教えてくれたのは……松澤 美愛先生
精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会。
東京都出身。慶應義塾大学病院初期研修後、同病院精神・神経科に入局。精神科専門病院での外来・入院や救急、総合病院での外来やリエゾンなどを担当。国立病院、クリニック、障害者施設、企業なども含め形態も地域も様々なところで幅広く研修を積む。2024年東京都港区虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」を開業、院長。
自己肯定感が低い人の無意識のクセ「5つの特徴」
自己肯定感が低い人の無意識のクセは、以下の5つが特徴として挙げられると、松澤先生は言います。その背景には、「人を否定する」「人の顔色を伺う」ことがベースとなる思考パターンが関係しているのだそうです。
1.自分にも人にも厳しく、認めない
松澤先生:自己肯定感が低い人は、できないことや苦手なこともある“ありのままの自分”を受け入れるのが難しい傾向があります。そのため、他人を認めることも難しくなるのです。自分にも厳しく、人にも厳しく考えるクセがあります。
2.比較して優劣をつける
松澤先生:他人を常に気にする傾向があるため、つい自分と他人を比較し、その優劣を意識することも特徴です。そのため、周りの人に対して否定的な評価やフィードバックを繰り返してしまうことがあります。
たとえ頑張って業績を上げたとしても、自分を褒めることができないばかりか、「もっとできたのではないか」と考えることも。周りで同じように業績を上げた人を見ると、「相手のほうがうまくやっている」「なぜ自分にはそれができないのか」と自己評価をさらに低くしてしまいがちです。
3.自分や他人を責め、感情をすり減らす
松澤先生:例えば、努力していても業績が下がってしまった場合、「そんなこともある」とは思えずに、うまくできない自分を責めてしまうことがあります。場合により、それを周りの人のせいにしてしまうことも。「あの人がもっとこうしてくれたらうまくいったのに」などと考えてしまうのです。
嫉妬心や劣等感から、よい状況も悪い状況も受け入れられず、常に感情をすり減らして疲れていることが見られます。
4.理想の自分を演じる
松澤先生:自分を認められていないことで自己信頼が欠け、「こうありたい」と思う理想の自分を無意識に演じてしまう傾向があります。常に演じることは疲れるとともに、うまく演じられないと精神的に不安定になりやすく、イライラや深い落ち込み、不安感を引き起こします。
自分に自信が持てないために、自分が価値ある人間だと他人に認めてもらおうと必死になるクセが見られることもあります。承認欲求が強く、過去の自慢話をしたり、時には嘘までついて人に賞賛されようとしたりする行動をとる場合もあります。
5.他人を意識しすぎる
松澤先生:ファッションや商品などを選ぶ基準は、流行やブランド物。流行っているものや高級ブランドなどを身に付けることで、他人からの評価を得ようとしがちです。流行が移り変わるたびに次の流行に飛びつき、自分自身と同様に、持っているものも大切にすることが難しくなります。
他人を過剰に意識しすぎるあまり、SNS上などの顔も知らない人たちの発信まで自分と比較し、嫉妬心や劣等感を抱いたり、振り回されたりしてしまいます。
自己肯定感が高い人の無意識のクセ
一方、自己肯定感が高い人は、「人を認める」「主体的に動く」思考パターンを持っていることが多いとのこと。ポイントを解説していただきました。
松澤先生:自己肯定感が高い人は、自分の価値を他人からの評価で決めないので、周りに振り回されることなく自分軸で積極的に行動しようとします。「人に認められたい」という欲求に流されないことが特徴です。
やりたいことや行きたい場所を主体的に選び、その先のイメージを持ってどんどん行動するため、場合によっては自己中心的のように見えるかもしれません。しかし、「自分は自分、人は人」と、お互いのことを認めているため、自分と異なる意見の人がいてもその意見をしっかりと聞いたり、共感したり、尊重したりすることができます。そのため、自己中心的な行動とは全く異なるものです。
また、ファッションや商品に関して言えば、流行は短い期間で移り変わっていくものですが、自己肯定感が高い人は周りの目を気にせず、自分が好きなものを選ぶ傾向があります。気に入ったものを使い、たとえ古くなったとしても愛着を持って長く同じものを使い続けることができるのです。
自己肯定感は、日常生活や人間関係に大きな影響を及ぼす無意識のクセと深く結びついています。自分のことも、周りのことも大切にするためのヒントにしてみてくださいね。