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性教育を伝える医師夫婦ユニット・アクロストンが語る「24時間一緒にいてもケンカが起きない」理由

家族・人間関係

 「24時間一緒にいてもケンカが起きない」理由を“性教育を伝える医師夫婦ユニット・アクロストン”が語る

2022.02.09

夫婦の数だけ、夫婦の形があります。多様なパートナーシップのあり方を紹介することで、これからの夫婦の時間をより豊かに前向きに過ごして欲しい。「夫だから/妻だから、こうしなければいけない」と思い込むことをやめて、もっと自由に、夫婦という"一番近い、他人との関係性"を楽しんでほしい。そんな思いからスタートした連載企画「夫婦は続くよ、どこまでも」。今回は、ご夫婦共に医師であり「アクロストン」というユニットで性教育に取り組むご夫婦にお話しを聞きました。

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特集:夫婦は続くよ、どこまでも

結婚生活13年目のたかおさんとみさとさん。夫婦共に医師の資格を持つお二人は、アクロストンという夫婦ユニットで、性教育をポップに正しく、わかりやすく発信しています。医師としてフルタイムで働くのではなく、自分たちのペースで仕事をするという働き方を選択しているご夫婦です。共に過ごす時間が多いお二人の夫婦円満の秘訣について聞きました。

子どもの誕生を機に選んだ“時間にゆとりのある生活”

――ご夫婦共に医師のお仕事とアクロストンの活動を両立されていますが、お仕事、活動、育児と多忙な中でどのように時間を作っていますか?

みさとさん:実は、そんなに忙しくないんですよ(笑)。

たかおさん:お互い、フルタイムで働いてないんです。

みさとさん:私たちは結婚後、ステージが変わるたびに生活の仕方を変えているんです。柔軟と言えば聞こえはいいけど、アクロストンを始める前から、収入は減るけれど時間にゆとりがある生活がしたいということで週に数日だけ働くというスタイルを取っているんです。

――そうなんですね。ゆとりのある生活をしたいと思ったきっかけはなんですか?

みさとさん:子どもが生まれたことがきっかけです。上の子が1歳になるくらいまで、たかはすごく忙しい生活をしていたんです。

たかおさん:僕が4月から泌尿器科で働きはじめて、翌月の5月に娘が生まれたんです。平日は5時に帰れるけど、週に1回の当直と週末の学会参加で子どもと過ごす時間がほとんど持てないし、何よりもみさとにすごく負担をかかっていました。家にいる間は、掃除、洗濯、料理はしていたけど、子育てはみさとがメインでやることになっている状況を見て、「これは違うよな」と思ったんです。とは言え、泌尿器との両立は無理なので、2年で泌尿器科を辞めて、当直も緊急呼び出しもない病理診断という科に移って。そのころに二人目が生まれました。

みさとさん:上の子と下の子は2歳しか違わないのに子育ての仕方が全然違うんです。上の子のときは100%私がべったり一緒だったけど、下の子は、生まれて2か月から実家に預かってもらって復職をしました。

育児と仕事の役割分担を二人で組み替える

――上のお子さんのときはお仕事をされていなかったということですが、お二人目のお子さんが生まれて2か月で復職されたのはなぜですか?

みさとさん:医大に勤務する医師は、大学からの収入がかなり低いので、生活費を稼ぐために週に1度、外のクリニックなどにバイトに行くんです。当時、たかは、月に4回のバイトのうち2回を休んで家のことをする日としていました。

たかおさん:月に2回のバイトの収入に頼っていたところがあったのですが、バイト先のクリニックの事情でそれがなくなることに。当時の僕は27歳で、家族のために自分が稼がねばならないという意識があったので、そのバイトがなくなることですごく不安を感じて、みさとに相談したんです。

みさとさん:私はそれを聞いて、「その分、私が働ける時間が増えたじゃん! むしろ、ラッキーじゃん!」と言ったんですよね(笑)。

――旦那さんのお仕事が減ると聞いて、「私が働く!」と言えるみさとさんは頼もしいですね。

みさとさん:私たちは資格職で、1日単位で働くという選択肢があるのですごく恵まれていると思います。それに、「私に任せて!」というよりは、そろそろ自分も外の世界とつながって自分のキャリアを築いていこうということを考えていたタイミングでもあったし、家で一日子育てしているより、週に数回外で一日働いているほうが気分転換になるだろうと思ったので、自分にとってもすごく良いタイミングでした。

たかおさん:僕にとっては、みさとのその言葉はすごく転機になりました。「あ、そっか。僕が稼がなくていいじゃん」と。僕は仕事、みさとは育児と比重が分かれていたけど、仕事と育児の負担を月に数回交換したんです。そうやって、お互いに育児、仕事を二人で組み替えられるというのはすごい気づきでしたね。

一晩中話していても話が尽きない

――すごく柔軟にお互いを尊重しながら生活されていると感じます。お二人はケンカをすることはありますか?

