教えてくれたのは……福田 頌子先生
愛知医科大を卒業後、大学病院での診療をしながら、同大学にて博士号を取得。現在は愛知県尾張旭市にて「あさひの森 内科消化器クリニック」を開業。消化器病専門、消化器内視鏡専門医でありクリニックでは胃カメラ、大腸カメラも行い、「便秘下痢外来」を開設し多くの方の診療を行っている。
「赤い便の原因」
福田先生によると、便の色は病気のサインになる可能性もあるとのこと。その一つが“赤い便”の場合です。赤い便が出ると、どのような病気が隠れている可能性があるのでしょうか。
福田先生「便が赤い場合は、大腸から出血をしている可能性があります。
痔、憩室出血、虚血性腸炎、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、ポリープや癌など、さまざまな病気の可能性が考えられます。
赤い便は、大きく分けると『鮮血便』と『暗赤色便』があります。
鮮血便:鮮やかで明るい赤の場合は肛門に近い部分で出血している可能性があります。痔の出血の場合は比較的鮮やかな明るい赤い便の場合も多いです。
暗赤色便:出血をして時間が経ったものや、大腸の奥の方で出血した場合は、暗赤色(黒っぽい赤い)血が混ざる場合があります。
どちらにしても、自分で判断しづらい場合もあります。赤い便が出た場合は、写真を撮って記録しておくことも大切です。医師は驚きませんので、安心して写真を見せてくださいね」
赤い便が出ているときに考えられる「6つの病気」の特徴
上記で挙がった病気の症状や原因、治療方法などについても教えていただきました。赤い便が出ているときには「さまざまな病気を知らせるサインかもしれない」と捉えて、放置しないようにしましょう。
1.痔
肛門周囲の血管が腫れたり、炎症を起こしたりする疾患です。一般に『いぼ痔』と呼ばれますが、皮膚にできるような「いぼ」ではなく、血管が腫れてできた血管のこぶのことを指します。
2.憩室(けいしつ)出血
憩室は、消化管の内側の粘膜が消化管の外側の層である筋層に押し出されてできる袋状の突起です。消化管の壁の弱点であり、特に大腸に多く見られます。
憩室出血は、憩室の内側の血管が破れて出血している状態です。出血がなかなか止まらない場合は緊急で大腸カメラをおこない、止血する必要があることもあります。
3.虚血性腸炎
腸管内の血流が減少したり遮断されたりすることで引き起こされる病気です。
腸管の血流が減少することで、腸の粘膜に浅い潰瘍を作ることがあります。血流が一時的でなく連続して途絶えると腸管が壊死(腐る)してしまい、緊急で手術が必要な場合もあります。
4.感染性腸炎
主に、汚染された水や食品を経口摂取することで感染します。特にカンピロバクターやサルモネラ菌の感染の場合は、血便の下痢に高熱が伴う場合があります。
感染性腸炎の多くの場合は休養と水分補給が主な治療ですが、重症の場合は抗生物質や対症療法が必要となることもあります。
5.潰瘍性大腸炎
大腸の内側の粘膜に炎症や潰瘍が生じる病気です。この疾患は自己免疫性の疾患で、自分の免疫機能で正常な腸管粘膜を攻撃することによって引き起こされます。赤い便だけでなく、血の混ざらない下痢が続く場合もあります。
6.大腸癌
大腸で発生するがんの一種です。
大腸癌は、通常は粘膜の内側から始まり、時間の経過とともに壁の深部に侵襲していきます。その初期段階では症状がほとんどなく、検診などで見つかることが多いです。直腸など肛門に近い場所の大腸がんの場合は、血便(赤い便)で発見されることがあります。
上記で紹介した6つの病気には、赤い便が出る以外にも前兆があるのだと、福田先生はおっしゃいます。
次回の記事では「赤い便以外に見られる症状」と「やってはいけないNG行動」について、ご紹介します。