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余命宣告から6年。「戦友であり親友、最高の遊び仲間」のふたりが親になって|「DAY BY DAY PHARMACY」インタビュー後編

家族・人間関係

 余命宣告から6年。「戦友であり親友、最高の遊び仲間」のふたりが親になって

2022.01.25

夫婦の数だけ、夫婦の形があります。多様なパートナーシップのあり方を紹介することで、これからの夫婦の時間をより豊かに前向きに過ごして欲しい。「夫だから/妻だから、こうしなければいけない」と思い込むことをやめて、もっと自由に、夫婦という"一番近い、他人との関係性"を楽しんでほしい。そんな思いからスタートした連載企画「夫婦は続くよ、どこまでも」。今回は、薬剤師「DAY BY DAY PHARMACY」の藤井晶浩・多恵子さんご夫妻にお話しを聞きました。

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特集:夫婦は続くよ、どこまでも

結婚3年目に、夫・晶浩さんが余命30ヶ月という宣告を受けた藤井さんご夫婦。今年5月で、結婚10周年を迎えるお二人には、2020年7月に待望の第1子が誕生しました。余命宣告から6年。親となった藤井さん夫婦のお話、これからの夫婦としての向き合い方の中から、お二人の「夫婦としての形」が見えてきました。

「なるようにしかならない」という考えで進むことができた妊活

――昨年、お二人には待望の第1子が誕生しました。虹白郎くん、インスタグラムを見ていたらずっと見てしまうほどかわいいですね。晶浩さんの癌闘病後、お子さんを持つこと、タイミングについてご夫婦でお話されていたのですか?

晶浩さん:僕の癌が見つかった頃、僕たちは妊活をしていたんです。でも、余命宣告を受けたことで、まずは僕の命最優先ということになり、妊活は一旦ストップしていました。再び妊活に挑むことを決めるまでには、癌になる前の妊活よりももっと強い覚悟がないといけないと感じました。例え、今僕の体調が良好であったとしても、人よりも身近に死というものがあるので。

多恵子さん:子どもは心から望んでいたけど、世の中の夫婦よりも、子どもを授かることに対してシビアになっていた部分はあります。あきちゃんが癌になってからは、とにかく「生かさなきゃいけない」という気持ちだけでしたが、2年半(余命30ヶ月をクリア)を超えたくらいから、「なるようにしかならないかな」という気持ちになってきたんです。いつなにがあるかわからないけど、それは誰にとっても同じことだし、どうにかなったときにはなるようにしかならないという風に考えられるようになって、子どもを作ろうと思える余裕ができました。
それと同時に、授かる前から「何かあったら1人で育てていく」という覚悟を持てるようになりました。

――「なるようにしかならない」という気持ちになるまでに、どのような葛藤がありましたか?

晶浩さん:子どもを持ちたいっていう気持ちと、持った後に僕が死ぬかもしれないっていうのは、「たられば」の話だから、それを考えていたら前に進めないんですよね。僕は、闘病したことで、本当にいろんなことを学びました。癌になったとか、治ったというのは結果論であって、大事なのはその過程だと思っています。人生はいつも選択の連続。失敗することもあるかもしれない分、小さな喜びがたくさんあるわけで、ゴールは決めるんだけど、大切なのはゴールではなくゴールまでの過程だなと。多恵ちゃんが言うように、何事もなるようにしかならないわけですよね。闘病中に、一歩ずつ前に進むということがどれだけ大切かを学んだからこそ、僕たちは前に進めたんだと思います。

多恵子さん:私たちが思う「なるようにしかならない」というのは、ベストを尽くすことが前提です。闘病中も、食事、生活、ヨガとか、とにかくいろんなアプローチをした上で、これだけやっているから、なるようにしかならないよねっていうスタンスなので、なるようにしかならない前提の前には必ずベストを尽くしています。

目に見える成長が、まさに「DAY BY DAY」

ご家族の写真出典:www.instagram.com妻・多恵子さんのインスタグラム(@taearth821)より

――虹白郎くんが誕生した瞬間の気持ちは?

晶浩さん:めちゃくちゃ嬉しかったです。コロナ禍で立ち合いはできなかったけど、先生が、LINE を使ってオンラインでつないでくれたので、実際に立ち合いするよりも間近で見られました。ただ、嬉しいは嬉しいんだけど、カメラ越しだから実感が沸かなかったというのも正直な気持ちです。1週間後に帰ってきて、抱っこしたときに、「本当に生まれたんだ!」と実感しました。余命宣告を受けたときに、多恵ちゃんを置いていけないという“死ねない理由”が浮かんだけど、虹白郎が生まれてその気持ちがより強くなりました。絶対に死ねない!って。

――パパ、ママになったお互いをどのように感じていますか?