みさとさん:ケンカはしないですね。私が一方的にキレているばかりで(笑)。

たかおさん:僕は、「ごめんなさい」を言うのが早いんです。みさとが怒っていると感じたら、とりあえず謝ります。

みさとさん:謝罪の意味がない「ごめんなさい」ね(笑)。

たかおさん:みさとが怒るのは、「冷凍庫のほうれん草が2袋とも空いているのはなぜ?」とかすごく具体的なことが多いので、それはもう謝るしかないなと(笑)。

――お二人は、共に過ごす時間がすごく多いご夫婦だと思います。一緒にいる時間が多いことは、夫婦関係にどのように影響していると思いますか?

みさとさん:二人とも医者として働いていない日は24時間に一緒にいるし、その間はほとんどしゃべっているので、会話量は相当多いと思います。意志の疎通ができているから、ケンカらしいケンカはないんだと思います。

たかおさん:本当によく話していますね。寝る前に話し始めたら、新聞配達のバイクの音が聞こえてきて、「そろそろ寝ようか」となったことがあるくらい。仕事や子どものことに限らず、話すことがいろいろあるので話が尽きないんです。

――たくさんの時間を共有しながら、話も尽きないなんてすごいですね! それぞれ、一人の時間が必要だとなることはないのですか?

みさとさん:一人時間とかを意識することもなく、ただ当たり前に二人でいるというか、用事があれば一人で出かけるけど、何もなければ二人でいることが基本という感じなんです。

たかおさん:一緒にいるほうが、楽しいし気楽なんですよね。友達的な感じからスタートしているというのも大きいのかな? あと、社会人で出会っていたら違ったのかもしれないよね。みさとは時々、「飽きた」ってなってることもありますけど(笑)。

みさとさん:アクロストンの活動が煮詰まったり、原稿やワークショップの仕事が重なったりすると、ワーッ!となることはあります。でもそれは、一人時間を求めているというのとは違うかな。時間の使い方と仲の良さは別だと思うので、一人の時間を大切にしてこそ仲良くできるご夫婦もいる。こればかりは人それぞれですよね。

――みさとさんがそうなったときは、どのように解消するんですか?

みさとさん:ストレス発散をしている暇がないので、やり切ったら満足! みたいな感じですね。私たち、自己評価が甘いので、「あれはよかったね」「あれもよかったね」って盛り上がれるので、忙しい仕事を終えると満足するんです(笑)。

アクロストン

どちらかが悩んだときは、一緒に悩んで解決する

――とっても仲良しのお二人に、お互いの好きなところをお聞きしてもいいですか?

たかおさん:結婚式する前に、みさとがうちの父とケンカしたエピソードが好きなんです。僕たちは、自分たちでお金を出して好きなように結婚式をやりたいと思っていたんですが、父の中には、口もお金も出したいという気持ちがあったようです。ある日、父が「勝手に結婚式場などを決めるのはおかしい」とみさとと二人になったタイミングで言ったことがあり、「私たちの結婚式なので私たちが決めます」と言い合いになったんですよ。

みさとさん:口も出すけれど、お金を出してあげたいという気持ちもあったみたいなのですが、その当時の私には、お義父さんのその気持ちをくんであげることができなかったんです。とはいえ、今同じことがあっても、同じように意見を言うと思いますが。

たかおさん:僕がかけつけたときにはケンカは終わりかけていたけど、みさとが優勢でした。義理の父になる人にも、フラットに自分の考えを伝えられるってすごいなと思ったし、僕はみさとのそういうところが好きです。子どもに対してもフラットにも接するし、みさとは誰であれ対等に接するんですよね。

みさとさん:私は、一緒にいる時間が心地いいところです。ときめき系の好きではないけど(笑)、一緒に暮らしていくパートナーとして、良いことだけじゃなくて、良くないこともちゃんと話しあうし、どちらかが悩んだときには、その過程も全て共有して、一緒に悩むんです。そうやって出た答えは納得感しかないし、そういう関係が築けるところが好きなところですね。

――では逆に、相手に直してほしいところはありますか?

