ライターと名乗った日からライター
「どうやってライタ―になったんですか?」と、よく聞かれる。
8年務めた会社を辞め、転職先に選んだ会社が入社2ヶ月経ってもお給料をくれないので即日退職し無職になった。
「どうしよう……。また転職活動をするのか……」と思っていたら、友人たちから、「文章が書けるんだから、ライターになればいいじゃん」とアドバイスされたので、その日から、「フリーライターのkahoです」と名乗るようにした。
嘘のような本当の話。数日後、「インタビューができるライターを探している」というお声がかかり、「できます!(やったことないけど)」と手を挙げて、初めての仕事が決まった。
その日から、1度も仕事が途切れることなく、フリーライター生活も14年目に突入した。
初めての仕事は、なんと芸能人のインタビューだった。始まる前、何度もトイレに行き、吐き気がするほど緊張していたのに、いざインタビューがはじまったら自分でも驚くほど落ち着いて質問ができた。
よく、「肩書きなんて、名乗ったもん勝ちだよ」という人がいるけど、私の人生、本当にそれで成り立ってしまった。
インタビュアーは天職
初めてのインタビューから14年、この間に1,000人近くの方にインタビューをしてきた。
本当にたくさんの方の人生に、インタビューという形で触れてきた。
他の方のインタビューを見たり聞いたりしたことがないのでわからないのだけど、私のインタビューは、質問→答えを繰り返すという形をとらない。
最初に、そのインタビューのテーマや目的を確認し、用意された質問事項を頭に入れたら、あとは決まった時間の中で、インタビュー相手の方と楽しくおしゃべりをする感覚。
その録音データを聞いて、質問→回答にして記事に落とし込んでいく。
この手法は、インタビュアーをはじめた頃から自然とやっていたことで、今となっては、「天職ってこういうことよね」と思っている。
私は、インタビューをするのが好きだ。この仕事をしていなかったらお話をすることがなかったような方といろいろお話ができるし、その方が語ってくれたことを、テキストにして多くの方に読んでもらえるというライターという仕事にも誇りを持っている。
著名な方のインタビューは、勝手に持っていたイメージとは全く違った一面を垣間見れたりするのでおもしろい。「そんな一面が!」と思うような部分を引き出せると、心の中でガッツポーズが出る。
インタビューを受ける人の中には、自分のことを話すことが苦手だという人がいる。そういう方は、向き合った瞬間にわかる。
心の扉を無理やり開けるようなことはしないが、「聞きたい」という気持ちで質問を投げかけると、心が開く瞬間がある。
「すごく話しやすかったです。いつもは話さないようなことをつい話しちゃいました」。
インタビューの後、そういったことを言ってくださる方がいる。
語ってくれた言葉を正確に伝える
インタビュー記事を書くときに心がけているのは、「その話を聞いたときに感じた気持ちを、記事を通じて読者の方に伝えること」。
会話で聞く話は、その思いが声や表情にからストレートに伝わってくる。お話を聞いていて涙が出ることもあるし、声を出して笑うこともある。その間隔を、文章という形でいかに正確に伝えるかを意識しながら原稿を書く。
注意しなくてはいけないのは、記事に私の解釈をプラスしないこと。語っていただいたことを脚色しないこと。その方の意思とはかけ離れた伝わり方になるような書き方はしないこと。
文章というのは、思っている以上に書き手の気持ちが読み手に伝わる。
インタビュー記事を書くときに、語り手の感情に書き手の感情まで落とし込んでしまうと、読者に間違った伝わり方をしてしまうことがある。
これは、ライターとしての勝手なこだわりだけど、記事の確認時に、「話したことが、そのまま記事になっていてうれしいです」と言ってもらえたりすると達成感がある。
こうして、ライターやインタビュアーであることに自信を持てるようになったのはここ数年の話。
「ライターです」と名乗った瞬間から、私のライター生活はスタートしたけど、自分自身が心から自信を持って、「ライターです」と言えるようになるまでには数年かかった。
そして今回、このコラムを書いているということは、プロのライターでインタビュアーであることに、自信と誇りを持てた証だなと感じる。
こう胸を張って言えるようになるまでに、私は人より時間をかけてしまったけど、その分、確実に1歩ずつこの道を究めてきたように思う。
ペースはそれぞれだけど、自分が生業としているものに自信と誇りが持てるようになるのも、積み重ねてきた人生あってこその醍醐味なのではないかなと思う今日この頃。