メイクは社会人としての礼儀?
会社員だった20代の頃、メイクをするのが面倒でしばらくすっぴんで通勤したことがある。
1週間もしないうちに上司から呼び出された。
「お前さ、女なんだからメイクくらいしてこいよ。社会人としての礼儀だろ」。
心の中で、「何言ってんだ、こいつ」と思いながら、そんなことは言えないので、次の日からメイクをするようになった。
20代の頃の私は、“人からどう思われるか”ばかりを気にして生きていた。
今だったら言い返すことができるけど、20代の私は「礼儀のない部下だと思われないようにしなくては」ということが先にきて、自分の気持ちはいつも後回しにしていた。
メイクってなんのためにするんだろう
今でこそ、メイクをせずに外に出るなんて無理! という意識はあるけど、20代の頃の私は、とにかくメイクもスキンケアもめんどくさかった。
そもそもの女子力……という問題もあるのだけど、「どうしてメイクをしなくてはいけないんだろう」とよく考えていた。
とは言え、上司が言うように「社会人の礼儀」らしいので、すっぴんで通勤するのはやめて、毎朝、鏡に向かってメイクをする。
メイクをしていると、上司の顔がちらつく。「女なんだからってなによ……。メイクしなかったらその分長く寝れるのに」なんて思いながらメイクをするからか、仕上がる顔はなんとなくきつくなる。
そう。20代の頃の私のメイクは、印象がきつくなるものが多かった。
ベンチャー企業で働いていた私は、20代後半で役職があり、40人の部下がいたことがある。
「舐められてはいけない!」
あの頃の私は、そもそもの本質とはちょっとズレた力み方をして、自分らしさからどんどん遠ざかっていくような生き方をしていた。そして、そんな生き方がしっかり顔に出ていた。
20代でそういう経験ができたからこそ、40代、これ以上ないくらい自分らしく生きられているわけだけど。
メイクレッスンを受けてみた
めんどくさい、めんどくさいと言っていた私が、スキンケアやメイクに目覚めたのは40代を過ぎてから。かなり遅い(笑)。
年齢的に、カバーしなくてはいけない部分が増えてくるというのがきっかけではあるけど、これまで適当に生きてきた分、ちょっと手を加えると目に見えて変化することが楽しくなって、どんどん欲が出てきた。
肌の色をワントーン上げたいとか、ツヤツヤ肌になりたいとか、ワンパターンではないメイクを楽しみたいとか。
20代の頃にこの気持ちがあったら、お金では買えない”若さ”という武器と共に、もっとワクワク楽しめたかもしれないけど、あの当時はどうしたって興味が沸かなかったのだから仕方ない。
その分を取り戻すべく、メイクに関することにアンテナを張り出した私は、昨年、インタビューをさせていただいた亜耶バネッサさんのメイクレッスンに年明け早々申し込みをした。
亜耶さんのメイクレッスンは、自分の顔の作りを知るところからはじまる。人相学というものを初めて見聞きした。自分の顔の作り的に与える第一印象とか、こういうメイクが似合うという知識がインプットされた。
私は、かっこいいよりかわいい、のほほんとした印象を与える顔の作りをしているそう。
これは、私が年齢を重ねて自分らしいなと感じる生き方と似ていた。
メイク技術がないので、ワンパターンなメイクしかできなくて、強そうに見えるメイクばかりをしてきたけど、今感じている自分らしいメイクを身につけたかった。
教えてもらったのは、「かわいい系のメイク」。完成した顔を鏡の中に見たとき、「あぁ、私、良い生き方ができてるんだなぁ」と思った。
どこにも無駄な力が入っていなくて、自分の気持ちに素直に自分らしく生きている顔をした私がいたから。
化けるではなく、自分らしさを表現する
メイクは、どちらかというと「化ける」という印象があるけど、今回亜耶さんのメイクレッスンを受けて感じたのは、メイクは、「自分らしさを表現する方法」だということ。
40歳を過ぎてメイクに目覚め、メイクで表現したいのが、「自分らしさ」ってすごく良い。
カバーしたいとか、隠したいとか、誤魔化したいとかじゃなくて、「私らしさをそのまま表現できるメイクが知りたい」と思える年齢の重ね方ができている自分を褒めた。