東京から和歌山へ、奥村家の移住ストーリー(前編)
【プロフィール】
家族構成 :夫(31)、妻(29)、長男(1)の3人家族
移住元~先:東京から和歌山
2人の出会いは、インドネシア・ジャカルタ
今回、取材を受けていただいたのは、スマートで都会的な印象の奥村ご夫妻。正直、お話を伺うまではその雰囲気から、田舎暮らしや移住のイメージは、あまり想像できませんでした。そこで、お二人の馴れ初めからお話を伺うことに。
「お互いインドネシアのジャカルタに駐在していて、そこで出会いました。夫の方が後から来たので、私が案内がてらジャカルタ中を連れ回して(笑)色々なところに2人で行きました。結婚は帰国後です。出会いが海外だったからか、あまり東京にずっと住むというイメージは結婚した当初からなかったかもしれません」と言うのは、妻の葉夏(ようか)さん。
「こっちのほうが安全だから、安心だから、といって将来を決めるのは好きじゃない」という自由な発想を持つ年下妻の彼女。日本に戻ってからも、インドネシアのような、都会ではなく、自然や絶景が見たい! という欲にかられていたそうです。
対して旦那様は……「本来ならコンサバティブな性格だけど、私の願いをどうにか叶えるために、奮闘してくれているのかもしれません(笑)」と、葉夏さんがこっそり教えてくれました。
一日中顔を突き合わせるストレス
そんな奥村夫妻は東京で新生活をスタート。念願の第一子を授かります。ですが、まさかそれが移住のきっかけになるとは……。
「夫が育休を取ってくれたので、産後は夫婦と子どもと3人で、ずっと家にいたんです。当時の間取りは、1LDK。夫は育休中とはいえ、リモートで仕事をするときもあって……。私は退職していたので、社会とのつながりもないし、本当なら幸せなはずなのに、どんどんストレスが溜まってしまって……。ずっと家にいるなら、東京である意味がないな、と思いました」(葉夏さん)
ストレスを溜め込んでいる葉夏さんは、日に日に密かに憧れていた「バンライフ」を求めるようになりました。ちなみにバンライフとは、ハイエースなどの積載量の多いバンタイプの車に、車中泊をしながら移動、生活をすること。
そこで、移住者の先輩である友人夫婦がいる北海道へ、自給自足のバンライフ体験ツアーに出かけることに!
いざ北海道へ見学に行ってみるが……
北海道への移住体験ツアーに参加することを決定した際、夫の祥成さんは「ちょうどいいワーケーション(※)になる」と考えていました。意気揚々と0歳の子どもも含め、家族全員で北海道へと旅立ちますが……。
※ワーケーションとは……ワーク(労働)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語。テレワークしながら、休暇を取る新しい働き方。
「散々でした(笑)。3週間滞在する中で、バンライフも体験したんですが、もう仕事どころじゃないんです」(祥成さん)
「wifiなし、電気なしだったので、ワーケーションどころか、まず生活が大変でした。ただ、大自然だったので開放的な気分で、気持ちはよかったですが」(葉夏さん)
「移住には様々なレイヤーがある」と、第1回目の中島佐知子さんからのアドバイスにあった通り、北海道での体験は、奥村夫妻には少し「ガチすぎた」レベルだったようです。自分たちの求める移住のレベルが分かったのは、体験ツアーの良いところ。移住を考えているなら、必ず参加しておきたいことですよね。
移住の決定打は1通のメール
そんな「移住はしたいけれど、仕事ができる環境でないと厳しい」と分かった奥村夫妻。そんなときに祥成さんのお母様から1通のメールが届きます。それは、祥成さんのお父様が事業で使っていたマンションの一室が空くので、奥村夫妻に住んでみないか? というお誘いでした。
「北海道に移住したら、戻れない、大変そう、と言うイメージでしたが、このマンションなら低コストでお試し移住できるな、と。渡りに船ですよね」(祥成さん)
「彼の実家のマンションだったので、お試し移住して、もしダメだったとしてもそんなに痛手はないですよね。また、引っ越しのときも賃貸契約などの場合は家具をいつまでどこに置けるか、など考えなきゃならないですけど、それが不要なのもすごく良かったです」(葉夏さん)
奥村夫妻は舞い込んだラッキーを逃さず、和歌山へ移住することを決めます。でも、実際移住するまで、なんと現地に足を運ぶことは0回。マンションの内覧は、ご両親からもらった写真でチェックし、近所の様子は、Googleマップを駆使して、近所を探索したそうです。
夫のメンタルが崩壊した!
順調そうに見えていた、奥村夫妻の移住計画。ですが突然、ここに来て、祥成さんのメンタルが揺らぎ始めます。それは些細な行き違いがきっかけでした。
「移住とは別で実は転職を決めていたんですよね。一応選考の過程で上司になる人に移住の話は伝えていましたが、それがしっかり社内で共有されていなくて。移住が決まったこと、基本リモートで働くと伝えたところ、大炎上してしまいました。当時は、自分の考えが快く思われていないのか、仕事を続けられるのか、このままで大丈夫か、など不安にかられていましたね(笑)」(祥成さん)
「その時、もう荷物は和歌山に送っていたんです。何もないカラの部屋で、夫が無口になって……目が死んでいました。夫は本来真面目な人。でも真面目じゃないことに憧れて、なにかやりたくなって行動するんだけど、直前に不安になって一人で崩壊するんです(笑)」(葉夏さん)
こう明るく語る葉夏さんですが、当時お子さんはまだ乳飲児。体は出産のダメージからは回復していない状態で、ご自身のメンタルは大丈夫だったのでしょうか。
「私は『なんとかなるでしょ!』って思っていました。彼が育児をかなり負担してくれていたので、体力的に消耗していなかったのと、出産後自分が動けない状態の方がストレスだったので、これから爆発するぞー! という勢いがあったので(笑)」(葉夏さん)
なんとか、祥成さんのリモートワークが決定し奥村家は、東京から和歌山県和歌山市へ移住します。
後編は、移住後の和歌山での生活についてお話を伺います。
取材協力:奥村祥成さん、葉夏さんご夫妻
Text:池田ゆき
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