生きるのが楽になった30代
「歳をとると、生きるのが楽になるよ」
30代半ばを過ぎた頃から、悩める若い子の相談に乗るたびにそう伝えている。
以前も書いたように、「ネガティブが服着て歩いてる」と言われていた20代をなんとか生き抜いた私は、30代に突入してから徐々に、全身にガッチガチに入れていた力を少しづつ抜けるようになっていったから。そして、とても恵まれたことに、私のまわりには、年齢を重ねたからこそ素敵に生きている人がたくさんいた。
「歳をとるって悪くない」。そう思わせてくれる人がまわりにいるかどうかで、年齢を重ねることへのイメージは大きく変わる。
同級生たちが、「30歳になりたくなーい!」「永遠に20代でいたい!」と言っているのを横目に、「早く44歳になりたい」と思っていた私は、その年齢に近づいたことに安心していた。
“力み”が消えた結婚と出産
20代の私は、手のひらに爪の跡が残ったり、肩凝りから頭痛でマッサージに通いまくるほど力んで生きていた。
それが30代になって、爪の跡が残るほど手を握りしめることはなくなったし、マッサージ通いの回数も減ってきた。
そして、少し力の抜き方を覚えたころ、結婚をした。
いずれここで書こうと思っているけど、私は母子家庭で「父親」という存在を知らずに育った。なので、男性に対して甘えるということがとんでもなく苦手だったりする。
男性というよりも、誰かに頼ることをとても苦手として生きてきた。
そんな私が、人生で初めて「あ、この人はどんな顔を見せても受け入れてくれそう」と感じた人が今の夫。
そんな人に出会えた私は、そこから力の抜け方が加速していく。
そして、35歳で娘を出産。
「出産は人生最大のデトックス」なんて言葉を聞いたことがあるけど、その意味はさておき、私は娘を出産し母になったことで、20代の頃に爆発させていたネガティブ要素を胎盤と共に出しきったように感じている。
ちなみに、私は緊急帝王切開での出産となったので、生み出したというよりは体内から抜け出したというイメージ。
不眠症からリアルのび太へ
出産する前の私は、20代に悩みすぎた後遺症(?)で、パニック障害や不眠症とうまく付き合いながら生活をしていたのだけど、娘を生んだ後、その全てが嘘のように私の中から消えてなくなった。
1駅でも乗るのが怖かった電車には、いまでは1時間以上平気で乗っていられる。
「電車に乗れると、こんなにいろんなところに行けるのかぁ」
娘が生まれたら、いろいろな世界を見せてあげたいと思いながら、電車に乗れないのに? と心配していたのがうそのように、どこにでも電車で行けるようになった。
不眠症に関しては、妊娠中とにかく眠くて、「眠れない」なんてことを感がることすらなくなった。
45歳になった今は、枕に頭を乗せた瞬間に眠りの世界へ。
夫からは、「リアルのび太」と呼ばれている。
本当に生きるのが楽になった
年齢を重ねたことより、結婚と出産が大きいのでは? と思われるかもしれないけど、同じことを20代で経験していたらこうはいかなかっただろうと思う。
初めての育児は余裕0。爪の跡どころから、爪を噛むほど悩みまくり。パニック障害と不眠が悪化して、夫婦ケンカが絶えない……。という状況が容易に想像できるから。
33歳での結婚。35歳での出産。私にとってはベストなタイミングで起きたこの2つ。この年齢だったからこそ、そのことを心から幸せだと感じられる余裕が持てたのだと自信を持って言える。
ほら、年齢を重ねるって良いことがたくさん!
数年前、「歳をとると、生きるのが楽になるよ」と伝えた子と久々に会った。
「あの言葉を聞いたとき、私にとってその言葉は夢のような話に聞こえたんです。だって、あの当時の私は、歳を重ねるほど悩みは増えていくと思っていたから。こんな風に生きづらいのは私の性格で、そんなのは歳では変わらないって。でも、あの言葉を聞いてからいくつか歳を重ねてみてわかりました。本当に、歳を重ねると生きるが楽になっていくんですね。私は、あの辛いときに聞いた言葉をお守りみたいに思って歳を重ねてきました。そして、その言葉の意味を自分が経験できました」
歳を重ねることで人は力みが抜ける。そして、そこにできた隙間から、これまで見えていなかった世界が目に入るようになるのかもしれない。
楽になるというのは、力みが抜けること。そのゆるみがもたらしてくれるのが、生きやすさなんだと思う。
そして、私は年齢を重ねることが素敵なことだよという姿を見せてくれた先輩たちのように、若い子たちに、「女は40歳からよ。人生はそこからが楽しくなるのよ」と言っては、「年齢を重ねることが楽しみ!」と感じさせることが趣味になっている。