教えてくれたのは……富永喜代先生
愛知県松山市の富永ペインクリニック院長。性交痛外来では5000人のセックスの悩みについてオンライン診断を行う。現在、YouTube「女医 富永喜代の人には言えない痛み相談」が人気に。更年期を迎える女性に起こる、女性器の老化やセックスの痛みについて、自身の経験も踏まえ詳しく解説されている最新著書『女医が教える性のトリセツ』がある。
『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)
著者:富永喜代
価格:1,430円(税込)
閉経の平均年齢は、なんと約50歳!
──「閉経」がいつくるか、事前にわかるサインはありますか?
富永先生「最後に月経があってから1年間、月経がないことを閉経といいます。つまり1年後、あとになってわかるものなのです。残念ながら、閉経がいつ訪れるかを事前に知る方法はありません。」
ただし、閉経が近づくと月経周期が乱れたり、月経があっても無排卵月経が増え、徐々に月経回数が減り……そして、完全に停止するそうです。
富永先生「日本人の平均閉経年齢は、50歳と言われています。ただ、個人差があるので、40歳過ぎで閉経する人もいれば、60歳近くまで月経がある人もいます。」
閉経と聞くと、遥か先のことだと思っていましたが……。現実には、もう何年か先、もしかしたら1年後には、自身の体が閉経を迎えても、何らおかしくはないのですね。
更年期とは、誰もが通過する人生の時間
──「更年期」と「更年期障害」の違いを教えてください
富永先生「閉経を挟んで、前後5年、合計10年間を『更年期』と言います。この時期は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減少することで、ホルモンバランスが乱れ、心身の変化や不調を感じる人も多くいます。この不調を『更年期障害』と呼びます。」
「更年期」はただの年齢の指針に過ぎず、「更年期障害」は個人差が激しい。だから、混合してしまう人が多いんですね。
また、更年期障害と似たような症状で、PMS(月経前症候群)があります。どちらの症状に悩まされているか迷った時は、諸症状がいつ起こったのか(生理前なのかあとなのか、など)、自分で記録してから、医師に相談することをおすすめします。
意外と知らない"閉経後の健康リスク”
──女性ホルモン「エストロゲン」が減少すると、どんなことが起きるのでしょうか?
富永先生「エストロゲンは、関節、骨筋肉、肺、心臓、血管など全身の至るところの機能を調節する作用があります。それが減少し、血管まで影響すれば、高血圧や動脈硬化が引き起こされます。深刻になれば、脳梗塞、脳溢血、狭心症、心筋梗塞なども。」
ショック……まさか更年期に入っただけで、こんなに健康リスクが高まるなんて、知りませんでした!
富永先生「さらに注意したいのが、骨粗しょう症です。エストロゲンが減ることで、骨の強度も減少し、骨が弱くなってしまうのです。」
女性が男性に比べて、生活習慣病になりにくかったのは、エストロゲンに守られていたからだったんですね! まだ月経がある人も、年齢的に更年期ゾーンに入るなら、いまから自覚的なケアをして、備えておきたいものです。
個人差の激しい、更年期障害
──「更年期障害」とは、具体的にはどんな症状がありますか?
富永先生「代表的な症状に、ホットフラッシュ、イライラ、不眠、焦燥感、不安感、頭痛、耳鳴り、手足のしびれ、こわばり、肩こり、関節痛、頻尿、性交痛、皮膚のかさつき、目の疲れ、動悸、息切れ、全身の疲れやすさなど、人によって、出る症状が変わるのが、更年期障害の特長です。」
走れなくなった。夜ふかしが無理になった。残業がつらくなった……など、ただの体力の衰えと思っていたことも、もしかしたら「更年期障害」だったのかもしれません。
更年期障害は、治療できる!
今は、人生100年時代です。更年期は老いへの最終切符ではなく、残り50年を素敵に生きるための、リセットだと思いませんか? もし、更年期障害がツライなら、今は婦人科で様々な治療法があります。正しい知識と心構え、そして医療の力を借りて、更年期を穏やかに快適に過ごしましょう。