教えてくれたのは……安江 千尋先生

天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック院長。日本消化器病学会専門医。がん研究会有明病院下部消化管内科のスタッフとして、約8年にわたり数多くの内視鏡検査や治療、レジデントの指導に従事。「胃がんや大腸がんでお亡くなりになる方をゼロにする」という理念のもと、専門性を生かした診療に取り組んでいる。
40代女性が振り返りたい「大腸がんのリスクチェック」リスト
前回の記事では、「大腸がんの初期症状や発生部位による違い」や「40代から検診を意識したい理由」についてご紹介しました。早期の段階ではほとんど自覚症状がないことが大きな特徴の大腸がん。安江先生によると、自覚症状だけでは気づきにくいからこそ、発症リスクに関わる要因を知り、日頃から健康状態を振り返ることが大切なのだそうです。
安江先生「大腸がんのリスクには、家族歴や過去の病気など、自分では変えられない要因と、喫煙、飲酒、肥満、運動不足など、生活習慣によって改善できる要因があります。重要なのは、これらを同じ重みで考えないことです。
たとえば、家族に若くして大腸がんを発症した方がいる場合は、生活習慣の項目にいくつ当てはまるかに関係なく、医師への相談が必要になることがあります。以下の項目を、ご自身の健康状態や生活習慣を振り返るきっかけにしてください」
A.特に医師へ伝えておきたい「家族歴・既往歴」4つ
1.親・兄弟姉妹・子どもに大腸がんになった人がいる
近い血縁者に大腸がんを発症した方がいる場合は、ご自身の発症リスクも高くなることがあります。特に、50歳未満など若い年齢で発症した方がいる場合や、複数の家族が大腸がんになっている場合は、注意が必要です。
2.家族に若くして子宮体がんなどを発症した人がいる
リンチ症候群などの遺伝性疾患では、大腸がんだけでなく、子宮体がんや卵巣がんなどが発生しやすくなることがあります。ただし、子宮体がんの家族歴だけでリンチ症候群と判断できるわけではありません。家族のがんの種類、発症年齢、人数などを総合して評価する必要があります。
3.過去に大腸ポリープ(腺腫やSSL)を指摘されたことがある
一部の大腸ポリープは、将来的にがんへ進行する可能性があります。ポリープを切除した方も、病理結果や病変の数・大きさなどによって、その後の検査間隔が異なります。
4.潰瘍性大腸炎やクローン病など、大腸に慢性的な炎症を起こす病気がある
大腸に長期間炎症が続くと、がんの発生リスクが高くなる場合があります。特に、大腸の広い範囲に炎症が続いている場合や、罹病期間が長い場合は、定期的な内視鏡検査が重要です。
B.生活習慣で見直したい「5つの項目」
5.タバコを吸っている、または長年吸っていた
喫煙は、大腸がんのリスクを高めることが知られています。禁煙は、大腸がんだけでなく、さまざまながんや心血管疾患の予防にもつながります。
6.お酒を飲む習慣がある
飲酒は、大腸がんのリスク要因のひとつです。アルコールの代謝で生じる物質などが、発がんに関係すると考えられています。飲酒量が多いほどリスクが高くなる傾向があるため、がん予防の観点からは、できるだけ飲酒を控えることが望まれます。
7.肥満傾向がある、または内臓脂肪が増えている
肥満は、大腸がんのリスク上昇と関連しています。体脂肪の増加に伴うインスリンの働きの変化や、慢性的な炎症などが関係すると考えられています。ただし、肥満でなければ大腸がんにならないという意味ではありません。
8.日常的に体を動かす機会が少ない
身体活動が少ない生活は、特に結腸がんのリスクと関係しています。運動は特別なスポーツである必要はありません。ウォーキングや階段の利用など、日常生活の中で体を動かす機会を増やすことが大切です。
9.ハム・ソーセージなどの加工肉や、牛肉・豚肉などの赤肉を頻繁に多く食べる
加工肉や赤肉の過剰摂取は、大腸がんのリスク上昇との関連が指摘されています。特に加工肉については、国際的に大腸がんのリスク要因と評価されています。
ただし、これらを一切食べてはいけないということではありません。食べ過ぎを避け、魚や大豆製品、野菜、全粒穀類なども取り入れた、バランスのよい食生活を心がけましょう。
チェックリストを活用する際の注意点
このチェックリストは、ご自身の健康状態や生活習慣を振り返るためのものであり、医学的に検証されたリスク予測スコアではありません。チェックが多いから必ず大腸がんになるわけではなく、逆にひとつもあてはまらなくても大腸がんになる可能性があります。
特に、家族歴や大腸ポリープの既往、炎症性腸疾患などは、生活習慣と同じ重みで評価できるものではありません。また、40歳を過ぎて大腸がん検診を受けていないことは、がんの発症原因ではありませんが、早期発見の機会を逃すことにつながります。
リスクを知り、日頃の健康管理に役立てよう
安江先生に挙げていただいたチェックリストを通して、これまでの健康状態や日々の生活習慣を振り返ると、自分では気づいていなかったリスク要因を知るきっかけになるかもしれません。次回の記事では「大腸がんと小腸がんの決定的な違い」についてご紹介します。



