「私らしい」が見つかる。40歳からのライフスタイルメディア
特集記事

「僕の悪口を言えるような場所があったほうが良い」動物の不妊去勢手術専門病院を立ち上げた大門夫妻のパートナー観|後編

家族・人間関係

 動物の不妊去勢手術専門病院を立ち上げた大門夫妻のパートナー観|後編

2022.07.11

夫婦の数だけ、夫婦の形があります。多様なパートナーシップのあり方を紹介することで、これからの夫婦の時間をより豊かに前向きに過ごして欲しい。「夫だから/妻だから、こうしなければいけない」と思い込むことをやめて、もっと自由に、夫婦という"一番近い、他人との関係性"を楽しんでほしい。そんな思いからスタートした連載企画「夫婦は続くよ、どこまでも」。大門正明さん・大門みゆきご夫婦のインタビュー後編です。

出会いは、40人が住むシェアハウス

――いろいろなご夫婦にお話しを聞いていると、本当に夫婦の数だけ夫婦の形があると思うのですが、おふたりの関係もまた、おふたりならではのものなんだと感じます。そんなおふたりの出会いは?

みゆきさん:仙台にあるシェアハウスで出会いました。最初は、同じシェアハウスに住んでいる住人の中の一人という存在でした。

正明さん:40人ぐらい入れるシェアハウスで、3階が女子部屋で、それぞれ個室はあるけどキッチンやリビングは共有というところだったんです。

――それだけ人数がいると、シェアハウス内でカップルって生まれる可能性も高いですよね。

みゆきさん:そこで付き合って、結婚したという夫婦は何組かいました。当時は、私が33歳で、夫は30歳になるかなというくらいだったので、恋愛する相手という意識はしていなかったんですよね。

正明さん:男女が一緒に住むシェアハウスというと、テレビで見るようなキラキラしたイメージがあるかもしれないけど、恋愛目的みたいな感じで入ってくる人はいないんです。生活時間が違うので、それだけ人数がいても人と会わない日もあるくらい。みゆき先生とは生活時間が同じで、僕が帰るといつもリビングで暗い話をしていました(笑)。

みゆきさん:仲の良い男の子と、「人生とは?」という話をするのが好きだったんです。そういう話をしていると、彼が帰ってきて「何やってんだよ!」と言われて我に戻る……みたいな(笑)。

――「人生とは?」と語るみゆきさんの姿に惹かれたんですか?

正明さん:そこには全く惹かれていません(笑)。年上で、いろいろな勉強をしていて、僕が知らない世界を教えてくれるかなとか、いろんな刺激がもらえそうだなという興味からいろいろ話すようになったんです。

――みゆきさんは、どう思っていたんですか?

みゆきさん:異質の人間だなって思いました。私とは、性格も考え方も真逆。私は、「人生とは?」なんて話をしながら悩むタイプなのに、夫は全く悩まないタイプなんです。

正明さん:失礼だぞ!(笑)。

みゆきさん:自分でも言ってるじゃん(笑)。

雪原に、一文字10メートル四方の文字でプロポーズ

――おふたりの掛け合いが最高です。正明さんがどんなプロポーズをしたのかも気になります!

正明さん:かなり大がかりにやりました。北海道の雪面に、10m四方の文字で「結婚しよう」と書いたんです。友達にも手伝ってもらって。本当は、文字の輪郭にキャンドル立たせようと思っていたんですけど、その日はすごく吹雪いてしまったのでライトに変更しました。

プロポーズ北海道の雪面に「結婚しよう」の文字を形作ってプロポーズ!

――正明さん、意外(!?)とロマンチストなんですね。みゆきさんは、そのプロポーズを受けてどうでしたか?

みゆきさん:仙台の友達や札幌の友達が15人くらいいて、友達がこんなに見守ってくれていたことに泣きました。

正明さん:友達から「結婚は?」とよく聞かれるようになって、「いや〜……」なんて答ええていたら、聞かれる頻度が減ってきたんですよ。そのうち誰からも聞かれなくなるのかなと思ったら、それもちょっと寂しいなと思って。忘年会で、「結婚するから、プロポーズを手伝ってくれ」とお願いしたんです。人生で一度のことだから頑張りました。

結婚ふたりが暮らしていた仙台のシェアハウスの仲間たちや友人らが札幌から集まり、パーティを開催してくれた。

僕の悪口が言えるようなコミュニティがあったほうが良い

――おふたりは仙台で出会って、結婚後は北海道で生活をされています。みゆきさんにとっては、親しみのない土地での生活が結婚と同時に始まったと思うのですが、北海道に住んでみてどうですか?

