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健やかなる時も病める時も…”一生一緒に遊びたい”2人が「余命30ヶ月」を乗り越えるまで|薬剤師「DAY BY DAY PHARMACY」インタビュー

家族・人間関係

 健やかなる時も病める時も…“一生一緒に遊びたい”2人が「余命30ヶ月」を乗り越えるまで

2022.01.24

夫婦の数だけ、夫婦の形があります。多様なパートナーシップのあり方を紹介することで、これからの夫婦の時間をより豊かに前向きに過ごして欲しい。「夫だから/妻だから、こうしなければいけない」と思い込むことをやめて、もっと自由に、夫婦という"一番近い、他人との関係性"を楽しんでほしい。そんな思いからスタートした連載企画「夫婦は続くよ、どこまでも」。今回は、薬剤師「DAY BY DAY PHARMACY」の藤井晶浩・多恵子さんご夫妻にお話しを聞きました。

今年、結婚10周年を迎える藤井さんご夫婦。とても素敵な笑顔が印象的な妻、多恵子さん。その隣で静かに優しく微笑む晶浩さん。順風満帆に結婚生活を続けてきたように思えるお二人ですが、6年前、夫の晶浩さんに癌が見つかり、余命30ヶ月という宣告を受けました。お二人の出会い、結婚3年目の余命宣告、その後の6年間についてのお話の中から、藤井さん夫婦の「夫婦としての形」が見えてきました。

プロポーズの言葉は、「一生一緒に遊びましょう」

――お二人の出会いについて教えてください。

多恵子さん:大学が同じだったんです。あきちゃんは私の3つ年上ですが、学年は私が1つ上で、共通の友人や先輩がたくさんいたので自然に仲良くなっていった感じです。

――それぞれの第一印象は?

多恵子さん:サラッとした人だなぁと思いました。会えば挨拶をするけど、いつもサラッとしていたんですよね。

晶浩さん:元気の良い人だなぁと思っていました。彼女は、笑うと腹から「ははは」が出てくるんですよ。良く言えば元気が良い人だけど、うるさいと元気は紙一重ですね(笑)。

――お二人が、お互いを意識するようになったときのことを教えてください。

晶浩さん:大学の友人10人くらいで宮崎にサーフトリップに行ったんです。その旅行中にすごく仲良くなりました。

多恵子さん:旅行から帰った後に進級テストがあったんです。なぜか、一緒に勉強しようということになって、毎晩ファミレスに集まって勉強するようになりました。私のほうが1つ先輩だから過去問を全部持っていたんです。それが目的だったはずです(笑)。

――お友達としてのお付き合いから交際に発展したんですね。友達から恋人になったことで、二人の関係に変化はありましたか?

晶浩さん:変わらないです。勉強も一緒にして、遊びも一緒で。付き合ってからも、何も変わらず、ずっと一緒に遊んでいる親友のような存在です。

――結婚をしたタイミングや、プロポーズについて教えてください。

晶浩さん:付き合ってから5年目に結婚をしました。5年続いたら結婚しようと決めていたんです。一緒にいて喜びを感じる人を結婚相手にすると考えていました。僕たちは、サーフィンという共通の趣味がある。サーフィンで得られるとても素晴らしい経験を共有することが幸せな人生につながると思っていました。

多恵子さん:3月25日が付き合った記念日なんです。5年目のその日、宮崎で友達の結婚式に出た日の夜に、「一生、一緒に遊びましょう」とプロポーズをしてもらいました。迷うことなく、「はい!」と返事をしました。

夫婦の写真出典:www.instagram.com妻・多恵子さんのインスタグラム(@taearth821)より

結婚3年目、夫・晶浩さんに余命30ヵ月という宣告

――結婚3年目、晶浩さんに癌が見つかり、余命30ヶ月と診断されたときに感じたことを教えてください。

晶浩さん:一言で表現することができないくらい、いろんな感情が自分の中に溢れました。余命30ヶ月と言われても、自分軸で生きる理由を探そうとするとけっこう難しいんです。それよりも、多恵ちゃんが一人になってしまう。どうしたらいいんだろう……とか、家のことはどうしたらいいんだろうとか……。そういうことを考えたら、“死ねない理由”はたくさん出てきました。