多恵子さん:虹白郎が生まれてからのあきちゃんは、とにかくデレデレ。子煩悩で率先していろいろやってくれます。もともと面倒見の良い人だったけど、その対象が虹白郎になっていて、私としては助かっているし、あきちゃんにとってもすごくよかったなと思います。

晶浩さん:子どもができたら奥さん変わるよって話も聞いてきたけど、多恵ちゃんを見ていると、ママになったから変わったというところはないですね。

――子育てをしていて感じることは?

晶浩さん:楽しいです。もちろん、大変なこともたくさんあるけど、昨日より今日の成長とか、お祝いでもらった服はあっという間に着れなくなって、60サイズを着ていたのに今はもう90を着てるとか、言葉が出てきたり、目に見える成長を見ていると、それこそぼくたちの「DAY BY DAY」=「一日一日」だなと感じます。

お互いが1番の親友であり、遊び仲間で夫婦

――たくさんのことを乗り越えてきたお二人ですが、もし今、お二人に課題があるとしたら、それはなんですか?

晶浩さん:ずいぶん時間的には余裕がある働き方をしているけど、もっとそれをうまく使いたいです。もっと遊びたいし、仕事もどんどん先に進めたいです。その日にできることのベストを尽くしているから、なるようになるんだろうなとは思っていますけど(笑)。

多恵子さん:課題というより目標というのかな。今、みんなで虹白郎くんの妹か弟を迎えようと思っています。そのために、虹白郎くんは卒乳を頑張っているところです。

晶浩さん:夫婦って当たり前かもしれないけど、お互いをサポートする関係が大事だと思うんです。お金を稼ぐことばかりに気を取られていると、母親も仕事へ行き、父親がサポートすればいいけど、今まで通り働く。家庭で子供の話を聞いてくれる人がいなくなる。食事を作る人がいなくなる。そして、弱い立場の子どもに全てしわ寄せがくる……こんな悪循環な環境は作りたくないですね。

――夫婦となり、親となった今、改めて感じるお互いの好きなところはどこですか? 逆に直してほしいなと思っているところはありますか?

晶浩さん:プロか?と思うくらい料理がおいしいんです。手際の良さもすごい。料理は以前から上手だったけど、最近は和食全般も美味しくなってきて、お菓子もササッと作ってくれます。直してほしいところは、片付けがいつも中途半端なところです(笑)。

多恵子さん:あきちゃんは、片付けがとても上手! 一家に一人、「主婦の味方・晶浩くん」というロボットがあったらいいなと思うくらい(笑)。直してほしいところは、イライラしがちなところ。そういう性格なのもわかるけど、ピリピリとした空気感をだすときがあるので、そういうときは話し合っています。

――では、最後の質問を。お二人が思う「夫婦」とはなんですか?

晶浩さん:写し鏡だと思っています。僕がイライラしていると、相手もイライラしている。楽しそうにしていたら楽しそうにする。まさに写し鏡ですよね。

多恵子さん:戦友であり親友です。

晶浩さん:戦友じゃなかったら、癌を一緒に乗り越えるなんて無理ですよね。仲の良い友達はたくさんいるけど、僕も多恵ちゃんもお互いが1番の親友であり、遊び仲間で夫婦っていう関係です。一番近くにいる人だから、一緒に遊べなかったらつまらないですよね。だから、一生一緒に遊びましょう。
 

晶浩さんと多恵子さんは、このインタビュー中、何度も何度もお互いの目を見ながら、一つ一つの質問に丁寧に答えてくれました。余命30ヶ月の宣告を受けてから6年。多恵子さんがお腹から「ははは」と笑う横には、虹白郎くんの姿がありました。晶浩さんの闘病を支えたもののなかでも、多恵子さんのこの笑い声はきっと大きな力になっていたのだろうと感じました。夫婦であり、親友であり、戦友。素敵なご夫婦の”遊び”はまだまだ続きます。

お話を伺ったのは…DAY BY DAY PHARMACY 藤井晶浩さん・多恵子さん

ライフスタイルを健康にデザインするため、オンラインセレクトショップ「DAY BY DAY PHARMACY」を運営し、予防医学の講座やセミナー、講演活動などを行う。どんなライフスタイルにも取り入れやすい健康へのアプローチとして、自ら生産者を訪ね、選び抜いた玄米や調味料など「薬」となる食べ物、食べ方を提案、販売する。共通の趣味はサーフィン、ヨガ、料理。

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