みゆきさん:冬は雪がすごいんです。特にこの冬は雪が多くて、朝起きるたびに、雪かきをしないといけないのかぁとなります(笑)。年老いたら、ここには住んでいけないかな。もっと暖かいところが良いなぁとか思ってます。あまり友達もいないし(笑)。

正明さん:みゆき先生はすごく人からかわいがられるタイプなんですよ。困っていたら必ず助けてくれる人がいる。そういう能力が高いと思うんだけど友達がいないんですよ(笑)。僕の悪口が言えるようなコミュニティがあったほうがいいと思ってるんですけどね。

みゆきさん:なかなかこの年になると、新しい友達を作るって難しいですよね。英会話を習ってみたけど年齢層が高かったり、なかなか同世代で気が合う人と出会うというのは難しいし、コロナ禍で余計に出不精になっちゃって。

正明さん:コロナの前からでしょ。みゆき先生は、僕の友達を自分の友達だって言い張るんですよ(笑)。

みゆきさん:ありがたいです(笑)。社交性のある夫と内向的な私という組み合わせで。

正明さん:うまく正反対って感じですね。みゆき先生は細く尖がっていきたいタイプ。僕は、社会課題をいかに楽しく広げてハードルを下げるかってタイプ。物事を解決する思想が真逆だなと感じるときはあるけど、それが良いバランスになっているんだろうなと。

――そんな正反対のおふたりですが、お互いの好きなところを教えてください。

正明さん:目の前のことに全力で取り組めるところです。休まず仕事を頑張るところも僕にはできないですね。それに、こういう病院が成り立つようにした後で「あとはできる人がやればいいんじゃない」と方法をオープンに出来るのもすごいなと思います。器が大きいんですかね。そういうところはすごいなぁと思います。全部裏返しですけどね(笑)。要領悪いし、創意工夫が足りないとも言えるんだけど、世界を変えるのは、天才的な閃きか、愚直に毎日歩ける人かって思うので、そういう意味でみゆき先生はすごいと思います。

みゆきさん:私は自己肯定感が低くて、マインドフルネスの本を読んだりするけど、夫は、素でそれを実践しているんですよね。本当にすごいなって思います。「ありのままの自分を認めればいいんだよ」って、「そんなにがんばらなくていいんだよ」って言ってくれたり。私にはないものをたくさん持っているから、この人はどうしてこんな考えになったんだろうなって、日々学びながら生活しています。

――正明さんから良い刺激をもらっているんですね。

みゆきさん:夫の発言や発想は、「そうすればいいんだ!」という気づきの宝庫です。気づきはするけど、なかなか改善できないのが私なんですけど、これでもネガティブ思考は少しずつ改善している気がします。以前より、深く悩まなくなりました。

夫婦でゆっくりする時間が持てるように

――では逆に、相手に直して欲しいところは?

みゆきさん:口うるくて小言が多いところ!(笑)

正明さん:必要だからだよ(笑)。本当に小さいことですけど、みゆき先生って歯磨き粉をギュってやるんですよ。僕は、下から押して使いたい人。これで一度ケンカをしているので、それから我が家では同じ歯磨き粉を別々に使っています。すごくおしゃれなケトルを買ったんですけど、みゆき先生が料理するとそれにめっちゃ油が飛んで、しかもそのまま使うんです。なんで、こんなおしゃれなものをこのまま使えるんだろう? って。

みゆきさん:最近は、「はいはい」って流せるようにありました(笑)。

――10年後、おふたりはどんな夫婦になっていると思いますか?

みゆきさん:そんなに変わってないと思います。出会ったときから今までもそんなに変わってない感じがするので。

正明さん:僕は、もっと心穏やかに、小言を言わなくてもいいようになっていたいです。

みゆきさん:でも、前に、「小言を言っていたい」って言ってたよ。それに、何もなくても言い続けると思うよ。

正明さん:いや、さすがにもうちょっと落ち着いてたいよね。もうちょっとゆっくりできていたら良いなとは思います。今やっていることが広がって、自分たちがやるって言うよりは周りも巻き込んで、その旗振り役になり、社会が今より良くなっていたらいいな。それで。夫婦でもうちょっとゆっくりできていると良いよなと思います。

――では、最後の質問です。「夫婦とは?」なんでしょうか。

正明さん:真逆のふたりだから、お互い足りないところがあって、うまく埋め合っている感覚。価値観が全く違うから、二人で一つかなって思います。

みゆきさん:いつも一緒に笑っていられる関係…でいたいです(笑)。

 

夫婦で同じ仕事をすると、共に過ごす時間が増えます。そのため、仲良く過ごすためにはコミュニケーションがすごく大切になると思います。大門夫妻は、正明さんがぐいぐいひっぱりながら、本音で話し合いができるご夫婦でしたね。お互いを認め合い、寄り添っているとても素敵なご夫婦でした。

プロフィール:大門正明さん・大門みゆきさん

猫や犬のための不妊去勢手術専門のスペイクリニック「Mobile VET Office」を運営。夫の正明さんが代表を務め、みゆきさんが獣医師として現場の診療にあたる。


著者

上原かほり

上原かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。