多恵子さん:あきちゃんが、ステージ4の癌で余命宣告をされたという事実を受け入れるまでにはものすごく時間がかかりました。不安で押しつぶされそうな夜を長く過ごしながら、「人生80年なら、あと50年残っているはずなのに!」「私に残された50年のうちの20年をあきちゃんにあげられませんか?」と、神様にお願いをしていました。そしたら、お互い50年ずつ楽しむことができるって。

同じ歩幅の二人三脚で乗り越えてきた

――余命宣告は、お二人にとってとても衝撃的な出来事だったと思います。どうしたってネガティブな感情が出てきてしまう状況の中で、お二人はどのように向き合ってこられたのでしょうか。

晶浩さん:僕は癌になった当事者、多恵ちゃんはサポートする側になったことで、それぞれに違った悩みを抱えました。僕は、パートナーより先に死んでしまうことを考えるし、彼女は、残されて一人で生きていくんだと考える。そんな中で、お互いが生きるためにいろいろなことをはじめるわけです。食事を変えたり、生活を変えたり。

多恵子さん:私は、だんだんとお母さんのようになっていきました。「食べ過ぎだよ!」「飲みすぎだよ!」。なんでも「だめだめ!」になってしまって、どんどんあきちゃんが委縮していきました。

晶浩さん:それは、癌を抱えた僕のことを思っていろいろやってくれていることで、多恵ちゃんの愛のカタチだし、「生きる」という共通目的のために二人で進んでいるはずなんだけど、だんだん窮屈に感じてしまったんです。

多恵子さん:あの頃の私たちは、夫婦ではなかったと思います。お母さんが子どもに口うるさく注意するような関係になっていて、仕方ないかと思いながらもどんどん委縮させて、あきちゃんに、「そんなこと頼んでない」という気持ちにさせていたと思います。

――その状況を打破するために、夫婦で意識的に取り組んだことはありますか?

多恵子さん:お互いの存在に窮屈さを感じるようになっていたので、そんなときは一度立ち止まって話をするようにしました。夫婦って、同じ船に乗っているのと同じだと思っているので、舵取りの意見が違ったら、話し合うというのが私たちにとって当たり前のスタンスなんです。同じ方向を向いていこうというのは常に意識するようになりました。

晶浩さん:夫と妻という立場はイーブンでいたいです。だから、思っていること、感じていること、求めていることをとにかくしっかり話し合うんです。僕たちにとって、今の延長が未来で、将来の延長が人生。今を犠牲にして未来の幸せはありません。だから「今」を大切に、二人でしっかり話し合い、物事に向き合っています。

――話し合うことが、お二人にとって大きな力となったのですね。

晶浩さん:癌になる前から会話量は多いほうでしたが、癌になってからは、話し合いということをより強く意識しているかもしれないです。癌というトピック以外でも、しっかり話し合えるようになりました。

――話し合いの着地点はどのように見つけるのですか?

多恵子さん:気持ちが良いところにおきにいきます。いろんな夫婦の形があると思いますが、うちの形は二人三脚。足並みが本当に揃わなかったら、いつかどこかでそのひずみが出てくると思っているので、足並みをしっかり揃えることを意識しています。

晶浩さん:俺が!私が!となっちゃうと、それは必ず、「やってあげてるのに」という気持ちから、つまらない争いになってしまいますよね。僕たちは、二人三脚の歩幅が同じだから、いろんなことを乗り越えられてきたんだと思います。

 

結婚3年目に、晶浩さんが受けた余命30ヶ月という宣告。「あの頃の私たちは、夫婦ではなかった」という多恵子さんのお話は、お二人が乗り越えてきたものの大きさを感じるものでした。さまざまな試練を、二人三脚で乗り越えてきたというお二人は今、1歳になるかわいい息子さんのパパ、ママになりました。次回は、癌を乗り越え、親になったお二人のお話です。

後編:余命宣告から6年。「戦友であり親友、最高の遊び仲間」のふたりが親になって

お話を伺ったのは…DAY BY DAY PHARMACY 藤井晶浩さん・多恵子さん

ライフスタイルを健康にデザインするため、オンラインセレクトショップ「DAY BY DAY PHARMACY」を運営し、予防医学の講座やセミナー、講演活動などを行う。どんなライフスタイルにも取り入れやすい健康へのアプローチとして、自ら生産者を訪ね、選び抜いた玄米や調味料など「薬」となる食べ物、食べ方を提案、販売する。共通の趣味はサーフィン、ヨガ、料理。


著者

上原かほり

上原かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。