特集記事

50代夫婦が念願のコミック&クラフトカフェをオープン!夢を実現した藤井夫妻の物語。│前編

家族・人間関係

2022.11.11

夫婦の数だけ、夫婦の形があります。多様なパートナーシップのあり方を紹介することで、これからの夫婦の時間をより豊かに前向きに過ごして欲しい。「夫だから/妻だから、こうしなければいけない」と思い込むことをやめて、もっと自由に、夫婦という"一番近い、他人との関係性"を楽しんでほしい。そんな思いからスタートした連載企画「夫婦は続くよ、どこまでも」。今回は、50代後半で「コミック&クラフトカフェ」をオープンした藤井ノブタカさん・マキさんご夫妻にお話しを聞きました。前後編でお届けします。

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特集:夫婦は続くよ、どこまでも

幼なじみのふたりは、23歳で結婚。20代の頃は、ノブタカさんの赴任先の山口で慣れない土地での長男ユウキくんの出産、育児に奮闘しました。「家族を生活の中心に」考える、藤井夫妻の考え方の基盤がその時に築かれ、カフェオープンをした50代後半を迎えた今も生活の軸となっているようです。

Pony Craft Cafe 2021年10月オープン

ポニークラフトカフェ出典:ponycraft.com比叡山を望む、滋賀県大津市JR比叡山坂本駅前に昨秋オープンした
サイフォンコーヒーとマンガ、羊毛クラフト教室のお店 ポニークラフトカフェ

藤井夫妻が営むPony Craft Cafeがオープンしたのは、2021年10月。
長年コミック本をコレクションしていた夫ノブタカさんは「いつかマンガ喫茶のマスターに」という夢を抱きつつ、有名上場企業でサラリーマンとして勤務。妻のマキさんは、子育てが一段落した後、スイーツショップや営業事務などの仕事の傍ら、自宅やカルチャースクールでクラフト講師として活動していました。
ある時、ノブタカさんが早期退職を決め、ふたりでカフェをオープンするための学校へ通っている最中に、この物件を見つけて即決。オープンの半年前から借り始めて、コミック本やフィギュアの棚やインテリアをマキさん手作りの作品で1つ1つ増やしてゆき、オープンに備えました。

地域の大切な「みんなの居場所」として

コミック棚マキさん手作りの棚に並ぶのは、ノブタカさんのコミックコレクション!

JRの駅から徒歩すぐ、またスーパーが近いという立地もあり、住宅地の中にあるPony Craft Cafeは、コミックに没頭されるお客さまはもちろん、お買い物帰りにおひとりでふらりと立ち寄る方、カーブス帰り!にワイワイとランチを楽しむグループ、ほぼ毎日顔を出される常連さんなどで賑わいます。時には、マキさんのクラフト教室の生徒さんがレッスン前にランチを楽しまれることも。利用される方が、それぞれ「自分の居場所」として大切にされているのが伝わります。

再会はなんと!合コンだった?!

藤井夫妻「ボクは幼いころは文武両道!」と笑う、ノブタカマスター!

「幼稚園からの同級生で、ボクはいわゆるガキ大将(笑)。運動も勉強も得意な目立つタイプでした。」とノブタカさんが懐かしむと、すかさずマキさんが「そういえば小学校の時、クラスのお楽しみ会で吉本新喜劇をやっていたよね?」と、思い出し笑い。
中学生の時に、マキさんが大阪へ引っ越したことから、ふたりの繋がりは一旦切れてしまいましたが、その後、マキさんが中学時代の友だちに頼まれて「同窓会の幹事をお願いしたいんだけど…」とノブタカさんに電話をしたことがきっかけで再度縁が繋がったとのこと。

合コン出典:www.photo-ac.com中学以来数年ぶりの再会の場は、なんと合コン!

しかし、あろうことか?!この時のノブタカさんの返事は「いいよ。ところで1回合コンしようよ。女の子の友だちを何人か連れてきて。」素直なマキさんは「うん、わかった。」と職場の友だちに声を掛けて当日集合。しかし、ノブタカさんはマキさんに初めは気づかなかったそうです。「子どもの頃は、大人しいタイプやったしね。ああこんな感じになったんや!と(笑)」「私は社会人として病院ですでに働いていたので、いわゆるOLらしい服装でしたから、流石に中学時代の三つ編み、メガネの私からは雰囲気は変わったんじゃないかな?(笑)」
連絡先を交換したふたりは、その後お付き合いをスタートさせて、ノブタカさんが社会人2年目の6月に結婚。当時の赴任先である山口で新生活が始まりました。

