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東京から長野へ|家族のあり方、価値観、暮らし…変わったことと変わらないことは#私たちの移住ストーリー

家族・人間関係

 移住 長野

2021.02.07

今いる場所で、叶えられない夢や希望があるなら、思い切って「移住」という選択肢もある。【私たちの移住ストーリー】では、さまざまな想いから、ひと足先に「移住」を実現した先輩たちをインタビュー。第3回目は、子どもの教育のために東京から長野に移住し、さらに週末婚スタイルを取り入れた、櫻井家の<移住したあと>のお話です。

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連載:好きな場所で生きていく。私たちの移住ストーリー

私たちはアクセス重視の移住

移住というと、古民家で畑で野菜を育て、自然豊かで……と言うイメージが先行してしまいますが、櫻井さん家族はそうではありませんでした。

「子供の学校を考えての移住なので、アクセス重視です。ここは、東京駅から新幹線で1時間30分。古民家は憧れますが、新しい住まいも、東京と同じスペック(間取りなど)です。長野なので寒さ対策が万全で、駅近。暮らし方自体は、東京と変わりません」(麻美さん)

そう、櫻井さんの家族は理想とする教育環境を手に入れるために、移住をしたのです。「東京都変わらない」と語る妻の麻美さんですが、さすがに長野の冬の寒さには驚いたんだとか

「私の人生史上一番寒いです(笑)。朝起きたら、-10°! ここは雪は少ないんですが、全てが凍ります。去年初めての冬では、水道や車のフロントガラスを凍らせないテクニックなど、新しい経験をすることが多かったですね」(麻美さん)

離れて暮らして感じたこと

今回のインタビューで一番お伺いしたかった「週末婚」について。実際、夫と東京と長野で離れて暮らしてみて、いかがでしたか?

「夫は、平日は仕事、週末は休みと言うように、生活にメリハリがついたと、言っていました。お互い、週末は家に仕事を持ち込まないようになったので、一緒に暮らしていた時より、家族全員で過ごす時間は増えたと思います」(麻美さん)

ただ、今年はコロナの影響で東京と長野の行き来が難しくなったり、台風の影響で新幹線が水没したことが原因で、櫻井家は、しばらく離れて暮らす時期もあったそう。距離が離れている分、突発的なトラブルが起こると離れてくらすデメリットが出てきます。そこで「離れていると、浮気の心配はないですか?」と下世話な質問をしたところ……。

「心配ないですね。お互い価値観が同じなので」(麻美さん)

離れて暮らすことに、最初はもちろん不安があったそうですが、そのおかげでパートナーの大事さに改めて気づき、理解、尊重、信頼度が増したそうです。

子育てサポートがなくなった、今

櫻井夫妻はお互い東京出身。なので、困った時には双方の親に育児サポートを頼める環境が整っていました。でも長野に移住してからは、どうされているのでしょうか?

「親のサポートがなくなるのは不安でしたが、とりあえず長野でやってみようと。実際こちらにきてからは、子供の学校関係は移住者がほとんどだったんです。私たち家族と同じような方も多いので、お互い助け合うようになりました」(麻美さん)

櫻井さんのお子さんが通っている学校は、日本ではまだ珍しい教育方法を採用した学校ということもあり、ここに通わせるために移住してくる方も多いそう。必然的に、櫻井夫妻との価値観が近くなるため、適切な距離を保ちながら、協力し合えるコミュニティができあがっているようです。

「みなさん本当に面白い方ばかりなんです。職種も多種多様で、いい意味で変わった人が多い(笑)」(麻美さん)

楽しいのは親だけでなく、息子さんも毎日笑顔で学校に通っているそう。櫻井夫妻が感じていた学校への違和感も、今はもうなくなりました。

長野 移住

どこに住んでも、日常に変わりはない

移住に対する考え方も、移住後のライフスタイルを聞いても、自分らしくのびのびと生きている麻美さん。実際、学生時代から世界一周旅行をしたり、田舎に住み込んで農業を体験してきたそうです。

「世界一周をしていた時に、当たり前ってないんだなって気がついたんです。貧しい国の生活も、そこでは日常だし、日本での生活も日常。世の中はこうしなくては、ということが多いですが、それは自分本位ではなく周りが決めたこと。だから、自分はどういう日常を過ごしたいのか、どんな暮らしがしたいのかを常に考えるようになりました」(麻美さん)

ヨガインストラクターという仕事柄、常に自己を見つめている麻美さん。だからこそ、自分が出した「移住」という答えに対し、迷いなく行動ができたのだと思います。

今の生活に不満はありますか?

「基本はないですね。今年は、コロナで想定外のことは起きましたが。毎日とても楽しくて、自分にフィットした生活が送れていると思います。生活スタイルは東京と変わりませんが、自然が近くにある環境になったので、キャンプに行ったり。ペーパードライバーでしたが、車の運転もしていますし、色々楽しんでいます」(麻美さん)

ただ、美術館や博物館は圧倒的に東京の方が充実しているので、その時は東京におでかけしたりして、長野と東京のいいとこどりをしている、とのこと。

移住を考えている人へアドバイス

移住を考える人は、年々増加中。さまざまなスタイルの移住ライフがある中で、実際移住を叶えた櫻井さんから、先輩移住者としてのアドバイスを伺いました。

「考えすぎると動けなくなってしまうので。これが一生の選択でもないし、合わなかったら帰って来れるし、と思って私は移住しました。そもそも移住は、失敗する前提でいた方がいいと思います。失敗はしてもいい、そのために戻れる基盤を作っておくことが大事。他人から見たら失敗でも、自分が納得していたらそれでいいじゃないですか」(麻美さん)

麻美さん自身、戻れる基盤のために、都内の仕事は一部残して、長野に移住。そのため、現在も麻美さんは月に何度か都内に通う生活を送っています。

「生活が安定しないと、移住しても何もできません。仕事も変えるなら、その収入でできるリアルな生活をイメージしておいた方がいい。あと、移住の目的が明確じゃないと、苦しくなってしまうと思います。目的があれば、事前に下調べもできますから」(麻美さん)

さらに、麻美さんは、地方に移住する方に最も大事なことを教えてくれました。

「現地への溶け込みが重要です。今回の移住で、私はあまり濃密な人間関係は求めていなかったので、駅前・開発中の今の場所がちょうど良かった。ですが、古民家暮らしなどを求めている人は、現地のコミュニティに、どう入るか心構えが必要だと思います。あと単身者と家族との違いもあるので、そこら辺もちゃんと調べておいた方がいい」(麻美さん)

麻美さんは、長野で生活を始めてから、元々抱いていた「住む場所、働く場所にしばられたくない」という思いが、より強くなったそう。

「自分らしく生きているために、どこにいても軸となる自分の基盤をもっと強く構築していきたいと思っています」(麻美さん)

お子様が小学校を卒業する頃、櫻井家はまた別の場所で生活しているのかもしれません。もしかしたら、日本を飛び出しているのかも。櫻井家の移住は、定住を目的としない、新しいスタイルの生き方でした。

取材協力:櫻井麻美さん

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