連載記事

ひとりでやる方が楽なの?【トイトイの問い 第93話】

カルチャー

2025.04.26

私たちの日常にある「あたりまえ」。「どうして?」と問われたとき、はっきりと理由を答えられるものはどれだけあるでしょうか。「あたりまえ」への疑問の答えは、きっとひとつではありません。 トイプードルのトイトイと、猫のモラ。2匹の視点から生まれた疑問に、あなたなりの答えを見つけてみませんか?

広告

連載:トイトイの問い

ひとりでやる方が楽なの?

1コマ目

2コマ目

3コマ目

4コマ目

5コマ目

6コマ目

7コマ目

8コマ目

なんでひとりでやってたんだろうね?

「この人に任せておけば安心」みたいな存在の人って、いますよね。自分で調べたりやってみるよりも、おまかせしちゃう方が早いので、つい、おまかせしちゃう。向こうも向こうで、誰かにやってもらうより自分でやっちゃう方が早いので、つい全部自分でやっちゃう。

今回のお話は家庭における『お母さん』がそういう存在になっている話ですが、どこの家庭も似たようなところがあるのではないでしょうか。私の実家も、夫の実家も、我が家も同じです。大事な書類だったり、ものをしまっている場所だったり、母ひとりの頭の中にしかない情報がたくさんあります。だから家庭で母が動けなくなったとき、他の家族はパニックに陥るんですよね。仕事における場面でもそういうことってあるのではないかと思います。

でも、普段からやっていない人に仕事や書類を割り振るのって、それはそれで大変なこと。教えるぐらいなら自分でちゃっちゃとやっちゃおう……なんてことは日常茶飯事です。やってもらえたら助かるけど、教えるって、思った以上に大変なんですよね。

とはいえ、たまに考えるんです。自分が事故にあったらどうしようとか、病気で急に入院することになったらどうしよう……とか。
だから私はたまに「今日は夕飯よろしく!」と、食事支度を家族に丸投げします。夫には子どもの面談や予防接種にも行ってもらったり。

最初の頃はひとつ物事を進める度に確認されて面倒で、冷蔵庫や食器棚には誰がみてもわかるようなラベルを貼りました。思った通り最初は大変でしたが少しずつ出来ることが増えてきました。これなら私がちょっと風邪を引いて寝込んでも、誰かがご飯を作れることでしょう。夫に学校や病院の事を知っておいてもらうことも、些細なことではありますが全く知らないのとは大きく違います。

こうやって母が全部やっていた仕事を家族で分け合うことで『いつもお母さんがやってるけど、これ、実は結構大変なことじゃない?』ということを家族が実感してくれるんですよね。そうすると家族にとっても、やってもらって当たり前の感覚が無くなっていきます。

先日、子どもたちでカレーを作りました。「自分が作ったものをオイシイって言ってもらえたら嬉しい。だからお母さんのご飯が美味しい時は、ちゃんと美味しいって伝える」と言っていました。作って貰えることもありがたいし、こういう気持ちをわかってもらえるのもありがたいことです。

ひとりが全部やる方が基本的には楽で、作業を教えたり分ける方が大変なこともあります。
でも大変さを分け合うクセは、つけておいてもいいのではないでしょうか。

みんなで一緒に大変さを分け合って、楽しさは共有する。
これは家族だけでなく会社でも同じ。誰かが倒れたときに困らないだけでなく、お互いの大変さを知ることで感謝の気持ちも生まれるんですよね。
一人に仕事が偏ることなくお互いが支え合える関係って、素敵だと思いませんか?
 

広告

著者

水谷アス

水谷アス

発達障害のひとつ、自閉症スペクトラム障害(ASD)当事者でASD児育児中の母。 理屈っぽい変人と言われながら生きてきました。 そんな変わり者の思考をありのままに伝えることが未来の多様性理解のひとつに繋がることを願って、種まきのようにマンガ、文章、音声、様々な媒体で日々発信活動をしています。 読んだ人の心に新しい気づきが芽生えてくれたら嬉しいです。

この記事をシェアする

気になるタグをチェック!

saitaとは

連載記事

『トイトイの問い』 人間と生活する動物たちの「ニンゲンの当たり前の生活」への不思議。

広告

人気記事ランキング

ランキングをもっと見る