教えてくれたのは……鈴木 枝里子先生
医療法人社団ユーアイエメリー会理事長、医療法人大壮会久喜すずのき病院認知症疾患医療センターの理事。地域に根ざした認知症ケアを実践。数十年にわたり豊富な臨床経験を積み、患者一人ひとりに合わせた丁寧な対応と家族支援を提供している。
精神保健指定医、日本精神神経学会認定 精神科専門医・指導医、日本精神神経学会認知症診療医、クロザピン処方医、電気けいれん療法(ECT)講習会修了、日本臨床精神神経薬理学専門医。
認知症を予防するためにできること
前回の記事では、認知症の人への適切な接し方について伺いました。これからシニア世代を迎えるミドル世代が、認知症を予防するために何かできることはあるのでしょうか。
鈴木先生:認知症予防として、最近では薬物療法に大きな進展があります。その中で注目されているのが「レカネマブ」という薬です。
レカネマブは、アルツハイマー型認知症の原因の一つとされるアミロイド βという異常なタンパク質を取り除く働きをします。アルツハイマー型認知症の初期段階に使うことで、進行を遅らせる効果が期待されています。これによって、将来的に認知症の発症リスクを低減できる可能性が高まっています。
ただし、レカネマブはあくまでも発症予防に役立つ薬であり、既存の症状を改善するものではありません。そのため、日常生活での予防策が大切です。
認知症を予防する「4つの生活習慣」
レカネマブのような薬物治療の進展も重要ではあるものの、脳の健康を維持するためには生活習慣を見直すことも欠かせない要素なのだと、鈴木先生は言います。以下の4つを意識することが重要なのだそうです。
1.食事
魚、野菜、ナッツ類、オリーブオイルなどを中心にした地中海式ダイエットが効果的だとされています。これによって脳に良い栄養を届け、脳細胞のダメージを防ぎます。
2.運動
定期的な有酸素運動や筋力トレーニングは、脳の血流を促進し、認知機能の低下を防ぐと言われています。ウォーキングやジョギングなどが効果的です。
3.知的活動
読書やパズル、楽器演奏など、頭を使う活動を続けることが大切です。これにより、脳の神経回路が活発に保たれます。
4.社会的つながり
家族や友人との交流、地域活動など、他者とのコミュニケーションを保つことも認知症予防に役立ちます。
いずれも取り入れやすい身近な習慣です。将来の健康を守るために実践し、気になる症状がある場合には専門医を受診して早期発見・治療につなげられるとよいですね。