこともあって…心に大きなダメージを負ってしまいました。

引越しで復調の兆し

復調出典:www.photo-ac.com西宮に引っ越したことをきっかけに復調の兆しが見え始めてきた…!

朋代さん「毎日が訳も無く悲しい…という状態が少し和らいできた頃、15年間の夫の両親との二世帯生活を終えて西宮に移り住むことにしました。夫の両親には申し訳なく今も罪悪感を抱いていますが…。」

絵画教室へ…

仏像カルチャーセンターで描いた仏像は超力作!
先生から出される課題を次々にこなして腕を磨きました。

心にエネルギーを取り戻そうとしていた朋代さんは、引越し前から習い始めた絵画に熱中し始めます。先生から与えられる課題にトライすることに楽しみを見出しました。

朋代さん「この仏像も先生が持ってきた写真がモデルなのでどなたなのか分からないんですけど(笑)。数か月かかって描きました。画材は鉛筆です。難しい課題でした。」

画材愛用の鉛筆をずらり…と並べて笑顔でそれらの使い方について話す朋代さん。
絵の話題になると、途端に笑顔の華やかさがマシマシに!

ももちゃんがやってきた!

ももちゃん保護犬だったももちゃんは、香川県の保護施設から6年前にやってきた雑種の女の子。

朋代さん「絵を描くうちに少しずつ元気を取り戻せるようになると、実家で猫を飼っていたこともあり、動物を迎えたい気持ちが湧いてきました。当時は保護犬という言葉もよく知らないままでしたが、保健所に持ち込まれ、処分寸前だった子たちの里親を募集しているサイトを見つけ、そこで縁組していただきました。」

ももちゃんと見つめ合うふたり。幸せな時間が感じられて、こちらまで笑顔になってしまいますね。

朋代さん「ウチは子どもがいないので、ももがわが子で生活の中心です。『お子さんは?』『どうして?』と訊かれるようなことも30代の頃にはありました。しんどくて…答えに困りましたね。私は自分の子どもの頃の経験から『子どもを持たない』と決めていたので、後悔はしていないつもりでしたが、自問自答したり、夫や家族への申し訳なさを改めて感じたり…後悔してしまうこともあります。」

大切なワンちゃんを心を込めて…

柚子ちゃんチャリティー絵画1号 柴犬の柚子ちゃんの絵。

ももちゃんとの縁組と、絵を描くことで元気を取り戻した朋代さんは、実家の今は亡き愛猫を描いた絵や、音楽をやめたこと、両親への思いなどをInstagramに投稿しました。その時、この柴犬の柚子ちゃんの飼い主さんが心に響くコメントをくださり、「もっと上手になって、絵で保護犬たちを応援するチャリティー活動をしたい。」と思うように…。

チャリティーアーティストとして

ゾーイ時には亡くなったワンちゃんの作品を求められることもあり、
そんなときは「心して描きます」とのこと。

シベリアンハスキーのゾーイちゃんは、この世を去ってしまった後に飼い主さんより依頼をいただいたそうです。この作品がチャリティー2作目となり、朋代さんの思い描いたチャリティーアーティストとしての活動が進み始めました。

朋代さん「亡くなった子を描くときはドキドキ緊張しますが、そっくりに仕上げてお返ししたい…という気持ちを込めています。飼い主さんの思いをしっかりと受け止めて差し上げたいし、命をつないでいるような感覚です。『可愛がってもらえますように』と願いながら額装して梱包しています。」

さらなるブラッシュアップ!のために…

作品写真をよくよく見ながら特徴を掴んで描き上げます。
取材時はちょうど第3号の制作中でした。

アーティストとして活動しながらも、朋代さんは現在もレッスンで腕を磨いています。

朋代さん「コロナ禍からリモートでプロのアーティストのレッスンを受けています。『犬の絵を描きたい』とお伝えして、自分のやりたいことをベースにテクニックを磨くというスタイルで、とても充実しています。特に、白い毛を黒い鉛筆で表現するのはとても難しくて…そんな技法や毛並みの出し方、お顔の似せ方なんかを相談していますね。

飼い主さんのもとへ…

ダンクくん全ての作品は額装されて飼い主さんのもとへ送られます。

こちらはチャリティー作品第3号のダンクくん。この活動をしていて1番喜びを感じる瞬間を朋代さんにお聞きしてみました。

朋代さんストレートに喜んでくださっている時間を共有するときです!!ご自身のInstagramに投稿してくださったり、メッセージをくださったり。亡くなったワンちゃんの飼い主さんが『帰ってきたみたいです』と仰ってくださったときは、私も涙が出ます。思いが通じた瞬間というか…何とも言えない喜びです。

ずっといっしょにね!

ずっと

ももちゃんとの生活とチャリティーアーティストとしての活動で、自分を取り戻した朋代さん。絵を始めたころの夢が叶い、保護犬のための活動に資金を提供できるようになりました。

モモちゃんコーナー

思いもよらない病やハプニング、時には悲しくて辛くて立ち直れない…と真っ暗闇の中で動けなくなることは誰しもあるものです。そんな時、どうしても今の自分にダメ出しをしてしまいそうになりますが…心や体が弱っている時には「頑張ることより好きなこと」が効くようです。

「お絵かきが好きだった私」を思い出せた朋代さんは、ももちゃんと出会い、チャリティー活動をスタートさせました。
心のこもった美しい絵で多くの飼い主さんを笑顔に…そして保護犬が1匹でも多く里親さんに出逢えるように…と祈るばかりです。
 

・杉山朋代さんInstagram:@yumemiru.momo
吉田朋代さんWikipedia
・朋代さんがレッスンを受けている絵画教室(リモート) 
 あなたの中に眠る才能を発掘する『ART SENSE Lab』 
 問い合わせ先(代表:山口敦士)
 Mail/start.a.yamaguchi@gmail.com
 Tell/090-6672-2011
・保護犬譲渡ボランティア(にくきゅーハイタッチ)Instagram:@nikukyuuhaitatti

広告

著者

みやむらけいこ

みやむらけいこ

ライター歴20年。「あなたに逢いに行きます」取材ではなく出会い、インタビューではなく会話。わかりやすい言葉で丁寧に「ひと」を伝えます。好きなものは、サーフィンと歌舞伎、主食はチョコレート。#人生はチョコレート

気になるタグをチェック!

saitaとは

連載記事

趣味に“ハマる”女性たちを直撃インタビュー!#ワクワクがとまらない

広告