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マネした人の方が褒められてずるい…。「何でマネされたら嫌なの?」【トイトイの問い 第65話】

カルチャー

2024.11.16

私たちの日常にある「あたりまえ」。「どうして?」と問われたとき、はっきりと理由を答えられるものはどれだけあるでしょうか。「あたりまえ」への疑問の答えは、きっとひとつではありません。 トイプードルのトイトイと、猫のモラ。2匹の視点から生まれた疑問に、あなたなりの答えを見つけてみませんか?

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連載:トイトイの問い

何でマネされたら嫌なの?

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真似するのってずるいことなのかなぁ?

私は、多くの文化は模倣から発展していると思っています。
絵の勉強をするにも上手な人の模写をすることを勧められますし、漫画や小説は自分が目指したいタイプの作品を一度書き写すことで学びがあると言われています。
料理をするにも上手な人の動画を見ながらやるほうが料理本だけで作るよりわかりやすかったりするし、手芸なども最初からオリジナルで作る人なんていませんよね。

そもそも赤ちゃんが最初にことばや動きを覚えるのも、近くにいる大人の動きを模倣することからはじまるのです。進歩や成長は「人真似」から。なので「真似すること」自体は私は全然悪いことではないと思っています。

ただ、コピーのように丸写ししたものを「自分の作品だ」と言って商売したりするとそれは単なる「盗み」でしかありません。この「真似」は良いけど「盗み」は良くないという線引きがあまりに曖昧で、すべてを「盗み」と解釈して非難する人が多いような気がしています。人の真似をすることすべてが犯罪のような扱いを受け、模倣が批判されるようになってしまうと文化の発展が止まってしまうのではないでしょうか。

かの有名な画家、ゴッホも浮世絵に強い影響を受けて模写していましたが、模写した作品たちが「浮世絵の盗作だ」と非難されることはありません。模写もまたひとつの文化だと私は考えています。

最近はAI学習も盛んになり、文章や絵はAIによって「上手な人の能力を取り込んで出力されたもの」をよく見かけるようになりました。これをとても嫌がる絵描きさんは多く、SNSアカウントには『AI学習禁止』などの記載がされていることもあります。

私はむしろAI学習はあっていいと思っている方です。
多くの絵師さんからAIが学習したことで良い作品が生まれ、それを見た人間がまたさらに人間にしか作れない世界を創り出していけるのではないかと思っているからです。

そもそもAI学習されることを嫌がる絵師さんもまた、誰かの絵を真似しながら今の自分のスタイルを作ってきたでしょうし、素敵な絵を描いている作家さんを見て技法を真似ようと思うこともあるはずです。
自分はいいと思ったものを真似するけど自分が真似されるのは嫌というのは、相手がAIということ関係なく勝手な言い分のように感じます。

絵に限ったことではなく、あらゆる文化において『他者から学び、他者に学ばれ、他者に与え、他者から受け取る』ことで、人間は高め合ってきたのではないでしょうか。

もし自分の技術や作っているものが模倣されて悔しい思いをすることがあったなら、そのときは、自分にしか作れない、もっと素晴らしいものを作ってやろうと思えばいいのです。
自分の身につけた知識や技術は自分だけのものだ、と独り占めしてその人が身につけた文化がその人だけで終わってしまうのは、むしろ勿体ないことではないでしょうか。

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著者

水谷アス

水谷アス

発達障害のひとつ、自閉症スペクトラム障害(ASD)当事者でASD児育児中の母。 理屈っぽい変人と言われながら生きてきました。 そんな変わり者の思考をありのままに伝えることが未来の多様性理解のひとつに繋がることを願って、種まきのようにマンガ、文章、音声、様々な媒体で日々発信活動をしています。 読んだ人の心に新しい気づきが芽生えてくれたら嬉しいです。

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