焦らない勇気が、未来を動かす
今年のお盆は、私の実家で過ごしている。いつもは、混雑を避けて8月の頭に帰省することが多いのだけど、今年はお盆の時期に合わせての帰省になった。
私たちが帰省した日から地元は雨続き。7月の東京が暑すぎたので、雨で少し気温が下がった田舎の夏が心地良い。
お盆が終わると、季節はゆっくり秋へ向かいはじめる。
まだまだ夏の名残を感じる暑さが続くだろうけど、朝晩の空気に少し涼しさが混じって、だんだん秋が近づいている。
そんな季節の変化について考えはじめると、なんとなく心がざわつくという人もいるかもしれない。
カレンダーをめくれば、今年も残り4か月。
「え? こないだお正月だったのに?」
急に時間が足早に過ぎていくような気がしてしまう。
「あれもやらなきゃ」「このままでいいのかな……」。
そんな気持ちが胸の奥からふわりと浮かび上がってきたりしないだろうか。私は今、まだ手をつけられていないことリストで頭がいっぱいだったりする。
「早く動かなくちゃ」
「このままじゃ何も変わらない」
「周りはもう先に進んでいる」
焦りは、一見するとエネルギーになるように見える。けど、こういうとき人は、他人と自分を比較して、ネガティブな感情を抱きやすい。そして、“焦り”を感じはじめる。
焦りは、自分の軸を揺らし、方向感覚を狂わせるものでもあることを知っておいてほしい。
焦りに押されるまま動くと、進んでいるつもりでまったく望んでいない場所にたどり着いてしまうことがある。
例えるなら、地図もコンパスも持たずに走り出すようなものだ。
スピードはあっても、あとから「こんなはずじゃなかった」と気づく。
立ち止まる勇気が、必要な場所へ進ませてくれる
望んでいない場所に辿り着けば、軌道修正のためにさらなる時間と労力が必要になる。
だからこそ、この時期に必要なのは、“あえて立ち止まる勇気”。
「何もしないなんて、余計に焦っちゃう」
と感じる人もいるだろう。けど、立ち止まること=何もしないということではない。
自分の心と静かに向き合い、これからの方向を見極めるための大切な時間を過ごすということだ。
焦りを感じたら、まず深く息を吸って、ゆっくり吐く。呼吸の音だけを感じながら、心を静めていく。
そして、自分に問いかけてみてほしい。
「私は今、本当にどこへ向かいたい?」
「これは“やるべきこと”なのか、“やりたいこと”なのか?」
最初は答えがはっきりしなくても、この問いを繰り返していくと、少しずつ心の奥から静かで確かな声が浮かびあがってくる。
良い人生は後から
焦りのざわめきの向こう側にある“本当の声”。この声を聞き取るには、急がないことが大切なのだ。焦りで心が騒がしいとき、小さな声はかき消されてしまうから。
そして、その声から生まれた一歩は、焦りで動く何歩分よりも確実に、望む未来へと近づけてくれる。
たとえゆっくりでも、方向が合っていれば必ずたどり着ける。そのほうが、回り道や後戻りが少なくて済む。
今すぐ完成させなくてもいい。むしろ、この時期は心の土台を整えるとき。
焦らないことで、未来に向けた余白や可能性が広がるのだ。
あとから振り返ったときに「あのとき止まったから今がある」と思える日が、きっとやってくる。
立ち止まった時間は、無駄ではない。
むしろ、進むための助走のようなものだ。
焦らない勇気は、未来をゆっくりと、でも確実に動かしていく。
だから今日も、自分のペースを信じて進めばいい。
周りのスピードに合わせる必要なんてない。あなたの歩幅で、あなたの道を歩いていけば、それで十分。
良い人生は後からできあがるのだから。