連載記事

在宅勤務の夫からの「静かにしろ!」にイライラが募る…夫婦の危機が一転!家族崩壊の危機を救った「模様替え」

家族・人間関係

 夫婦の危機をどう乗り越える?

2021.04.04

こんにちは、日本唯一の家事シェア研究家の三木智有です。 普段は模様替えコンサルをしたりしています。 仕事の関係上、色々なご家庭に伺い、家族のステージに合わせた家の模様替えや家事シェアの方法などをアドバイスしています。

広告

連載:男性から見た夫のトリセツ

夫婦の危機を救ったのは「模様替え」!?

最近、こんな嬉しいご報告を頂きました。

「部屋のモヨウ替えをキッカケに、離婚の危機を乗り越えることができたんです」

部屋のモヨウ替えで、なぜ離婚の危機を乗り越えられたのか?

そんなのは”たまたま”だと思われるかもしれませんが、NPO法人tadaima!に部屋の模様替えのご依頼を頂くご夫婦で「家族の関係がよくなった」とおっしゃられるケースは実は珍しい話ではありません。

今回は、ご報告をくださった髙橋夫妻(仮名)のお話をお伝えしていきたいと思います。

ステイホームが続く中、家族の関係がぎくしゃくしてしまっている、という方に勇気を与えられたらと、取材にご協力くださった髙橋夫妻には改めてお礼を申し上げます。

「在宅勤務で家のバランスがくずれてしまった」高橋家の場合

夫の忠司(仮名)が完全在宅勤務になって1年が経つ。仕事柄打合せも多く、分刻みのスケジュールで誰かと打合せをする毎日。
夫が打合せをしているその間、妻の佳苗(仮名)も子どもたちもじっと息を潜めながら生活をしていた。

子どもたちが学校へ通っている間はまだよかった。でも、休校になり、家にずっといなければならなかった時期は家族の誰もが神経をすり減らし、イライラを募らせた。

小学4年生の兄。そして就学直前の弟の4人家族。
元気いっぱい、遊び盛りの子どもたちに「静かにしていて」と言ったところで、黙っていられるのもせいぜい数分だった。「静かにして、パパは今、仕事の会議ちゅうなんだよ」と注意をしたそばからオモチャを倒し、飛び跳ね、すぐにケンカをはじめる。

アニメのDVDやゲームをすれば、少しはおとなしくなるものの、一日に何時間もTVやゲームをして過ごさせる気持ちにはなれなかった。

一方、佳苗も仕事をしていた。フリーでWEB系の仕事を請け負っている。
家事や育児に時間を取られ、日中に仕事ができなかった日など、家族が寝た夜中に仕事のためにPCを開くこともある。

「おい! 子どもたちを静かにさせろ! こっちは仕事してるんだぞ!」

2階の書斎にしている部屋から忠司の怒鳴り声が聞こえた。

私だって仕事をしたい。子どもたちだって遊びたい。
閉ざされた家の中で、家族全員が気持ちよく暮らしていくなんてことは、夢のまた夢のようだ。

いっそのこと、もっと大きくて防音設備のある家にでも引っ越したい。家族それぞれの個室があって、なんにも気にせずにお互いがプライバシーを保ちながら過ごせる家に。

いつか片付ける…「先延ばし」され続けた住環境

子ども部屋の予定だった部屋が物置!?

一応、自分たちなりに部屋づくりの工夫もしてきた。

4LDKのメゾネットタイプのマンションはリビングの吹き抜けが開放的で心地良くて、なんて素敵な家なんだろうと購入を決めた。

1階はLDKがあって、その隣には客間にもなっている和室がある。2階は洋室が3部屋あり、家族4人であれば十分な広さだ。
それぞれ、家族の寝室、近々子ども部屋にする予定の部屋、そして夫の書斎兼物置部屋と決めていた。子ども部屋は学習机などを置いて、自室で勉強に集中できるようにする予定だった。

いつか片付ける…はず

しかし引っ越してきた当初はまだ小さかった長男にとって、リビングから離れた子ども部屋で遊ぶことはほとんどなかった。
空いているからと荷物を置くようになったのが運の尽き。子どもの物を中心とした物置部屋のようになってしまった。

そうこうしているうちにふたり目を出産、長男の就学時にデスクを整えようと思うも、6畳の部屋にベッドとデスクを置くための片付けができなかった。

時間もゆとりもない。そう思いながら何年も経ち、いまわが家はアチコチに「使い切れていない場所」が溢れている。

夫の書斎はフィギュア部屋に……

もうひとつの問題は、夫の書斎。書斎と言っても、小さな折りたたみテーブルを部屋の真ん中に置いているだけで、周りは荷物に囲まれている。
その荷物の多くを占めているのが、趣味のフィギュアだ。

元々はフィギュアのディスプレイを楽しむ部屋だったが、しだいに収まりきらない荷物を置くようになり、在宅ワークのスペースがなかったことからとりあえず折りたたみのテーブルを持ち出してきたのだ。

急に「在宅ワーク」になって、高橋家はあわてた。

洗面室に作られたmtgスペース

「とにかく部屋をどうにかしないと」家の中でしっかり仕事ができる場所がどこにもなかった。

とくに佳苗は、普段はリビングで仕事をしているが、大切な打合せなどは子どもがいると困ることも多かった。ある時、苦肉の策で洗面台に板を置いて、PCを置き、そこでmtgをしてみた。せまい場所ではあるが、子どもたちも入ってこないし打合せにも集中できた。

それ以来、洗面室は佳苗にとってのmtgスペースとなってしまった。

部屋の環境を変えて、家庭の空気を変えたい!

