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「振り返れば家出に始まり、人生は家探しのよう」50歳目前で娘と2人、移住でリセットできたワケ#私たちの移住ストーリー

カルチャー

 50歳目前で娘と2人、移住でリセットできたワケ#私たちの移住ストーリー

2021.05.30

人生には時に「リセット」したほうがいいときがある。今あるものを捨てるのは難しいけれど、その空いたスペースには、ちゃんと今必要なものが入るようにできているんだ。コロナによる新しい生活様式により、移住が身近になった昨今。【私たちの移住ストーリー】では、さまざまな想いから、ひと足先に「移住」を実現した先輩たちをインタビュー。第5回目は、東京から愛媛県今治市に母娘移住した、加藤さんの<移住したあと>のお話です。

加藤由加里さんプロフィール写真

加藤由加里(かとう・ゆかり)さん
加藤由加里さんは約2年半前に東京から愛媛県に娘と2人で移住した。
きっかけは加藤さんの離婚。夫婦で一緒に営んでいた養蜂の仕事も、知り合いも全部、いったん東京に置いてきた。

東京の家賃収入が収入の基礎に

離婚と移住を同時にスタートさせた、加藤さん母娘。新天地では、シングルマザーとして、収入も家庭もひとりで支えなければなりません。そんな新生活の準備でただでさえ忙しい中、就職などの苦労はなかったのでしょうか?

「実は、絵画修復アシスタント時代に買った、東京のマンションを貸し出しているので、家賃収入があるんです。それから今、住んでいるこの家も、少し手を入れてゲストハウス『しまなみ大島の家』を始めようと思っています。東京では書道教室を開いていたので、ここでも再開したい。あとは絵もまた描きたいですね。
収入は足りなければ、アルバイトでも何でもやります。ここは選べるほど色々仕事があるわけではありませんが、少しでも人の役に立てることは嬉しいし、島の人との関わりも出来ます」(加藤さん)

ゲストハウスを開きたいゲストハウスをオープンしたい。加藤さんの新たな夢です。
「壁には瀬戸漆喰を自分で塗りました」ゲストハウス完成までもうすぐです。

無我夢中で仕事をして、家賃がもったいないと購入したマンションが、今の加藤さんの生活の基盤を支えてくれていました。新しい生活が始まり、自分の悩みはなくなったという加藤さん。しかし、今まではなかった「ある悩み」が出てきました。

子どもには自由に生きてほしい

移住に迷わず賛成し、元気いっぱいだった娘さん。ですが時間が経つに連れ、東京での生活を思い出し、その違いに意識が向き、不安定な気持ちになってしまったのだそう。

「実は、娘の学期末を待つ前に移住してしまったんです。そのことも気になり、以前の学校に相談し、東京に遊びに行かせてもらいました。そして離婚しても、元夫が娘にとって父であることに変わりはなく、いつでも会いたい時に会いに行ける場所だよと、改めて伝えたんです」(加藤さん)

実際、娘さんは東京に行き、以前の友人と触れ合うことで、笑顔を取り戻したそうです。今では、東京のお友達が今治に遊びにくる関係となり、娘さんが胸を張って島を案内してるんだとか。

「娘には狭い考え方で生きてほしくないと思っています。島にも色んな面白い人がいるし、色んな生き方や考え方、生活の仕方がある。そういう事を風景を見るように肌で感じて欲しい。どこに住むのも娘の自由だし、どんな夢だって描けて、なんだってできる。この移住には、娘に『故郷』を作ってあげたいという思いもあったんですが、娘にとっては『東京』が故郷なんですよね。でも、故郷っていくつあってもいいかなって、今は思っています」(加藤さん)

これから人生をゆっくり楽しみたい

今を大切に暮らすオンラインで書道教室を開催してもいいかも……夢は膨らみます。

東京での生活や経験も、かけがえのないもので、刺激的で充実していたけど、とにかくいつも忙しく走っていたという加藤さん。移住してきてからやっと、ゆっくりと流れる時間を感じたり、穏やかな気持ちを味わっているそうです。

「様々な経験を経て、この歳になったからこそ、これからの人生をゆっくり楽しみたいですね。家の修理修繕も創造性があって面白いし。やることはやっぱりたくさんあるけど、ゆっくりやります。美味しい素材がたくさんあるので料理して、娘や友達やお客さんと一緒に、食べて、笑って。絵を描いたり、書を書いたり、海や空を眺めて暮らす。思えば、これまでの私の人生が『家出』から始まり、自分の居場所を探し求めながら、最終的にここに娘と辿り着くための道だったと考えると、面白いですよね」(加藤さん)

今まで、自分の絵や書は、忙しい時間を縫ってやってきたことの一つだったという加藤さん。これからは、やはり、ゆっくりと自分のために取り組んでみたいとおっしゃいます。

移住を考えている人へアドバイス

今回の加藤さんのように、離婚をきっかけに人生をリセットしたいと思う人は多いもの。それを叶えた彼女から、先輩移住者としてのアドバイスを伺いました。

「親子移住は、自分だけじゃないので、子どものためにもちゃんと下調べをした方がいい事もあります。移住者向けの支援制度など活用出来るものはないか、どういう条件なら活用出来るのか、条件が合わないなら他にどんな方法があるか、諦めずにアプローチしてみてください」(加藤さん)

今、何気ない人のあたたかさや優しさが本当に身に沁みて嬉しいという加藤さん。「楽しむ」というのはどういうことか?「豊かさ」とは何か?生活がシンプルになった分、見えてくるものがあり、それを大事に暮らしたいとおっしゃいます。

「娘にもよく言っているのですが、辛いこと大変なことは、それを乗り越えるとラクになる、生きやすくなる。泣いたり笑ったり味わい深くなる。
いつか笑って思い出す事ができる。
誰かのせいや何かのせいじゃない。誰かのおかげ何かのおかげ。
私が「なんとかなる!」と思えるのは、実際に今までなんとかしてきたから。だから、大いに悩んで考え行動に移せば、道は広がって楽しくなるんだよって。そっくりそのまま自分にも言い聞かせながら(笑)」(加藤さん)

紆余曲折の末、移住生活を叶えたスーパーウーマンな加藤さん。でも、自分が前を向いて娘の希望になれる存在でいたい、と語るその姿は、優しいお母さんそのものでした。

著者

池田ゆき

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