今回お話を伺ったのは、森秋子さん(42歳)
大学時代からお付き合いをしていた彼氏と、そのまま結婚、出産。仕事は夫の扶養内に納め、家事育児を担当。順調そうな人生ですが、20代後半ごろから、夫婦仲も自身のメンタルも体調も絶不調に……。そこで、秋子さんはついに動き出します。
理想を追うことに限界を感じた
秋子さん「20代後半ごろ、世の中の仲良し夫婦像=ステレオタイプの情報に自分達を当てはめようとして、心の疲弊が限界でした。さらに、床に散らかるほどモノも多く、まだ幼い子どもが触れて欲しくないモノを掴むと、私はイライラしながら口癖のように『これ大事』と取り上げていたんです。でもある晩、添い寝をしていたら、子どもがふと『ママ大事』と布団の中で私を見つめて言いました。」
秋子さんはこの時「本当に大事なものってなんだろう? それは自分の時間や、気持ちの安定なんじゃないか?」と気づいたそうです。そこで、誰かの理想に合わせることはやめよう、「全部捨ててしまえ!」と、さまざまなものを捨てはじめます。それは、増え過ぎた服だったり、便利グッズだったり、献立から、生活習慣まで実にさまざま!
潔く色々捨て去った結果、秋子さんは他人に合わせなくても、安心で快適だ! ということを実感します。
そして、35歳の誕生日を迎え「アラフォー」になった秋子さん。なのになぜか、深い絶望を感じたそうです。
アラフォーに絶望していたけれど……
秋子さん「40代になると、今までの服が似合わなくなる、体力的にも落ちてくると聞いていたので、全てが未知の領域に入るような気がして。もう絶望感というか、これからどうなるの? といった、見通しのできない不安感しかありませんでした……」
そこで、秋子さんは来たる40代に向けてシフトチェンジを考えます。
「失敗することが恥ずかしい」という自我を抱えながら、自分の心に正直になって「やってみるほうが楽しそうで素敵!」と考え直し、前から興味を持っていたブログを始めようと思い立ちます。
それが36歳のとき。
真面目な性格の秋子さんは、そこから約1年かけて、さまざまな人のブログや書籍を読み勉強し、自身のブログテーマを決定。そして37歳、ついにアメブロにて「ミニマリストになりたい秋子のブログ」をスタートさせます。
批判コメントにこそ、共感できる
ブログは、独自の視点とポエミーな言葉が注目され、瞬く間にトップブロガーの仲間入りを果たします。ですが同時に、多くの批判コメントも届くようになりました。辛辣な言葉に傷付いたり、ブログをやめようと思ったことはないのでしょうか?
秋子さん「最初はやめようか、とも思ったんですが、批判が何年も続くと『怒られ慣れ』してしまって。そのうち、その意見を観察する余裕も出てきました。すると、批判意見にこそ、とても共感している自分がいて……」
批判の内容の多くは、秋子さんの家庭で行われている「孤食」や「家事さぼり」などへの<世間体ファースト>な意見です。
*「世間体ファースト」とは、秋子さんが作った造語です。自分の意見ではなく、他人の意見に合わせる考え方や行動のこと。
でもそれは、数年前の秋子さん自身。
批判する人たちはきっと、<世間体ファースト>に限界を感じながら、「死にたいと思ってしまうくらい、しんどい」育児をこなし、我慢し、苦しんでいる。だからこそ、秋子さんは自分に届く「批判」の声の奥にある気持ちに、共感できるとおっしゃいます。
気がつけば「執筆業」が生業に!?
その気持ちが通じてきたのか、秋子さんのブログにはポジティブなメッセージが増え、さらに続々と書籍化! 収入も増え、確定申告を必要とするほど、仕事も多岐にわたっていたそうです。
秋子さんの最新著書『ミニマリスト、41歳で4000万円貯める』では、生活でものを減らすコツ、日々の家計の管理の工夫が描かれています。
秋子さん「ブログを始めてから、衝撃的に自分の世界が広がりました。そこから、色々なオファーのメッセージをいただき、確定申告をするまでに。その時、職業欄になんて記入したら良いのかわからなくなって係員の方に質問したら『執筆業』とか、かっこいいんじゃない? と言われて。今まで想像もしていなかった新しいことが広がって、すごく嬉しかったことを覚えています」
今の秋子さんにとって、ブログを書くことは心のセラピー的要素もあるんだそう。
秋子さん「私の場合、ブログは自分の想いがないと発信できません。なので、普段から自分が何かを感じる時って、どんな時だろう。心がザワザワ、イライラ、ムカムカするときって……と、いつも自分を客観視して、自分の本音を探っています」
そんな秋子さんが、最近ワクワクしているのが「古いお家」です。
秋子さん曰く「ボロくて誰も見向きしない小さなお家」を、現金で一括購入。これからリフォームをして、いろいろな展開を考えているんだとか。
「他人から見たら、価値のないものに、自分だけの価値を見つけることにロマンと快感を感じます」と言う秋子さん。古いお家は、まさにその実験現場なんだそう。その経過は、秋子さんのブログで拝見させていただきましょう。
saita読者へメッセージ
秋子さんから、saita読者にメッセージをいただきました。
秋子さん「自分自身にアンテナを張って、自分を大切にすることがすごく大事だなって思います。自分のヘンな本音や失敗を大切にする、それだけで自分の世界がかわります。誰かの本音や失敗、にも共感や愛しい気持ちが湧いてきて安心が深まります。勇気をもらえます。失敗し放題、迷い放題!と思うといつでも何にでもチャレンジできる。何歳になっても、こうしたいという気持ちに忠実にあがく経験は財産になります。自分の感覚を大切にする気持ちを応援しています。」
そんな秋子さんに、現在の夫婦仲をお伺いすると……
秋子さん「実はたくさんモノを捨てていく中で、古いビデオテープの中に保管されていた隠してあった、夫のお金へそくり(ドル札で10万円ほど)を捨ててしまったことがありました。もし、これが逆の立場だったら、夫を責めて追い詰めていたと思います。でも夫は『そうか……これが運命だったんだ』と、ミスした私を責めなかったんです。」
この切羽詰まった時の旦那様の態度を見て、秋子さんは素直に「尊敬」の気持ちを抱いたのだそう。お互いの意見を尊重し合う、居心地の良い関係が深まるきっかけになりました。現在はお互い自宅を「ふわっとパラダイス空間」にしあえる仲にまで、進化したそうです。
余談ですが、秋子さんは尊敬と同時に、罪悪感も持ったため、ことあるごとに、旦那さんに『貢いでいます』。その額、すでに10万円を軽く超えているそうです(笑)。
編集後記
忙しいときって、目の前のことで手いっぱいで気持ちと体力がどんどんすり減っていくんですよね。
でもそんな時こそ深呼吸。秋子さんのように「本当に大事なものってなんだろう?」と立ち止まり、考えてみるべきなのかもしれません。
秋子さんがブログに挑戦したときの「失敗することが恥ずかしい」から「やってみるほうが楽しそうで素敵!」切り替えた発想。これは、“周りからどうみられるか”ではなく“自分にとって良い選択はなにか?”に変えたからこそできたことです。
秋子さんのような、自分が幸せになる選択をする女性が増えますように。