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「相手不在でも人生は成立するという気持ちの中で一緒にいる」動物の不妊去勢手術専門病院を立ち上げた大門夫妻のパートナー観

家族・人間関係

2022.07.10

夫婦の数だけ、夫婦の形があります。多様なパートナーシップのあり方を紹介することで、これからの夫婦の時間をより豊かに前向きに過ごして欲しい。「夫だから/妻だから、こうしなければいけない」と思い込むことをやめて、もっと自由に、夫婦という"一番近い、他人との関係性"を楽しんでほしい。そんな思いからスタートした連載企画「夫婦は続くよ、どこまでも」。今回は、大門正明さん・大門みゆきご夫婦にお話しを聞きました。前後編でお届けします。

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特集:夫婦は続くよ、どこまでも

夫婦で同じ仕事をすることのメリットは?

――おふたりは、北海道で「飼い主のいない犬猫」のための不妊去勢手術専門のスペイクリニック「Mobile VET Office」を立ち上げ、ご夫婦でお仕事をされています。このお仕事をおふたりでスタートした経緯を聞かせてください。

正明さん:僕は以前、会社員として働く傍ら、教育関係や子ども食堂などの活動をしていました。会社員を辞めるときに、もっと自分のやりたいことをやってみようと思ったんです。そのタイミングでみゆき先生は、獣医としてどこかに就職しようかなと言っていたのですが、やりたいことをやってみたら?と話して動物病院をはじめることにしました。ふたりがやりたい事業をくっつけたという感じです。

みゆきさん:以前から、「命が大切にされる社会を作りたいよね」という話をしていたんです。それぞれのNPOを立ち上げるという方法もあったのですが、それは大変そうだったので、お互いにやりたいことを小さく始めてみようということで法人化しました。

――夫婦で事業を立ち上げるときには、方向性などの話し合いも必要だと思うのですが、その際に意見の相違などはなかったですか?

正明さん:揉めることはなかったですね。お互いのベースに、お金を稼ぐより今よりもちょっとだけ良い社会になればいいねという共通の思いがありました。自分たちができることの範囲で、何をすべきか、何を大事にしたいかの思いがまとまっていたからだと思います。

――正明さんは、学習塾「BRIDGE」の代表でもありますよね。

正明さん:僕がやっている学習塾は低価格の進学塾で、子どもの教育格差の改善と教育機会を提供するためにはじめたものです。 教科学習だけじゃなく、体験的な学びも大切にして子どもたちの教育環境を整えていけたらなと思っています。全然お金にはならないですけど自分の故郷の江別や札幌で今よりちょっと良くなってくれたらいいなぁという思いでやっています。

ケンカをしても翌日には切り替える

――それぞれにやりたいと思うことを仕事にしていると、一緒にお仕事をしていてもケンカにはならないものですか?

みゆきさん:私たちがケンカをするときは、ほとんど仕事のことが原因です(笑)。

正明さん:僕もみゆき先生も、自分がやっている業界がより良くなっていくためにという思いがあるんです。ただ、継続するためにはお金も必要なので、理想と現実の課題との間で大変なこともあります。動物病院のほうだと、みゆき先生の思いが強くて、僕は未来像をどう描いてくかっていう話をしていくとギャップが出てきてケンカになったりするんです。

――ケンカした時は、どちらが先に折れるんですか?

正明さん:ケンカをするときは、思い切りぶつかるんだけど、次の日にはまあまあみたいな感じになるんです。ふたりとも根に持たないタイプなのかも。どちらかというと、僕のほうが根に持つほうかな。以前、みゆき先生とすごい大ゲンカをしたときに、「私は一人でできる! あなたは過干渉だ! もうほっといて!」って言われたんです。そうかそうかと思っていたら、次の日に、「やっぱり一人ではできない」って言ってきたんですよ(笑)。

みゆきさん:たまたま、その次の日がすごく大変な日で、これは一人じゃできないってなっちゃったんです(笑)。

――めちゃくちゃかわいいじゃないですか!

正明さん:憎たらしいですけどね(笑)。僕たちがケンカをすることで害を受けるのが動物やお客さんになるので、次の日にそう切り替えられるのはありがたいなと思います。でも、みゆき先生は休みを作らないくらい仕事人間なので、休むべきだと言ってケンカをすることも多いんです。月に2回しか休まなかったりするんです。

みゆきさん:手術のために出張をするのですが、そのときは動物病院から離れるので、地元のお客さんから見るとお休みみたいなものじゃないですか。なので、休んでいる時間なんてないなと思うんです。

――突っ走るみゆきさんと守りたい正明さんとの戦いですね。

正明さん:みゆき先生は、前のめりで倒れたい人。僕は、80%くらいで、何か不測のことがあっても対応できるようにしておきたい人。そこら辺は、タイプが全然違うんですよね。

お互いに、良い意味で自立してる

――夫婦になり、一緒に仕事をする中で似てきた部分とかもありますか?

みゆきさん:似てきたこと……。あるかな? 口が悪いところが似てきたような(笑)。

正明さん:僕、口悪くないので(笑)。

みゆきさん:でも、口調は似てきましたね。

正明さん:ふたりでいるときは口調が悪くなるかもしれないです。ふたりだから良いだろう、オフレコだから良いだろうという感じで。まぁ、僕が甘えてるんでしょうね。そして、そういうところを「あなたは口が悪い!」とみゆき先生が言うんです。

――結婚して6年ということですが、この間に夫婦の危機を迎えたことはありますか?

みゆきさん:危機っていう危機ってあったかな……? てか、いつも危機(笑)?

正明さん:危機というか(笑)。お互いに、相手がいなくても人生は成立するという気持ちの中で一緒にいるという感覚はあるかな。その中で、本当にできない時や、これは死んでしまうだろうみたいな事故が起こりそうなときは助けるみたいな。基本的に、できることは自分でやってねとしているから、お互いに良い意味で自立してるなぁとは思います。

*次回は、おふたりの出会いから結婚までのお話を聞きます。

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