モヨウ替えのご相談を受けたとき、夫婦の関係はかなり険悪だったようでした。

はっきりと口に出すわけでも、話し合うわけでもない。でもお互いへの不満やすれ違い、理解のされなさ、手詰まり感で張り詰めたような状態だったようです。

「部屋の環境がよくなれば、家庭の空気も少し変わるかもしれないって考えていました」と、後に教えてくださいました。

ぼく自身は、ご夫婦がそんなに張り詰めた状態だとは知りませんでしたが、とにかく家の中がたいへんな状態であることだけはヒシヒシと感じていたのです。

家族が上手に”交わらない”場所をつくることも大切

ご夫婦は4LDKをこのように使っていました。

1階:リビングダイニング:リラックスと食事/和室(LDKの隣):客間&洗濯干し&物置&子どもの朝の準備部屋
2階:洋室1:家族みんなの寝室 /洋室2:子どものオモチャ&子どもの物置/洋室3:書斎&夫の趣味の物置き

模様替え前の部屋割り

課題は2つです。

「子どもの学習スペースと子ども部屋をどうつくるか」
「夫婦の在宅ワークをどう快適にするか」

  でも6帖ほどの洋室に、兄弟のデスクとベッドと衣類を置くのは至難の業です。そんなときにやりがちなのが、洋室2と3を兄弟それぞれの子ども部屋にしようとすることです。もちろん、それでもいいのですが、「夫婦の在宅ワークの快適化」が解決できません。

こうした場合、模様替えコンサルとしては洋室3を「ファミリーワークスペース」のように「子どもの勉強と大人の仕事ができて、本を収納してる部屋」という提案をすることが多いです。

 しかし今回は夫婦はそれぞれに「こもれる場所」が欲しい様子だったのです。

そこで提案したのが下記です。

1階:リビングダイニング:リラックスと食事/和室(LDKの隣):子どもの勉強&妻の仕事
2階:洋室1:夫婦の寝室/洋室2:子どもの寝室/洋室3:夫の書斎

模様替え後の部屋割り

LDK横の和室にカウンターデスクと座椅子、低めの本棚を用意して妻と子どもが作業を一緒にできる環境にしました。仕事をしながら、子どもの勉強を見ることができる。打合せがあるときは、リビングに移動してもらいます。そうすることで和室を締め切って話ができます。

状況に応じて、時には家族が上手に交わらないでいられる環境をつくる必要もあるのです。
家族の関係はそれぞれ。四六時中一緒にいても大丈夫な家族もいれば、それだと疲れてしまう家族もいる。

「ずっと同じ空間にいるのは、さすがにシンドいな」と思ったら、交わらずに済む場所をつくることで、お互いの距離感が気持ち良いものになることもあるのです。部屋の使い方ひとつで、家族との距離感が変わってくることもある。

住む環境というのは、家族に大きな影響を与えるのです。

家族を続ける自信

 部屋をモヨウ替えして以来、忠司はぱったり「うるさい!」と怒鳴らなくなった。子どもたちが静かになったというわけでもない。相変わらず元気いっぱいで、すぐにケンカだってはじめてしまう。

変わったのは、ケンカをしたりしたら「ベッドに行く!」と兄が子ども部屋の2段ベッドに上がって気持ちを落ち着かせるようになったこと。

子どもたちも、これまでどこにも逃げ場がなかったのかもしれない。

佳苗も、もう洗面台で打合せなんてしなくなった。
和室に自分と子どものためのワークスペースがある。和室を締め切ってしまえば、隣のリビングで子どもたちがDVDを見ていてもそんなに気にもならなかった。 

忠司は、自分がこれまで苛ついていたのは「自分が邪魔なところに追いやられている気がしていたから」だと気がついた。物置部屋に、仮置された折りたたみのちゃぶ台。締め切られた暗いその部屋で、自分はまるで家族の邪魔者そのものだと感じていた。

「会社にいかなかったら、俺にはこの家に居場所はない」

そう思い、いつの間にか卑屈になってしまっていたのだ。

でも今は違った。小さいながらにデスクがあり、作業をするための部屋と環境がある。そして妻の佳苗も同じように仕事ができるスペースに満足している。そのことが、忠司をほっとさせてくれていた。

いっときは、もうこの環境では1年ももたない。

そうまで思っていた高橋家。いまは居心地がいい家になり、家族を続ける自信がみんなについていた。

広告

著者

三木智有

三木智有

NPO法人tadaima!代表 日本唯一の家事シェア研究家/子育て家庭のためのモヨウ替えコンサルタント 家事シェア研究家のnote:https://note.com/tomoari_miki

気になるタグをチェック!

saitaとは

連載記事

男性から見た夫のトリセツ

広告