みさとさん:冷蔵庫の中で同じものがいくつも開いてるとか、賞味期限が近いものからつかってほしい! とか(笑)。そういう細かい話はいろいろあるけど、それ以外はないですね。

たかおさん:みさとは、水を飲まないんです。それですぐ熱中症になるので、水分摂取をしてほしいです(笑)。

――お子さんが生まれたことを機に、ゆとりのある働き方を選択したというお話でしたが、それ以外に、お二人がパパ、ママになったことで変わったなと感じるところはありますか?

みさとさん:やることは圧倒的に増えたとは思うけど、関係性は変わらないですね。上の子が生まれたばかりのころは、たかの仕事が忙しくてワンオペ育児ですごくストレスがたまって、きつい言葉をぶつけたり、どれだけ辛いかを伝えたりしました、そういう時期があって、家族で過ごす時間を増やそうとなったので、そういう変化はありますね。

たかおさん:その都度軌道修正をしている感じではありますね。パパ、ママという役割だけじゃなくて、家事や仕事、常にたくさんのことを同時進行でやるので、二人で常に時間を組み合わせて、協力しながら何かをするというスタンスはできあがりましたね。あと、二人とも弱音を吐きます。「これが辛い」とか「これがいやだ」ということは溜めこまないようにしています。

みさとさん:「とりあえず、話す」というのは、意識的ではないけどやっているよね。

たかおさん:早ければ早い方が、軌道修正が簡単だから。

――まさに、運命のお二人! という感じがしますね。お二人にとって、「夫婦」とはなんですか?

みさとさん:共同運営チームです。

たかおさん:あぁ、なるほど。僕の感覚としては、意味わからないかもしれないけど、2匹の猫がいろんなものを積んだソリを引いているというイメージ。「今日、アクロストンをやるぞ」と言ったら、そりに積んでいるもので何とかして……というか。

みさとさん:なんで猫なの?

たかおさん:いや、犬ぞりって言いたかったんだけど、我々、犬ぞりっていうほどの迫力がないから猫っぽいかなと(笑)。うちは、アウトドアが好きで家族で行ったりするんですけど、そこでも、水はどのくらい持って行ったほうがいいかとか、何を食べるかとか、いろいろ考えるんですけど、そういうのも含めていろいろなことを考えてやっているから……。夫婦とは、共同運営チームですね。

みさとさん:(笑)。

――お二人のお話、最高ですね。そんなお二人、10年後はどんな夫婦になっていると思いますか?

みさとさん:関係性はあまり変わってないんじゃないですかね。性のことを安心して話したり学んだりできる拠点を作りたいと思っているので、そのためにドタバタしているかもしれないですけど。

たかおさん:子どもたちも独立するかしないかくらいの時期だから、そういう意味では今とはまた違った環境になるかもしれないよね。

――お子さんたちが独立して、お二人の時間になったときにやりたいことはありますか?

みさとさん:山に登りたいですね。子どもが小さい頃はお菓子につられて付き合ってくれたけど、最近は付き合ってくれなくなったので、二人になったら山登りしたいですね。

たかおさん:以前は、子供たちがサマーキャンプやスキー合宿に行ったりしていたりしたので、そういうときに二人で山登りしていたんですけど、最近は合宿に行くとかもないので、子どもたちが大きくなったら、二人で山登りや旅行がしたいですね。

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お子さんたちが自立し、二人の時間ができたときのことを、今から話し合えている夫婦ってとても素敵です。家族としてはもちろん、仕事や活動など多くの時間を夫婦で共有しながら、会話量も多く、さらにお互いへの思いやりにもあふれているたかおさんとみさとさんは、誰もが憧れる理想的な夫婦の形ではないでしょうか。夫婦円満の秘訣は、会話量の多さ。どんなことも共有しあえると、お二人のような夫婦関係を築くことができるのかもしれません。

お話を聞いたのは…アクロストン

医師夫婦による、性教育を伝えるユニット。子どもに必要な性の知識を楽しく・ポップで・まじめなコンテンツにして届けている。著書に『10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック変わるカラダのいろいろ編』(ほるぷ出版)、他。2022年2月下旬には新刊『10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 性とココロのいろいろ編』(ほるぷ出版)も発売予定。noteでも発信中!

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