見知らぬ土地での出産、育児に奮闘

文鳥見知らぬ土地での出産、育児の日々。
実家に頼らず、子どもを含めた「家族」を軸にするポリシーが固まったのはこの時期。

里帰り出産をせず、ふたりで力を合わせて長男ユウキくんの育児に奮闘。「知らない土地にひとりで来て、頼るところも無く、初めての育児は大変だったと思う。それでも辛い様子は見せずに頑張っている姿を見ると、できることは何でもやろう、と。」「私の居場所はここ、家族は3人という、それぞれが実家から独立して頑張ろうという気持ちもあったと思う。」35年の時間を巻き戻しながら、思い出話をするふたりに夫婦の歴史と、家族への深い思いを感じました。

結婚35年を過ぎて初めての「協働」

マスター夫婦としての歴史は35年を数えても、共に働くパートナーとしての歴史はゼロ。
日々、調整が必要だったとのこと。

「土日は絶対に自分の予定は入れません。」と柔らかい笑顔できっぱりと言うマキさんの言葉には、夫婦の時間、家族の時間を大切にする揺るぎない軸が垣間見えます。
仲良しのふたりがカフェを運営するのだから、さほど苦労は無かったのでは?と聞いてみると、意外にも「付き合いは長いけど、お互い会社での仕事と家庭での家事や育児、クラフト教室の仕事など、活動の場が違ったので、最初は<同じ仕事を一緒にやる>ことの難しさを感じました。」という返答。

スープランチこちらが人気のスープランチ。スープとパンは2種類から選べます。
季節によってサラダのトッピングや小さなデザートが変わるのも楽しみ!

現在では、ノブタカさんは経済的なプランニングを堅実に進め、マキさんはお店で提供するメニューやインテリアにアイデアを出すなど、それぞれの持ち場がありながらも、調理や接客など「同じこと」を協働する必要があり、ふたりの考えにズレがあるときには、お互いに落としどころを探して話し合いをする必要があったそうです。

「とことん話し合いました。」

どんぐり出典:www.photo-ac.com「協働」の難しさは、ふたりの間の思いやりや譲り合いではなく
お店のお客さまのためになるための答えを出すこと。

「家庭内のことなら、思いやりとか譲り合い、まぁいいか、で済むことも多いのですが、お客さまに関わることなので、きちんとふたりの意識なり方法が決まっていないとダメだな、と感じました。答えをしっかり出そう、とふたりでとことん取り組んだのは結婚して初めてのことだったかもしれませんね。」と、マキさん。
お店を運営するにあたり、スタッフである夫婦の方向性をきちんと保っておかないと、お客さまへのサービスが揺らいでしまう…と感じ、「協働」の大切さと難しさを学んだそうです。

夫婦でお店を持つこと

夫婦出典:www.photo-ac.comお互い長く暮らしていても、共に働くことには慣れていないはず…
無理なく心地よくお店を運営するには、歩み寄りだけではなく意見の調整も必要です。

長年の夢を叶えた仲良し夫婦の間にも、お店を運営するにあたっては、少しのチューニングが必要だったようです。家庭内では通用する「譲り合い」で済むことも「お客さまのため」を考えると、1つの答えを出しておく必要がありました。
また、ノブタカさんが早期退職、いわゆる脱サラをするにあたり、ファイナンシャルプランナーへ資金面での相談をするなど、経営の基盤はしっかりと整えたそうです。

ふんわりと「いつかお店を持ちたい。」と夢を見ているだけでは、チャンスは訪れないのかもしれません。どの方向からでも、まずは1つ目のアクションを起こすことが大切ですね。

お話しを伺ったのは…藤井ノブタカさん、マキさん夫妻

夫妻「なんか照れるねぇ」と言いながらの1枚。
開店から1年とは思えないほど、すっかりカフェのマスターとママが
板についています!

ともに1964年生まれ。姫路市立英賀保小学校の同級生。山口、守山(滋賀)、大津とノブタカさんの転勤により移り住み、現在はJR比叡山坂本駅前で、サイフォンコーヒーとマンガ、羊毛クラフトがテーマのカフェPony Craft Cafeを営む。

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著者

みやむらけいこ

みやむらけいこ

ライター歴20年。「あなたに逢いに行きます」取材ではなく出会い、インタビューではなく会話。わかりやすい言葉で丁寧に「ひと」を伝えます。好きなものは、サーフィンと歌舞伎、主食はチョコレート。#人生はチョコレート

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